共有名義の不動産、売れない・貸せない・直せない問題|世代をまたぐと共有者が数十人に増える理由と5つの解決策

庭先から見た静かな日本家屋の外観:共有名義の実家をイメージした写真 相続・遺言

「実家を兄弟で共有名義のまま相続したけれど、売ろうとしたら弟が反対して話が進まない」——こうした相談は、相続の現場で決して珍しくありません。共有名義の不動産は、いったん成立してしまうと、売ることも貸すことも修繕することも、共有者全員の意思がそろわなければ身動きが取れなくなるという特徴を持っています。

さらに厄介なのは、その状態を放置すればするほど問題が深刻化していく点です。共有者の一人が亡くなれば、その人の相続人が新たな共有者として加わります。これが世代を重ねるごとに繰り返されると、数十年後には見知らぬ遠縁の親族まで含めて共有者が数十人規模に膨れ上がることもあり得ます。

本記事では、不動産が共有名義になってしまう典型的なケース、共有名義がもたらす「売れない・貸せない・直せない」という3大問題、世代をまたいだ共有がどれほど深刻化するのかという具体例、そして共有状態を解消するための5つの解決策までを実務的に解説します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。共有名義の解消や共有物分割請求など個別の手続きについては、弁護士・司法書士にご相談ください。記事内の法令情報は作成時点(2026年8月)のものであり、法改正等により内容が変わる場合があります。

不動産が共有名義になる3つのケース

共有名義は、多くの場合「積極的に選んだ結果」ではなく、「結論を先送りにした結果」として生じます。

遺産分割協議がまとまらず「とりあえず共有」で登記

相続人同士で不動産の分け方について意見が対立し、話し合いが平行線をたどったとき、「とりあえず法定相続分どおりの共有名義にしておこう」という選択がなされることがあります。この「とりあえず」は一見、穏便な妥協案に見えますが、実際には問題を解決したのではなく、先送りしたに過ぎません。

先送りのツケが後から回ってくる構造

共有名義での相続登記は、その時点では相続人全員の合意なく進められるため、一見スムーズに手続きが完了したように感じられます。しかし、不動産の活用方針を決めていないまま共有状態だけが確定してしまうため、いざ「売りたい」「貸したい」という話が出たときになって、共有者間の意見の違いが表面化するケースが多く見られます。

相続登記を放置し、数次相続で世代をまたいだ共有に

さらに深刻なのは、相続登記そのものを放置してしまうケースです。最初の相続で名義変更をしないまま次の相続(数次相続)が発生すると、共有者の数はねずみ算式に増えていきます。2024年4月からは相続登記が義務化されており、正当な理由なく申請を怠ると過料の対象になる可能性があります(詳しくは相続登記の義務化完全ガイドで解説しています)。

共有名義不動産の3大問題【売れない・貸せない・直せない】

共有名義の不動産で最も理解しておきたいのが、行為の種類によって必要な同意のレベルが異なるという民法上のルールです。

売れない:全員の同意がなければ売却不可

不動産全体を売却する行為は民法上「変更行為」にあたり、共有者全員の同意が必要です。持分の割合にかかわらず、共有者が一人でも反対すれば、不動産全体の売却は成立しません。「多数決で決められるはず」という誤解は、共有名義トラブルで最もよくある勘違いの一つです。

貸せない:管理行為も共有者の持分価格の過半数の同意が必要

不動産を第三者に貸し出す行為は「管理行為」に分類され、全員の同意までは不要なものの、共有者の頭数ではなく持分の価格の過半数の同意が必要です。持分割合が小さい共有者がいくら賛成しても、持分の大きい共有者が反対すれば、賃貸に出すことはできません。

修繕できない:大規模修繕(変更行為)は全員同意が必要なケースも

建物の維持に必要な小規模な修繕(保存行為)は共有者が単独で行えますが、増改築や建て替えなど、不動産の形状や効用を大きく変える行為は「変更行為」として扱われ、原則として全員の同意が必要です。老朽化した実家をどうするか意見が分かれたまま放置され、空き家化が進んでしまうケースも少なくありません。

世代をまたいだ共有の恐怖|共有者が数十人に膨れ上がる理由

共有名義の本当の恐ろしさは、「今」の不便さよりも「将来」にあります。

例えば、当初は夫婦2人の共有だった不動産があったとします。夫が亡くなり、妻と子2人が相続すれば共有者は3人に増えます。さらに時間が経ち、子の一人が亡くなってその配偶者と子(孫世代)が相続人になれば、共有者は5人、6人へと増えていきます。これが二世代、三世代と繰り返されると、当初は兄弟数人だった共有名義が、数十年後には面識のない遠縁の親族を含めて数十人規模の共有者になることも起こり得ます。

こうなってしまうと、売却や活用の話し合いをしようにも、まず「共有者が誰と誰なのか」を戸籍をたどって特定するだけでも大変な手間がかかります。転居や海外移住で連絡が取れない共有者がいれば、同意を取り付けること自体が現実的に困難になります。「とりあえず共有」で先送りにした問題は、時間が経てば経つほど解決の難易度が跳ね上がっていくのです。

要注意|共有持分だけを第三者(買取業者)に売却されるリスク

共有名義をめぐるトラブルとして近年増えているのが、共有者の一人が自分の持分だけを、他の共有者に知らせないまま第三者の買取業者に売却してしまうケースです。不動産全体の売却には全員の同意が必要ですが、自分が持っている共有持分だけであれば、他の共有者の同意なしに単独で売却できてしまうという法的な仕組みがあるためです。

見ず知らずの買取業者が新たな共有者として登場すると、その業者から持分の買い取りや共有物分割請求を強く迫られるなど、それまで以上に複雑なトラブルに発展することがあります。また、共有持分の買取相場は、権利関係の複雑さを理由に市場価格より3〜5割程度低く見積もられるのが一般的とされており、持分だけを手放すこと自体、経済的に不利な選択になりやすい点にも注意が必要です。

業者とやり取りをする場合は、宅地建物取引業の免許を保有しているか、行政処分歴がないかを、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで確認することをおすすめします。契約を急かしてくる、他の共有者との調整を任せておけば良いなど、性急な対応を迫る業者には特に注意が必要です。

2023年民法改正で何が変わったのか

2023年4月1日に施行された改正民法では、所有者不明土地問題への対応として、共有制度に関するルールが見直されました。主なポイントは次のとおりです。

  • 所在等不明共有者への対応:共有者の中に所在が不明な人や、賛否の意思を示さない人がいる場合でも、裁判所への申立てなど所定の手続きを経ることで、その共有者を除いた残りの共有者の同意によって管理行為・変更行為を進められる制度が新設されました。
  • 共有者不明土地管理制度の創設:裁判所が選任した管理人が、所在等不明共有者に代わって土地の管理・処分に関与できる制度が設けられました。
  • 変更行為・管理行為の整理:形状または効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」は管理行為として扱われることが明確化され、共有者全員の同意が必要な場面が一定程度整理されました。

これらの改正は、共有者の一部と連絡が取れないケースの解消を後押しするものですが、複雑な手続きを伴うため、実際の利用にあたっては弁護士・司法書士への相談が前提になります。詳細な制度趣旨は、法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」で確認できます。

共有名義を解消する5つの解決策【比較表】

共有状態を解消する方法は、状況や共有者間の関係性によって適したものが異なります。

解決策 概要 費用の目安 難易度 所要期間の目安
①遺産分割協議のやり直し・単独名義化 相続開始から間もない場合、改めて協議し一人の単独名義にする 比較的低い(登録免許税等) 低〜中(全員の合意が前提) 数週間〜数ヶ月
②換価分割 不動産を売却し、代金を共有者間で分ける 仲介手数料・譲渡所得税等 中(全員が売却に同意する必要) 数ヶ月〜半年程度
③価格賠償 共有者の一人が単独名義を取得し、他の共有者に代償金を支払う 代償金の準備が必要 中(資金力のある共有者が必要) 数週間〜数ヶ月
④共有物分割請求訴訟 協議がまとまらない場合に裁判所へ分割を求める最終手段 訴訟費用・弁護士費用 高(対立が深い場合の最終手段) 半年〜1年以上
⑤2023年民法改正の新制度活用 所在等不明の共有者がいる場合に裁判所の関与で対応 裁判所への申立て費用等 高(専門的な手続きが必要) 数ヶ月〜1年程度

①遺産分割協議のやり直し・単独名義化

相続開始から時間が経っていない段階であれば、改めて相続人全員で話し合い、不動産を必要とする一人の単独名義にする方法が最もシンプルです。遺産分割協議のやり方については、遺産分割協議書の書き方完全ガイドもあわせてご確認ください。

②換価分割:売却して現金で分ける

不動産をそのまま保有し続ける意向のある共有者がいない場合は、売却して現金化し、共有持分割合に応じて分配する換価分割が現実的な選択肢になります。ただし、これも「不動産全体の売却」にあたるため、共有者全員の合意が前提となります。

③価格賠償:一人が買い取って他の相続人に代償金を払う

不動産を手放したくない共有者がいる場合は、その人が他の共有者の持分を時価で買い取り、代償金を支払う価格賠償という方法もあります。ただし、まとまった資金を用意できるかどうかが実現の鍵となります。

④共有物分割請求訴訟:裁判所に分割を求める(最終手段)

話し合いによる解決が難しい場合、共有者は単独で共有物分割請求を行うことができ、協議がまとまらなければ裁判所に共有物分割請求訴訟を提起できます。裁判所は、事案に応じて現物分割・換価分割・価格賠償のいずれかの方法を判断します。手続きの詳細は裁判所「民事事件Q&A」で確認できますが、時間と費用がかかる最終手段と位置づけ、まずは話し合いによる解決を目指すのが現実的です。

⑤2023年民法改正の新制度を活用(所在等不明共有者への対応)

共有者の中に連絡の取れない人がいる場合は、前述した2023年民法改正の新制度を活用し、裁判所を通じてその共有者を除いた形で手続きを進められる可能性があります。制度の利用には専門的な手続き知識が必要になるため、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

いずれの方法も、共有者間の関係性や不動産の状況によって最適解が異なります。「どの方法を選ぶべきか」の判断は個別の事情に大きく左右されるため、早い段階で弁護士・司法書士に相談し、専門家の視点を交えて検討することを強くおすすめします。

「とりあえず共有」が最悪の選択になる理由

ここまで見てきたように、共有名義は「今の対立を先送りにする手段」としては機能しても、「問題を解決する手段」にはなっていません。むしろ時間が経過するほど、共有者の数は増え、関係性は疎遠になり、同意を取り付けるハードルは高くなっていきます。

「とりあえず共有にしておけば、後で話し合えばいい」という判断は、実際には「後の世代に、より難しい問題を先送りする」判断にほかなりません。遺産分割の時点で結論を出すことが難しい場合ほど、専門家を交えて早期に方向性を定めることが重要です。

エンディングノートで不動産の共有状況を記録しておく重要性

すでに共有名義になっている不動産がある場合、その経緯や共有者の連絡先、持分割合といった情報は、記録として残しておかないと、次の世代に引き継がれる際にさらに把握しづらくなります。誰がどの持分を持っているのか、過去にどのような話し合いがあったのかを書面で残しておくことは、将来の相続人が同じ問題に直面したときの重要な手がかりになります。

エンディングノートには法的な効力はありませんが、不動産の権利関係や、本人が生前どのように解消したいと考えていたかという意向を記録しておく場としては有効です。共有名義の不動産を抱えている場合は特に、判断能力があるうちに情報を整理し、家族と共有しておくことをおすすめします。デジタル終活を安全・簡単に進めたい方は、DENのモニター募集をご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 共有者の一人が「絶対に売らない」と言っています。それでも売却する方法はありますか?
A1. 不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要なため、反対する共有者がいる限り売却はできません。話し合いで解決しない場合は、共有物分割請求訴訟を通じて裁判所の判断を仰ぐ、あるいはその共有者の持分を買い取る価格賠償を検討することになります。いずれも弁護士への相談をおすすめします。

Q2. 共有者の一人と連絡が取れません。どうすればよいですか?
A2. 2023年の民法改正により、所在等が不明な共有者がいる場合でも、裁判所の関与を通じて残りの共有者で管理・変更行為を進められる制度が新設されています。手続きには専門知識が必要なため、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

Q3. 共有持分だけを売ることはできますか?
A3. 自分が持つ共有持分のみであれば、他の共有者の同意なく単独で第三者に売却することが法律上可能です。ただし、見知らぬ第三者が新たな共有者になることで、その後のトラブルが複雑化するリスクがあるため、慎重な判断が必要です。

Q4. 共有物分割請求訴訟にはどれくらいの費用と期間がかかりますか?
A4. 訴訟費用は不動産の評価額によって変動し、弁護士費用も別途必要になります。期間は事案の複雑さによって大きく異なり、半年から1年以上かかることも珍しくありません。具体的な見通しについては、弁護士に相談のうえ確認することをおすすめします。

Q5. 相続登記を放置していると、どのようなリスクがありますか?
A5. 相続登記は2024年4月から義務化されており、正当な理由なく怠ると過料の対象となる可能性があります。また、登記を放置している間に次の相続(数次相続)が発生すると、共有者の数が増え、後の手続きがより複雑になります。

Q6. 共有名義の不動産を将来のトラブルなく引き継ぐには、今から何をしておくべきですか?
A6. 早い段階で相続人同士が話し合い、単独名義化や売却など具体的な方針を決めておくことが望ましいといえます。あわせて、不動産の権利関係や過去の経緯をエンディングノートなどに記録し、家族間で共有しておくことも有効な備えになります。

まとめ|共有名義は「先送り」ではなく「早期の意思決定」を

共有名義の不動産は、売却・賃貸・修繕のいずれにおいても共有者間の同意が必要となり、放置すればするほど世代をまたいで共有者が増え、解決が難しくなっていきます。「とりあえず共有」という選択は、多くの場合、問題の解決を先送りしているにすぎません。

遺産分割協議のやり直し、換価分割、価格賠償、共有物分割請求訴訟、2023年民法改正の新制度活用など、状況に応じた解決策は複数存在します。どの方法が適しているかは個々の事情によって異なるため、共有名義に不安を感じた時点で、できるだけ早く弁護士・司法書士に相談することを強くおすすめします。

あわせて、不動産の権利関係や将来への意向をエンディングノートに記録しておくことも、次の世代へ問題を先送りしないための備えの一つです。DENは、相続・遺言・終活に関する大切な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。現在、サービス開始に向けてモニターを募集しています。詳細はこちらからご確認ください。

なお、相続登記の義務化や遺産分割協議書の作成方法、離婚後に共有のまま残された不動産の問題については、関連記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。


関連記事
– 相続登記の義務化完全ガイド|2024年4月スタート、期限・罰則・過去分適用までわかりやすく解説
– 遺産分割協議書の書き方完全ガイド|必要事項・雛形・実印まで解説
– 離婚後も共有のままの不動産、放置するとどうなる?相続で複雑化する前に知っておきたい対策

参考
– 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」
– 裁判所「民事事件Q&A」
– 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト

(本記事は2026年8月時点の情報に基づいて作成しています。法令情報は今後の改正により変わる場合があります。共有名義の解消や訴訟手続きなど個別のご相談は、弁護士・司法書士など専門家に早めにご相談ください。)

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