遺贈寄付先の選び方|怪しい団体を見抜く5つのチェックポイントと悪質な手口

机の上に置かれた万年筆と静かな光が差し込む書斎の写真:遺贈寄付の検討をイメージした一枚 相続・遺言

「最後は、お世話になった社会に少しでも恩返しがしたい」——そう考えて遺贈寄付を検討し始めた方は、近年着実に増えています。おひとりさま世帯の広がりや、財産を「誰かのために役立てたい」という社会貢献志向の高まりを背景に、遺贈寄付はごく自然な選択肢のひとつになりつつあります。

一方で、その広がりに合わせるように、遺贈寄付を検討する方の善意に付け込もうとする悪質な団体や勧誘の存在も報告されています。せっかくの想いが、意図しない形で使われてしまっては本末転倒です。

本記事では、遺贈寄付先を選ぶ際に確認しておきたい信頼性の見極め方と、注意すべき悪質な手口について、公的機関の情報をもとに解説します。これから寄付先を検討される方が、安心して一歩を踏み出せる一助になれば幸いです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。

遺贈寄付とは?急速に広がる背景

遺贈寄付の基本

遺贈寄付とは、遺言書によって自分の死後に財産の一部または全部を、国や自治体、公益団体などに寄付することです。生前の生活資金を手元に残しながら、亡くなった後に財産を社会に役立てられる点が特徴で、老後の資金計画に影響を与えずに検討できる方法として関心を集めています。

認知度は年々上昇、件数も大きく増加

一般社団法人日本承継寄付協会が2025年に実施した実態調査によると、遺贈寄付の全体認知度は2023年の53.3%から2025年には63.8%まで上昇しています。特に70代では84.5%が「知っている」と回答しており、この世代では遺贈寄付がすでに広く知られた選択肢になっていることがうかがえます(出典:日本承継寄付協会「2025年度 遺贈寄付に関する実態調査」)。

件数の面でも、2013年からの10年間でおよそ3倍に増加したとされ、寄付総額は年間300億円前後で推移しています。おひとりさま世帯の増加や、子や孫だけでなく社会全体に財産を役立てたいという価値観の広がりが、この増加を後押ししていると考えられます。

遺贈寄付ができる先と、相続税が非課税になる仕組み

遺贈寄付を受け入れている主な団体

遺贈寄付の主な受け入れ先には、以下のような団体があります。

  • 国・地方自治体
  • 認定NPO法人
  • 公益財団法人・公益社団法人
  • 社会福祉法人
  • 学校法人

いずれも公的な審査や認可を経て活動する法人であり、社会的な信頼性の裏付けがある団体として位置づけられています。

相続税の非課税規定

相続税法第12条の規定により、国・地方公共団体・認定NPO法人・公益財団法人・公益社団法人・社会福祉法人などへの遺贈は、相続税の課税対象から除外されます。つまり、これらの団体へ遺贈寄付を行った分については、相続税がかからない仕組みになっています。

この非課税規定は、遺贈寄付を後押しする大きな制度的メリットである一方、次章で解説するように、「非課税になる」という言葉を悪用した勧誘にも注意が必要です。税制上の詳しい取り扱いは、必ず税理士に確認することをおすすめします。相続税シミュレーションを含めた遺贈寄付の節税効果については、遺贈寄付で相続税を軽減|仕組み・メリット・注意点を事例で徹底解説 で詳しく解説しています。

要注意!悪質な団体・勧誘に見られる4つの手口

遺贈寄付の広がりとともに、その仕組みや善意を悪用しようとする事例も報告されています。ここでは、注意すべき代表的な手口を紹介します。すべての遺贈寄付関連団体がこうした問題を抱えているわけではありませんが、判断材料として知っておくことが大切です。

手口1:「認定」を偽称・誤認させる団体

認定NPO法人や公益財団法人といった名称や、それに類似した表現を用いて、あたかも公的な認可を受けているかのように見せかけるケースが指摘されています。実際に認定を受けているかどうかは、後述する公的データベースで必ず確認できます。

手口2:遺贈寄付を勧誘し、手数料を抜く悪質コンサル

遺贈寄付の手続き支援を装いながら、不透明な名目で高額な手数料を求めたり、特定の商品やサービスの契約に誘導したりする事例が報告されています。国民生活センターも、終活に関連する儲け話やサービスをめぐるトラブルについて注意を呼びかけています。

手口3:活動実績がなく、寄付金の使途が不透明

団体としての活動実績や、過去に受け入れた寄付金がどのように使われたかが公開されていない場合、実態のない団体である可能性も否定できません。信頼できる団体であれば、活動報告や財務情報を通じて使途を明らかにしているのが一般的です。

手口4:しつこい勧誘・契約を急かす対応

「今すぐ決めないと損をする」「今日中に手続きを」といった形で判断を急がせる勧誘には注意が必要です。実際に、2025年7月には日本財団を騙り、遺贈の相談に際して指定口座への振込を案内する詐欺事案が発生したと日本財団 遺贈寄付サポートセンターから注意喚起がなされています。日本財団は、遺贈の相談で事前の振込を案内することは一切ないと明言しています。また、一部の自治体を騙り、寄付を装って金銭を要求する詐欺についても、各自治体から注意喚起が行われています。

不審に感じた場合は、消費者ホットライン「188(いやや!)」への相談や、名乗っている団体の公式窓口へ直接確認することが有効です。終活全般を狙う詐欺の手口については、終活詐欺の5つの手口と見分け方|被害にあったらすぐやるべき対処法 もあわせてご覧ください。

信頼できる団体を見極める5つのチェックポイント

悪質な手口を避けるために、寄付先を検討する際は次の5点を確認することをおすすめします。

①認定NPO法人・公益財団法人としての法的資格を確認する

自称ではなく、実際に認定を受けているかどうかは、公的なデータベースで確認できます。

団体名を検索窓に入力するだけで確認できるため、少し手間はかかりますが、寄付を決める前に一度は目を通しておきたいステップです。

②財務諸表・活動報告書が公開されているか

信頼できる団体は、収支報告や事業報告書をウェブサイトなどで公開しているのが一般的です。数年分の報告書が継続して公開されているか、第三者による会計監査を受けているかも、判断材料のひとつになります。

③遺贈寄付の実績・受入れ窓口が明確か

遺贈寄付を専門に受け付ける窓口や担当部署が設けられているか、過去にどの程度の遺贈寄付を受け入れてきた実績があるかも確認しておきたいポイントです。実績のある団体ほど、遺言書の書き方や手続きの流れについて具体的な案内を用意している傾向があります。

④日本承継寄付協会など業界団体への加盟を確認する

一般社団法人日本承継寄付協会のように、遺贈寄付の普及や啓発に取り組む業界団体も存在します。こうした団体への加盟や連携の有無は、遺贈寄付という分野に対する組織的な取り組み姿勢を知る手がかりになります。

⑤弁護士・税理士への相談を勧めてくれるか

意外と見落とされがちですが、非常に重要な視点です。信頼できる団体であれば、遺言書の作成や相続税の扱いについて、自団体だけで完結させようとせず、弁護士や税理士など第三者の専門家に相談するよう案内してくれます。逆に、専門家への相談を避けさせようとしたり、「うちに任せれば専門家は不要」といった説明をしたりする団体には、慎重な姿勢で臨むことをおすすめします。

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遺贈寄付の手続きの流れ

遺贈寄付を実現するためには、遺言書への記載が必須です。口頭での意思表示だけでは法的効力を持たないため、必ず遺言書という形で残す必要があります。

一般的な流れは次のとおりです。

  1. 寄付先の団体を検討し、可能であれば事前に問い合わせる
  2. 遺言の内容(特定の財産を寄付するか、割合で寄付するかなど)を検討する
  3. 公正証書遺言など、確実性の高い形式で遺言書を作成する
  4. 遺言執行者を指定する

とくに④の遺言執行者の指定は重要です。遺言執行者は、遺言の内容に基づいて実際に財産を寄付先へ引き渡す役割を担います。相続人以外の第三者、たとえば弁護士などの専門家を遺言執行者に指定しておくことで、相続人間の負担を軽減し、遺言内容が確実に実行されやすくなります。日本で遺言書の作成率が低い背景や、遺言がないことで起こりやすい相続トラブルについては、遺言書はなぜ日本に根付かないのか|家制度と家督相続が生んだ相続文化、現代の争族リスクを読み解く をご覧ください。

遺留分との関係にも注意する

遺贈寄付を検討する際に忘れてはならないのが、法定相続人の「遺留分」です。遺留分とは、配偶者や子どもなど一定の法定相続人に法律上保障された最低限の取り分のことで、遺言によっても完全には奪えません。

遺産の全額を寄付する内容の遺言を残した場合、遺留分を侵害されたと考える相続人から、寄付先の団体に対して遺留分侵害額請求が行われる可能性があります。これは寄付先の団体にとっても、遺された家族にとっても望ましい事態ではありません。

遺贈寄付を計画する際は、遺留分を侵害しない範囲で寄付額を設定するか、事前に家族と話し合い、理解を得ておくことが望ましいといえます。遺留分の計算は財産構成によって複雑になるケースもあるため、弁護士や税理士に相談しながら進めることをおすすめします。

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ここまで見てきたように、信頼できる遺贈寄付先を選ぶには、複数の情報源を確認し、時間をかけて検討する必要があります。せっかく確認した団体の情報や、遺言書・遺言執行者に関する情報も、家族や関係者に伝わらなければ意味がありません。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 遺贈寄付はいくらから可能ですか?
A. 団体や寄付の方法によって異なりますが、少額からでも遺贈寄付を受け付けている団体は少なくありません。具体的な金額の目安は、検討している団体に直接問い合わせることをおすすめします。

Q2. 遺贈寄付をすると、家族に財産が残らなくなりませんか?
A. 寄付する財産の範囲は遺言で自由に設定できます。全財産ではなく、一部の財産を寄付する「特定遺贈」を選べば、家族に必要な財産を残しながら社会貢献も両立できます。ただし前述のとおり、法定相続人の遺留分には配慮が必要です。

Q3. 遺言書がなくても遺贈寄付はできますか?
A. できません。遺贈寄付は遺言書による意思表示が前提となる制度です。口頭やメモだけでは法的な効力を持たないため、公正証書遺言など確実性の高い形式で残すことが重要です。

Q4. 団体が認定NPO法人かどうかは、どこで確認できますか?
A. 内閣府「NPO法人ポータルサイト」の所轄庁認定・特例認定NPO法人名簿で確認できます。団体名を検索するだけで、認定の有無や有効期間を調べられます。

Q5. 遺贈寄付について、誰に相談すればよいですか?
A. 遺言書の作成や税務上の取り扱いについては、弁護士や税理士など専門家への相談が基本となります。信頼できる団体であれば、こうした専門家への相談を案内してくれるはずです。団体自身の相談窓口だけでなく、第三者の専門家の意見も合わせて確認することをおすすめします。

まとめ:想いを確実に届けるために

遺贈寄付は、自分の財産を社会のために役立てられる、意義のある選択肢です。一方で、その広がりに乗じた悪質な団体や勧誘が存在することも事実です。

寄付先を検討する際は、認定NPO法人・公益財団法人としての資格を公的データベースで確認すること、財務情報や活動実績が公開されているか確認すること、そして専門家への相談を勧めてくれるかどうかを見極めることが、安心して一歩を踏み出すための土台になります。

大切な想いを確実に届けるためにも、時間をかけて情報を確認し、必要に応じて弁護士・税理士といった専門家の力も借りながら、納得のいく形で準備を進めていただければと思います。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。遺贈寄付先の選定や遺言書の作成、相続税の取り扱いについては、個別の事情に応じて弁護士・税理士・司法書士などの専門家にご相談ください。記事内の情報は2026年8月時点のものであり、法改正や制度変更により内容が変わる場合があります。

(本記事は、内閣府・国税庁・日本財団・日本承継寄付協会等の公開情報をもとに構成しています。最終確認日:2026年8月29日)

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