最終更新日: 2026年6月7日
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。
「自分が亡くなった後、誰が葬儀を手配してくれるのだろう」。
「家族に迷惑をかけずに逝きたいが、何か方法はないか」——。
そのようにお考えの方が、近年急増しています。
特に、おひとりさまや頼れる親族が少ない方にとって、死後の事務手続きは大きな不安の種です。遺言書を書いても、葬儀の手配や公共料金の解約は遺言書では対応できません。
そこで注目されているのが、死後事務委任契約です。
生前に信頼できる人や専門家と契約を結ぶことで、自分の死後にやっておきたいことを確実に実行してもらえます。本記事では、死後事務委任契約の基本から費用・手続きの流れまで、わかりやすく解説します。
本記事でわかること
- 死後事務委任契約の定義と仕組み
- 利用すべき3つのケースと委任できる内容
- デジタル資産(SNS・ネット銀行)の死後処理方法
- 費用の相場と手続きの流れ(5ステップ)
- 遺言書との違いと上手な使い分け方
死後事務委任契約とは何か
死後事務委任契約とは、委任者(自分)が受任者(信頼できる人や専門家)に対して、自分が亡くなった後に行う事務手続きを生前に依頼する契約です。
弁護士の長瀬氏は、次のように解説しています。
「死後事務委任契約とは、委任者が受任者に死後の事務を生前に依頼する契約です。葬儀関係、行政機関への届け出、病院代等の精算、お住まいの片付けなどを第三者に依頼する場面で利用されます。」
(出典:YouTube「死後の大変な事務作業を任せたい『死後事務委任契約』」/ 弁護士・長瀬氏)
「遺言書があれば十分では?」と思われる方も多いですが、遺言書は財産の分配先を決めるものです。葬儀の手配や行政手続きの実行は、遺言書だけでは対応できません。この点が、死後事務委任契約が注目される最大の理由です。
契約の仕組みと当事者
| 役割 | 説明 |
|---|---|
| 委任者 | 契約を結ぶ本人(あなた) |
| 受任者 | 事務を引き受ける人(弁護士・司法書士・信頼できる知人等) |
| 実行タイミング | 委任者の死後 |
受任者には、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)のほか、信頼できる知人や NPO 法人を指定することもできます。依頼内容が多岐にわたる場合は、専門家や専門法人に依頼するのが安心です。
いつ・誰と締結するのか
契約は生前に行います。元気なうちに準備を整えることが重要です。
受任者の候補としては次のような方が挙げられます。
- 弁護士・司法書士・行政書士などの士業専門家
- 弁護士法人・司法書士法人(法人のほうが継続性が高い)
- 信頼できる友人・知人
- NPO 法人(終活支援を行う団体)
- 信託銀行(一部サービスで対応)
死後事務委任契約が必要な3つの場面
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① おひとりさまで頼れる家族がいない
近年、単身世帯の増加とともに、「亡くなった後に誰も手続きをしてくれる人がいない」という相談が急増しています。
相続人がいない場合、財産は最終的に国に帰属します。しかし葬儀・家の片付け・各種解約手続きは、誰かが動かなければ進みません。死後事務委任契約を結んでおくことで、こうした手続きを確実に行ってもらえます。
② 葬儀方法・お墓など自分の希望を確実に反映したい
「家族葬で静かに見送ってほしい」「散骨を希望する」「特定のお寺に埋葬してほしい」——こうした希望は、遺言書に記載しても法的拘束力がありません。
死後事務委任契約であれば、こうした希望を法的に有効な形で委任することができます。自分の意思を確実に実現するための手段として有効です。
③ 子や親族への負担を最小限に抑えたい
亡くなった後の手続きは、想像以上に多く・複雑です。行政への届け出だけで 10 種類以上、さらに各種解約・精算・遺品整理が続きます。
「子供たちに迷惑をかけたくない」という方にとって、死後事務委任契約は家族への思いやりの一つといえます。
死後事務委任契約で依頼できる主な内容一覧
依頼できる内容は個別に設定できます。以下は代表的な例です。
① 葬儀・埋葬・散骨に関する手続き
- 遺体の引き取り手配
- 葬儀・告別式の手続き
- 埋葬・散骨・納骨の手続き
- 御廟・霊園との手続き
② 行政機関への各種届け出
- 死亡届の提出
- 健康保険証の返還
- 運転免許証・パスポートの返還・廃棄
- 年金受給資格の抹消申請
- 住民税・固定資産税等の納付手続き
③ 生活関連の解約・精算手続き
- 関係者への訃報連絡
- 病院・介護施設の未払い料金の精算
- 賃貸不動産の契約解除・明け渡し
- 電気・ガス・水道などの公共料金の精算・解約
- インターネット回線の解約
- SNS アカウントの削除・承継
- パソコン・スマートフォンの個人情報抹消
- ペットの引き渡し・施設への入所手続き
これらをすべて依頼する必要はありません。自分の状況に合わせて、必要な項目だけを選んで契約できます。
デジタル資産の死後処理も委任できる
現代の終活で急増しているのが、デジタル資産の死後処理への相談です。
スマートフォン・パソコンの普及により、私たちの財産や個人情報の多くがデジタル空間に存在するようになりました。これらを死後に適切に処理しなければ、プライバシー侵害や財産の散逸につながりかねません。
SNS アカウントの削除・インターネット解約
Facebook・Instagram・LINE・X(Twitter)などは、本人が亡くなっても自動的に削除されません。放置すれば不正アクセスやなりすましのリスクがあります。
死後事務委任契約では、以下のデジタル手続きを委任できます。
- X(Twitter)・Facebook・Instagram のアカウント削除申請
- LINE アカウントの削除
- インターネット回線・プロバイダの解約
- メールアカウントの削除
ただし、各 SNS の削除申請にはアカウント ID とパスワードが必要です。受任者がこれらを把握していなければ手続きが進みません。事前にアクセス情報を安全な方法で受任者に伝えられる準備が必要です。
ネット銀行・仮想通貨の相続手続きとの連携
ネット銀行(楽天銀行・PayPay 銀行等)や仮想通貨(ビットコイン等)は、通帳や証書が存在しません。家族が口座の存在を知らなければ、相続財産として扱われず失われる可能性があります。
死後事務委任契約と組み合わせて、以下を準備しておきましょう。
- ネット銀行の口座番号・ログイン情報のリスト
- 仮想通貨取引所のアカウント情報
- 各口座の残高概算
死後事務委任契約の3つのメリット
メリット① 生前に死後の事項を確実に決定できる
遺言書だけでは対応できない、葬儀方法・行政手続き・生活関連の解約などを、生前に確定しておけます。「自分の意思で自分の最後を整える」ことができる点が最大のメリットです。
メリット② 残された家族の負担を大幅に軽減できる
亡くなった後の手続きは、精神的・体力的に非常に消耗します。専門家に委任しておくことで、遺族は悲しみに向き合いながら、実務的な重荷を軽くできます。
メリット③ 遺言書でカバーできない事務手続きに対応できる
遺言書に記載できる事項は「法定遺言事項」に限られています。葬儀の主催・市役所への行政手続き・病院代の精算などは遺言書では対応できません。これらを補完する手段として、死後事務委任契約は非常に有効です。
死後事務委任契約の費用・相場
費用は依頼する内容・受任者によって異なります。目安として以下を参考にしてください。
| 依頼先 | 費用の目安 |
|---|---|
| 弁護士・司法書士 | 50万〜150万円程度(内容による) |
| 行政書士 | 30万〜100万円程度 |
| NPO 法人 | 30万〜80万円程度 |
| 信託銀行 | 100万〜300万円程度 |
費用の内訳は大きく2つです。
- 報酬金: 受任者への委任報酬
- 実費: 葬儀費用・行政手続き費用・交通費等の実費
一般的には、契約締結時に報酬金と実費の見込み額を予納(前払い)します。死後に委任事務が執行された後、精算が行われます。
費用を抑えたい場合は、依頼内容を絞り込む方法も有効です。必要な事務だけを選んで契約することで、費用を最小限に抑えられます。
手続きの流れ(5ステップ)
死後事務委任契約を締結し、執行されるまでの流れを解説します。
ステップ1: 依頼したい事項を整理する
葬儀・行政手続き・デジタル資産処理など、委任したい内容をリストアップします。
ステップ2: 受任者を選ぶ
弁護士・司法書士・NPO などの中から信頼できる受任者を選びます。複数の専門家に相談し、費用・対応範囲を比較することをお勧めします。
ステップ3: 契約書を作成・締結する
依頼事項を盛り込んだ契約書を作成し、署名・押印して締結します。公正証書にすることで証拠力が高まります。
ステップ4: 報酬金・実費を予納する
死後の業務遂行に必要な費用を事前に預けます(預託)。
ステップ5: 死後に委任事務が執行される
本人の死後、受任者が契約内容に従って各種手続きを実行します。完了後、相続人や指定先に完了報告と精算が行われます。
遺言書との違い・上手な使い分け方
「遺言書があれば死後事務委任契約は不要では?」という疑問をよく受けます。この2つは目的が異なるため、基本的には両方を準備することが理想です。
| 項目 | 遺言書 | 死後事務委任契約 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 財産の分配 | 事務手続きの実行 |
| 法的拘束力の範囲 | 法定遺言事項のみ | 委任内容全般 |
| 葬儀方法の指定 | 希望記載は可・強制力なし | 法的に委任可能 |
| 行政手続き | 対応不可 | 対応可能 |
| デジタル資産処理 | 対応困難 | 対応可能 |
遺言書は「誰に何を残すか」を決める手段です。死後事務委任契約は「誰が何をやってくれるか」を決める手段です。この2つを組み合わせることで、死後の手続き全般をカバーできます。
公正証書遺言・自筆証書遺言のどちらの場合も、死後事務委任契約と一緒に整備することをお勧めします。
死後事務委任契約の注意点・よくある失敗
注意点① 受任者が先に亡くなる可能性がある
受任者に個人を指定した場合、受任者が先に亡くなると契約が終了するリスクがあります。弁護士法人・司法書士法人などの「法人」を受任者にすることで、このリスクを回避できます。
注意点② 相続人との関係に配慮が必要
死後事務委任契約の内容が、相続人の意向と食い違う場合はトラブルになることがあります。家族に事前に説明しておくことで、後の摩擦を防げます。
注意点③ デジタル資産の情報を安全に伝える方法を決めておく
SNS アカウントやネット銀行のパスワードを、そのまま受任者に渡すのはセキュリティ上のリスクがあります。DEN のような暗号化保管サービスを活用し、死後にのみ開示される仕組みを整えておきましょう。
注意点④ 費用の準備を忘れない
予納した費用が不足すると、委任事務の執行が滞る可能性があります。費用の見積もりを受任者と綿密に確認し、余裕を持って準備しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 死後事務委任契約は公正証書にする必要がありますか?
法律上は必須ではありませんが、公正証書にすることを強く推奨します。公正証書にすることで証拠力が高まり、受任者が死後の手続きを行う際にスムーズに対応してもらいやすくなります。
Q2. 費用の相場はいくらくらいですか?
依頼する内容や受任者によって異なりますが、一般的には 30万〜150万円程度が目安です。内容を絞ることで費用を抑えることも可能です。まずは専門家に相談し、見積もりを取ることをお勧めします。
Q3. 受任者が先に亡くなった場合はどうなりますか?
受任者が個人の場合、受任者の死亡により契約が終了するリスクがあります。このリスクを避けるには、弁護士法人・司法書士法人などの「法人」を受任者にする方法が有効です。
Q4. 遺言書と死後事務委任契約は同時に作れますか?
はい、両方を同時に準備することが可能ですし、それが理想的です。遺言書で財産の分配を決め、死後事務委任契約で事務手続きを委任することで、死後の手続き全般をカバーできます。
Q5. デジタル資産(SNS・ネット銀行)も委任できますか?
委任できます。SNS アカウントの削除・インターネット解約・ネット銀行の解約手続きなども死後事務委任契約に含めることができます。ただし、受任者がスムーズに手続きできるよう、アクセス情報を事前に整理・保管しておく準備が必要です。
まとめ
死後事務委任契約は、亡くなった後の事務手続きを生前に専門家や信頼できる人に委任できる制度です。
特に以下のような方にとって、大きな安心をもたらします。
- おひとりさまで頼れる家族がいない方
- 自分の意思(葬儀方法・お墓など)を確実に実現したい方
- 家族への負担を最小限にしたい方
- デジタル資産の処理が心配な方
遺言書だけでは対応できない事務手続きを確実に委任できる点が、この制度の最大の価値です。遺言書と組み合わせることで、死後の手続き全般をカバーできます。
デジタル資産の管理については、死後事務委任契約と合わせてデジタル終活ツール「DEN」の活用を検討されることをお勧めします。アカウント情報・パスワードを安全に暗号化保管し、亡くなった後に受任者や家族へ確実に引き継ぐ仕組みを整えられます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。
最終更新日: 2026年6月7日
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