遺贈寄付で相続税を軽減|仕組み・メリット・注意点を事例で徹底解説

相続・遺言

公開日:2026年6月20日

はじめに

「相続税のシミュレーションをしてみたら、想像以上の金額になって驚いた」

大都市圏に不動産を持つ方や、長年かけて資産を築いてきた方にとって、相続税は避けて通れない課題です。しかし、財産をただ残すだけでなく、「社会に役立てながら税負担を減らす」方法があることをご存知でしょうか。

それが遺贈寄付です。

正しく活用すれば、相続税を数百万円単位で軽減しながら、自分の価値観を財産の使い道に反映させることができます。この記事では、遺贈寄付の仕組みから税制メリット、具体的な節税シミュレーション、注意点まで、事例を交えて詳しく解説します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。

遺贈寄付とは?基本的な仕組みを理解する

遺贈寄付の定義

遺贈寄付とは、遺言書によって、自分の死後に財産の一部または全部を公益団体などに寄付することです。生前に遺言書を作成し、「誰に」「何を」「どれだけ」渡すかを明記します。

通常の相続は家族など法定相続人に財産を渡しますが、遺贈寄付では特定の団体を受取人に指定します。

2種類の方法:特定遺贈 vs 包括遺贈

種類 内容 特徴
特定遺贈 「預金口座の○○円を△△法人に」のように財産を具体的に指定 何を寄付するかが明確。受遺者(寄付先)は放棄も可能
包括遺贈 「遺産の3分の1を△△法人に」のように割合で指定 負債も含まれる可能性があるため注意が必要

初めて遺贈寄付を検討する場合、寄付する財産と金額を明確にできる特定遺贈が一般的に扱いやすいとされています。

生前贈与との違い

比較項目 遺贈寄付 生前贈与
タイミング 死後 生前
手続き 遺言書 贈与契約書
生活費への影響 なし(老後の資金を確保したまま) あり(財産が減る)
取り消し 遺言書の書き直しで変更可 原則、合意がないと取り消せない

老後の生活資金を手元に残しながら寄付できる点が、遺贈寄付の大きな利点です。

相続税が非課税になる税制メリット

課税遺産総額が圧縮される仕組み

相続税は「課税遺産総額」に対して課税されます。課税遺産総額の計算式は以下のとおりです。

課税遺産総額 = 遺産総額 − 基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)

国・地方公共団体・認定NPO法人・公益財団法人・公益社団法人・社会福祉法人などの特定の団体への遺贈は、相続税法上の規定(相続税法第12条)により、相続税の課税対象から除外されます。

つまり、寄付した分だけ課税遺産総額が圧縮され、相続税が軽減される仕組みです。

準確定申告での所得税控除も活用可能

認定NPO法人などへの遺贈寄付は、被相続人の死亡年分の準確定申告(死後4ヶ月以内)において、所得税の寄付金控除の対象にもなります。相続税と所得税、両面での節税効果が期待できます。

税額シミュレーション(遺産総額別)

※以下はあくまで概算です。実際の税額は個別の状況により異なります。

遺産総額 法定相続人 基礎控除 寄付額 課税遺産総額 相続税の目安(軽減後)
1億円 子2人 4,200万円 2,000万円 3,800万円 約320万円(寄付なし比▲約190万円)
1億8,000万円 子2人 4,200万円 5,000万円 8,800万円 約1,200万円(寄付なし比▲約500万円)
3億円 子3人 4,800万円 8,000万円 1億2,200万円 約2,200万円(寄付なし比▲約1,200万円)

具体的な事例で見る節税効果

※以下の事例はすべて創作です。実際の税額は個人の状況や評価額により異なります。参考値としてご覧ください。

事例1:相続税軽減目的(東京都内・75歳男性)

前提条件

  • 財産:自宅(評価額1億5,000万円)+金融資産3,000万円 計1億8,000万円
  • 法定相続人:子供2人
  • 基礎控除:3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円

遺贈寄付なしの場合

項目 金額
遺産総額 1億8,000万円
基礎控除 △4,200万円
課税遺産総額 1億3,800万円
相続税(概算) 約1,700万円

認定NPO法人に5,000万円を遺贈寄付した場合

項目 金額
遺産総額 1億8,000万円
遺贈寄付(非課税) △5,000万円
基礎控除 △4,200万円
課税遺産総額 8,800万円
相続税(概算) 約1,200万円

約500万円の相続税軽減効果。子供2人の相続財産は1億3,000万円として残る。

この男性は長年支援してきた医療系NPOへの寄付を希望しており、「財産を社会に還元しながら、税負担も減らせる」という形を実現できました。

事例2:おひとりさまの活用(65歳・独身女性)

前提条件

  • 財産:金融資産2,000万円
  • 法定相続人:なし
  • 遺言書なしの場合の行方:最終的に国庫へ帰属

法定相続人がいない場合、遺産は家庭裁判所の手続きを経て最終的に国に納められます(国庫帰属)。本人が「誰かの役に立てたい」と思っていても、その意思は実現されません。

遺贈寄付を活用した場合

「海洋環境保護に取り組む認定NPO法人に2,000万円を全額遺贈する」と遺言書に明記。

➡ 財産が国庫に吸収されることなく、自分が信じる活動に全額が活用される。相続税も非課税。

おひとりさまにとって遺贈寄付は、「自分の人生の延長線上で財産を生かす」最も有効な手段の一つです。

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有効なケース vs 向かないケース

遺贈寄付が特に有効なケース

① 大都市圏に高額不動産を持つ方
地価の高い東京・大阪・名古屋などでは、自宅の評価額だけで相続税の基礎控除を大きく超えることがあります。そうした方が遺産の一部を遺贈寄付することで、課税対象を大幅に圧縮できます。

② 相続人がいない、またはいても少ないおひとりさま
法定相続人がいない場合、遺産は国庫へ。自分の意思で行き先を決めるためにも、遺贈寄付は有力な選択肢です。

③ 社会貢献の意思がある富裕層
「子供たちには十分な資産を残せる。残りは社会のために使いたい」という価値観の方に最適です。

④ 相続税を払うために不動産売却が必要になる可能性がある方
現金が少なく不動産が多い場合、遺贈寄付で課税額を圧縮することで、家族が売却しなくて済む可能性があります。

遺贈寄付が向かないケース

① 遺産が基礎控除内に収まる方
そもそも相続税がかからない場合、税制上のメリットはありません。ただし「財産の使い道を自分で決める」という目的での遺贈寄付は有効です。

② 相続人への配慮が最優先の方
家族に十分な財産を残すことが最優先であれば、遺贈寄付よりも遺産分割の最適化を先に検討すべきです。

③ 財産のほとんどが不動産で、現金・預金が少ない方
不動産の遺贈寄付は、受け入れ可能な団体が限られます。また、みなし譲渡所得税の問題も生じるため、専門家との事前協議が不可欠です。

寄付先の選び方|認定NPO法人 vs 公益財団法人

相続税非課税になる寄付先の条件

すべての団体への遺贈が相続税非課税になるわけではありません。対象となるのは、主に以下の団体です。

寄付先 相続税の扱い
国・地方公共団体 非課税
認定NPO法人 非課税
公益財団法人・公益社団法人 非課税
社会福祉法人 非課税
日本赤十字社・学校法人など 非課税(一部要件あり)
一般社団法人(公益認定なし) 課税
任意団体・個人 課税

寄付先が「認定NPO法人」「公益財団法人」などであることの確認は必須です。

認定NPO法人とは

NPO法人(特定非営利活動法人)のうち、所轄庁(都道府県または内閣府)から「認定」を受けた法人です。

認定を受けるための主な要件:

  • 活動が不特定多数の利益に貢献していること
  • パブリックサポートテスト(PST)をクリアすること(一定割合以上の寄付収入など)
  • 会計が適正に行われ、情報公開がされていること

認定NPO法人への遺贈は相続税・所得税ともに優遇を受けやすく、社会的な信頼性も高い団体が多いのが特徴です。

公益財団法人・公益社団法人とは

「公益認定等委員会」または都道府県が、公益性を認定した財団法人・社団法人です。

主な特徴:

  • 医療・教育・文化・環境など多岐にわたる分野で活動
  • 規模の大きな財団が多く、遺贈受け入れの体制が整っていることが多い
  • 不動産などの現物資産を受け入れられる財団もある

寄付先を選ぶ際のチェックポイント

  1. 認定NPO法人・公益財団法人の認定番号を確認する(内閣府・国税庁のデータベースで検索可能)
  2. 活動分野・理念が自分の価値観と合致しているか
  3. 財務状況・情報公開が適切か(年次報告書・決算書の公開状況)
  4. 遺贈(特に不動産・現物資産)を受け入れているか事前確認
  5. 担当窓口があり、遺言書作成前に相談できるか

必ず知っておきたい4つの注意点

注意点① 遺留分侵害リスク

遺留分とは、配偶者・子・直系尊属などの法定相続人に法律で保障された最低限の相続分です。遺贈寄付によってこの遺留分を侵害した場合、相続人から「遺留分侵害額請求」をされるリスクがあります。

遺留分の割合(目安):

相続人の構成 遺留分の合計
配偶者のみ 遺産の1/2
子のみ 遺産の1/2
配偶者+子 遺産の1/2(各人で按分)
直系尊属のみ 遺産の1/3

実務上の目安:法定相続人への相続分が遺留分以上確保されていれば、法的なトラブルを防ぎやすくなります。ただし、遺留分は法的な最低ラインであり、家族間の納得感を得るためには遺留分以上を残す判断も重要です。

⚠️ 個別のケースについては必ず税理士・弁護士にご相談ください。

注意点② みなし譲渡所得税

不動産や株式・投資信託などの有価証券を現物のまま遺贈寄付した場合、被相続人が「時価」で売却したものとみなされ、含み益に対して所得税が課税される場合があります(所得税法第59条)。

この課税は「みなし譲渡所得税」と呼ばれ、法定相続人が準確定申告で納税する必要があります。

例:

  • 取得価格3,000万円の土地が評価額5,000万円になった場合
  • 含み益2,000万円に対してみなし譲渡所得税が課される
  • 税率は長期譲渡所得として約20.315%(所得税+住民税)

現物不動産・含み益のある有価証券を遺贈寄付する場合は、この課税も織り込んだ上で計画する必要があります。

⚠️ 個別のケースについては必ず税理士・弁護士にご相談ください。

注意点③ 税逃れ認定リスク

相続税法第66条には、公益法人等への遺贈が「相続税を不当に減少させるために行われた」と税務署に認定された場合、その法人を「個人」とみなして相続税を課税する規定があります。

リスクが高まるケース(例):

  • 寄付先の公益法人の役員や理事が、被相続人や相続人の身内で占められている
  • 寄付の実態がなく、形式的な書類上の処理のみ
  • 寄付した財産が実質的に相続人の利益になっている

正規の認定NPO法人・公益財団法人に適切な手続きを経て遺贈寄付を行う限り、このリスクは低いと考えられます。念のため、専門家と一緒に進めることが重要です。

⚠️ 個別のケースについては必ず税理士・弁護士にご相談ください。

注意点④ 遺言執行者の指定が必須

遺言書に遺贈寄付の意思を記載しても、遺言を実行する「遺言執行者」が指定されていない場合、手続きが滞ったり、実現されないリスクがあります。特に相続人と寄付先の間での調整が必要な場合、執行者不在では問題が生じやすくなります。

また、一部の団体は「不動産」や「現物株式」を受け入れていません。事前に寄付先の受け入れ可能財産を確認し、それに合わせた遺言書を作成することが重要です。

⚠️ 個別のケースについては必ず税理士・弁護士にご相談ください。

DENは、遺贈寄付の意思・寄付先情報・遺言書の保管場所・担当弁護士の連絡先を一元管理できるデジタル終活サービスです。現在モニターを募集しています。

遺贈寄付の進め方・5ステップ

STEP 1:寄付先を選ぶ
支援したい活動分野(医療・環境・子ども支援など)を決め、認定NPO法人・公益財団法人のリストから候補を絞り込みます。「遺贈寄付を受け入れているか」「不動産など現物資産に対応しているか」を事前に問い合わせて確認しましょう。参考として、遺贈寄付に対応した団体のリストは「日本承継寄付協会(いぞう.jp)」でも確認できます。

STEP 2:税理士・弁護士に相談する
遺産総額・家族構成・財産の種類(現金・不動産・有価証券など)に応じた最適な寄付額・方法を専門家と設計します。遺留分の計算や、みなし譲渡所得税の有無もこの段階で確認します。

STEP 3:公正証書遺言を作成する
遺贈寄付を確実に実行するには、公証役場で作成する公正証書遺言が最も安全です。自筆証書遺言に比べて偽造・紛失のリスクが低く、家庭裁判所の検認も不要です。

STEP 4:遺言執行者を指定する
遺言書内に遺言執行者(弁護士や信託銀行など)を明記します。遺言執行者が寄付先への財産移転を実行します。

STEP 5:寄付先へ事前通知する
死後に初めて寄付先に連絡が行くと、受け入れ準備が間に合わないことがあります。生前に寄付先の担当窓口へ連絡し、金額・財産の種類・時期などを共有しておくと、スムーズに実行されます。

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遺言書だけでは不十分な理由

遺言書は「法的な効力」を持ちますが、保管場所を家族が知らない・どの弁護士に依頼したかわからない、といった問題が実際に起きています。また、寄付先の連絡先・口座情報・担当者名など、スムーズな執行に必要な情報が散在していると、手続きが遅延する原因になります。

DENのデジタルエンディングノートが解決する課題

デジタルエンディングノート「DEN(Digital Ending Note)」は、富裕層・経営者・資産家の方が、終活に関する情報を安全かつ体系的に管理するためのサービスです。

遺贈寄付に関して記録できる主な情報:

記録項目 内容例
遺贈寄付の意思・寄付先 団体名・認定番号・担当者連絡先
寄付する財産の内容 金融資産の口座情報・不動産の所在
遺言書の保管場所 公証役場の番号・保管場所
専門家の連絡先 担当弁護士・税理士・遺言執行者の氏名・連絡先
寄付の理由・メッセージ 家族へのメッセージ、寄付先への感謝の言葉

安心のセキュリティ

DENは高水準の暗号化と厳格なアクセス管理により、情報の漏洩リスクを最小化。本人が指定した「開示タイミング」「開示先」だけに情報が届く設計になっています。

遺贈寄付は「遺言書を作る」だけで終わりではありません。大切な意思を確実に届けるために、DENで関連情報を一元管理することをお勧めします。

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まとめ:遺贈寄付を検討するなら、今すぐできる3つのこと

遺贈寄付は、相続税対策としての有効性と、社会への貢献という価値観を同時に実現できる、非常に合理的な手段です。

ポイントの整理:

  1. 国・地方自治体・認定NPO法人・公益財団法人への遺贈は、相続税の課税対象外。課税遺産総額を圧縮することで、相続税を数百万円単位で軽減できる。
  2. 遺留分・みなし譲渡所得税・遺言執行者の指定など、実行には注意すべきポイントがある。必ず税理士・弁護士と事前に設計すること。
  3. 寄付先の選び方が重要。認定NPO法人・公益財団法人であること、遺贈を受け入れているかを事前確認すること。

今すぐできること:

  • 自分の遺産総額・法定相続人の数を確認し、相続税の概算を把握する
  • 支援したい活動分野・団体をリストアップする
  • DENで遺贈寄付の意思・寄付先情報を記録し始める
  • 税理士・弁護士への相談予約を入れる

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律・税務アドバイスを提供するものではありません。実際の判断・手続きについては、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。記事内の情報は2026年6月時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。

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