※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・介護・法律相談ではありません。介護サービスの選択や費用については、個々の状況によって最適な形が異なります。具体的な判断や手続きについては、必ずケアマネジャーや地域包括支援センター、医師などの専門家にご相談ください。記事内の情報・費用データは作成時点のものであり、制度改正等により変更される場合があります。
「親を施設に入れるなんて、薄情だと思われないだろうか」——そう考えて、在宅介護を続けている方は少なくないでしょう。一方で、施設に預けたあとも「本当にこれでよかったのか」と自問し続ける方もいます。
在宅介護と施設介護、どちらが「正解」ということはありません。本人の状態、家族の生活、費用、それぞれの事情によって、最適な形は変わります。そして何より、施設という選択肢を選ぶことに、罪悪感を持つ必要はありません。
本記事では、在宅介護・施設介護それぞれのメリット・デメリット、費用の目安、そして「そろそろ在宅の限界かもしれない」と感じたときの判断材料を、どちらかを推奨する立場を取らずに整理します。
この記事で分かること
- 施設に預けることに罪悪感を持つ必要がない3つの理由
- 在宅介護・施設介護それぞれのメリット・デメリット
- 費用の目安(在宅・施設タイプ別)
- 老老介護・認認介護という現代的な課題
- 在宅介護の限界サイン5つ
- 介護者自身の人生を守ることの大切さ
大前提|親を施設に預けることに罪悪感を持つ必要はない
まず押さえておきたいのは、施設介護を選ぶことは「見捨てる」ことでも「手を抜く」ことでもないという点です。
① 施設のプロの方が介護の質が高い場合がある
介護施設には、介護福祉士や看護師など専門知識を持つスタッフが常駐しています。医療的なケアや認知症への対応、体位変換や食事介助といった専門的な技術は、家族が独学で身につけるより、訓練を受けたプロが対応する方が安全かつ的確なケースが少なくありません。「家族だから最善のケアができる」とは限らないのです。
② 家族が疲弊すると本人にも悪影響が及ぶ
介護者が心身ともに疲弊した状態で介護を続けると、余裕のなさが本人への対応にも表れやすくなります。介護する側の健康が損なわれれば、結果として介護を受ける本人にとっても良い環境とは言えなくなってしまいます。
③「家にいること」が本人の幸せとは限らない
住み慣れた自宅で過ごすことが本人の希望であるケースは多いものの、それがすべてではありません。施設では他の入居者やスタッフとの交流が生まれ、孤立を防げる場合もあります。「家にいることが一番」という思い込みを一度手放してみることも、判断の助けになります。
在宅介護のメリット・デメリット
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 住み慣れた環境で過ごせる/費用を抑えられる場合がある/家族と毎日顔を合わせられる |
| デメリット | 介護者の身体的・精神的負担が大きい/専門的なケアに限界がある/緊急時の対応が難しい |
在宅介護は、本人にとって環境の変化が少なく、安心感につながりやすい一方で、介護の負担がほぼすべて家族に集中する点が大きな課題です。特に夜間の対応や医療的な処置が必要になると、家族だけで抱えるのは容易ではありません。
施設介護のメリット・デメリット
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 24時間専門スタッフが対応/介護者の身体的・精神的負担が軽減される/緊急時に対応してもらえる/他の入居者との社会的交流がある |
| デメリット | 費用が在宅より高くなる傾向がある/慣れない環境へのストレスが生じることがある/面会に制約がある場合がある |
施設介護は、専門的なケアと介護者の負担軽減という点で大きな利点がありますが、費用面の負担や、環境変化に伴う本人のストレスも考慮する必要があります。
費用はどれくらい違う?在宅介護 vs 施設介護
公益財団法人 生命保険文化センターの2024年度調査によると、介護に要した月々の費用は、在宅介護が平均5.3万円、施設介護が平均13.8万円となっています(住宅改造や介護用ベッド購入などの一時的な費用は別途、平均47.2万円)(出典:生命保険文化センター「介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?」)。
施設介護の費用は、施設の種類によって幅があります。
| 施設タイプ | 月額費用の目安 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 月10万円台程度〜 |
| グループホーム | 月10万円台〜15万円程度 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 月15万円前後 |
| 有料老人ホーム | 月15万円台〜数十万円(入居一時金が別途必要な場合あり) |
在宅介護は公的な介護保険サービスの自己負担分を抑えれば費用を低く保てる一方、家族の労力という「見えないコスト」が発生します。逆に施設介護は費用が明確な分、月々の支出は大きくなる傾向があります。費用だけで決めるのではなく、家族の生活状況や本人の希望とあわせて検討することが大切です。
老老介護・認認介護という現代的な問題
近年、介護を取り巻く状況で特に注目されているのが「老老介護」と「認認介護」です。
厚生労働省の国民生活基礎調査によると、同居の在宅介護世帯のうち老老介護(65歳以上同士の介護)の割合は63.5%に達し、調査開始以来はじめて6割を超えました。さらに、75歳以上が75歳以上を介護する「超老老介護」の割合も35.7%に上ります(出典:厚生労働省 国民生活基礎調査)。
「認認介護」は、認知症の人が認知症の人を介護する状態を指します。高齢化が進むにつれて、老老介護から認認介護へ移行するケースの増加が懸念されています。認知症の人の数については様々な推計がありますが、いずれにせよ高齢化の進行とともに、家族だけで対応しきれない場面が増えていくことは避けられません。こうした状況では、家族の努力だけに頼らず、早い段階で専門家や公的サービスに相談することが重要になります。
在宅介護の限界サイン5つ|施設を考えるタイミング
「まだ頑張れる」と思っていても、次のようなサインが見られたら、施設介護への切り替えを検討する時期かもしれません。
① 介護者が体調を崩し始めた
腰痛や慢性的な疲労、不眠が続くようであれば、それは介護者の身体が限界に近づいているサインです。
② 夜間の介護が必要になった
夜間の排泄介助や見守りが必要になると、介護者は十分な睡眠を確保できなくなります。睡眠不足の慢性化は、心身の不調に直結しやすい要因です。
③ 認知症の症状が進行して目が離せない
徘徊や火の不始末など、常に見守りが必要な状態になると、家族だけで24時間対応するのは現実的に困難になります。
④ 医療的処置が常時必要になった
たんの吸引や胃ろうの管理など、専門的な医療処置が日常的に必要になった場合、家族だけで対応するのはリスクを伴います。
⑤ 家族関係が介護で壊れ始めた
介護をめぐって家族間の口論が増えたり、特定の家族に負担が偏って不満が募ったりする状態は、介護そのものが家族関係を壊しかねないサインです。
これらのサインが一つでも当てはまる場合は、我慢を続けるのではなく、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、施設介護を含めた選択肢を検討することをおすすめします。
介護離職という選択の前に|介護者自身の人生も大切
家族の介護のために仕事を辞める「介護離職」をする人は、2022年時点で年間約10.6万人にのぼり、2006年と比べて約2倍に増加しています(出典:厚生労働省 雇用動向調査等に基づく資料)。仕事を辞めることで介護に専念できる時間は増えますが、収入減少や社会とのつながりの喪失、将来の再就職の難しさといった新たな負担を背負うことにもなります。
2025年4月からは改正育児・介護休業法が段階的に施行され、介護をしながら働き続けられる環境整備が進められています。介護離職を選ぶ前に、こうした制度や職場の両立支援策、そして施設介護という選択肢も含めて検討する価値があります。
介護者自身の健康・仕事・人生を犠牲にしてまで在宅介護を続けることは、本人にとっても、家族全体にとっても、必ずしも良い結果につながるとは限りません。
在宅で介護を続ける場合に活用できる公的介護保険サービスの仕組みについては、介護保険とは?仕組み・要介護認定7段階・申請から利用開始までの流れを完全ガイドで詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
DENでケアプラン・本人の希望を記録しておく重要性
在宅介護から施設介護への切り替えを検討する場面では、「本人がどのような介護を望んでいたか」「これまでどのケアマネジャーに相談してきたか」といった情報が、家族の間で共有されていないことがよくあります。本人の意思確認が難しくなってからでは、家族の推測で判断を下さざるを得なくなる場面も出てきます。
ケアマネジャーの連絡先、これまでの介護方針、本人が元気なうちに話していた希望などを、生前のうちに記録として残しておくことは、いざというときの家族の判断を助ける一つの方法です。
デジタル終活を効率的に進めたい方は、DENのモニター募集をご覧ください。介護に関する希望やケアマネジャー情報を、暗号化した形で安全に残しておくことができます。
判断に迷ったらケアマネジャー・専門家に相談を
在宅介護と施設介護のどちらを選ぶかは、本人の状態、家族の状況、費用、地域で利用できるサービスなど、多くの要素が絡む判断です。家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センター、医師といった専門家に早めに相談することで、選択肢の幅が広がることがあります。
DENは、介護に関する希望やケアマネジャー情報、家族への想いといった大切な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。現在、サービス開始に向けてモニターを募集しています。詳細はこちらから確認いただけます。
老後の住まい選びの選択肢全体を比較検討したい方は、老後の住まい、どう選ぶ?6つの選択肢を費用・介護度・自由度で徹底比較もあわせてご覧ください。
認知症の早期発見・事前準備については、認知症の早期発見サイン10選|発症前にやるべき5つの準備で解説しています。認知症の進行が「在宅介護の限界サイン」の一つになることも多いため、早めの備えが役立ちます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 親を施設に入れることに罪悪感を感じてしまいます。どう考えればよいですか?
施設介護は「見捨てる」ことではなく、専門的なケアを受けられる選択肢の一つです。介護者が疲弊した状態を続けるより、専門家に任せることで本人にとって良い結果につながる場合もあります。罪悪感を一人で抱え込まず、ケアマネジャーなど第三者に気持ちを話してみることもおすすめです。
Q2. 在宅介護の限界はどうやって見極めればよいですか?
介護者の体調不良、夜間介護の必要性、認知症の進行、医療的処置の必要性、家族関係の悪化といったサインが見られたら、施設介護への切り替えを検討する時期といえます。一つでも当てはまる場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
Q3. 在宅介護と施設介護、費用はどれくらい違いますか?
生命保険文化センターの調査では、月々の費用は在宅介護が平均5.3万円、施設介護が平均13.8万円とされています。ただし施設の種類によって費用の幅は大きく異なるため、個別に確認が必要です。
Q4. 老老介護・認認介護とは何ですか?
老老介護は65歳以上の高齢者が65歳以上の高齢者を介護する状態、認認介護は認知症の人が認知症の人を介護する状態を指します。高齢化の進行に伴い、こうしたケースは増加傾向にあります。
Q5. 介護のために仕事を辞めるべきか悩んでいます。
介護離職は収入減少や社会とのつながりの喪失につながる可能性があります。2025年4月からは改正育児・介護休業法により、働きながら介護と両立しやすい環境整備が進んでいます。離職を決める前に、職場の支援制度や施設介護の選択肢もあわせて検討することをおすすめします。
Q6. どちらを選ぶべきか、誰に相談すればよいですか?
ケアマネジャーや地域包括支援センター、かかりつけ医などの専門家に相談することをおすすめします。本人の状態や家族の状況を踏まえた具体的なアドバイスを受けられます。
まとめ
在宅介護と施設介護のどちらを選ぶべきかに、一律の正解はありません。本人の状態、家族の生活状況、費用、利用できる地域のサービスなど、さまざまな要素を踏まえて判断する必要があります。
大切なのは、施設介護を選ぶことに罪悪感を持つ必要はないという点です。専門的なケアを受けられること、家族の負担が軽減されることは、本人にとっても家族にとっても、決して悪い選択ではありません。同時に、老老介護・認認介護が増加する現代において、家族だけで抱え込まず、早い段階で専門家に相談することも重要です。
判断に迷ったときは、一人で抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどの専門家に相談してください。そして、介護者自身の健康と人生を大切にすることも、忘れないでいただきたいと思います。


コメント