非上場株式(自社株)の相続税評価ルールが見直しへ|2026年9月最新動向・検討中の変更点と今すぐできる対策

非上場株式の企業評価と事業承継をイメージした天秤とオフィス街のシルエット写真 相続税対策

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。非上場株式の評価・事業承継税制の適用・生前贈与の実行など、個別の判断が必要な事項については、必ず税理士・中小企業診断士・弁護士など専門家にご相談ください。

※本記事は2026年9月時点の情報です。本文で取り上げる評価ルールの見直しは国税庁の有識者会議で検討中の段階であり、制度の詳細・適用時期は今後の税制改正論議によって変更される可能性があります。確定情報ではない点にご注意ください。


「会社の業績は順調。でも、それがそのまま相続税の負担増につながるとは思わなかった」——非上場会社を経営するオーナーの間で、いま静かに広がっている懸念です。

報道によると、国税庁は非上場株式(自社株)の相続税評価について、実に62年ぶりとなる抜本的な見直しの検討を進めています。2024年に大きな話題となったマンションの相続税評価改正と同じく、「実際の取引価格(時価)と相続税評価額の乖離」を是正する方向の議論です。

まだ最終決定ではありません。しかし、含み益の大きい非上場株式を保有する中小企業オーナーにとっては、評価額の上昇=相続税負担の増加、さらには事業承継そのものへの影響につながりかねないテーマです。

本記事では、2026年9月時点で分かっている検討状況を整理したうえで、現行制度で今すぐ着手できる対策までをまとめます。

この記事で分かること

  • 非上場株式の現行の相続税評価方法(3つの方式)
  • なぜ評価ルールの見直しが検討されているのか
  • 見直しの方向性と、マンション評価改正との共通点
  • 評価額が上がった場合の負担イメージ(概算シミュレーション)
  • 事業承継税制・株価対策・生前贈与という3つの現行対策

【速報】非上場株式の相続税評価ルールが約62年ぶりに見直しへ

国税庁は2026年4月、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を立ち上げました。前回、非上場株式の評価方式が抜本的に見直されたのは1964年(昭和39年)とされており、実現すれば約62年ぶりの大改正となります。

有識者会議はこれまでに複数回開催されており、国税庁の公式資料は誰でも確認できます。

報道によれば、国税庁は複数の評価方式を、企業の簿価純資産と収益力をベースにした「残余利益方式」に一本化する案を軸に検討を進めているとされます。あわせて、会社規模による評価方式の区分を廃止する案も議論の対象です。

現時点(2026年9月)でのスケジュール観測は以下の通りです。

項目 現時点での見通し
議論の場 国税庁「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」
結論の時期 2027年度税制改正での決着を目指すとの報道
適用開始(想定) 2028年1月以降の相続からとの観測報道あり
確定状況 未確定。今後の議論で変更の可能性あり

この時点でもっとも重要なのは、「まだ検討段階であり、何も決まっていない」という事実です。 以降の内容も、現時点の報道・国税庁資料に基づく検討状況の整理であり、確定した制度変更ではありません。

現行の評価方式はどうなっている?3つの方式を比較

見直しの中身を理解するには、まず現行のルールを押さえておく必要があります。非上場株式の相続税評価は、会社の規模や株式を取得する人の立場によって、主に3つの方式が使い分けられています。

評価方式 主な対象 評価の考え方
類似業種比準価額方式 大会社(同族株主が取得する場合) 業種の近い上場企業の株価を参考に算定
純資産価額方式 小会社(同族株主が取得する場合) 会社の総資産・負債から算定した純資産をもとに算定
配当還元方式 経営に関与しない少数株主が取得する場合 過去の配当実績をもとに簡易的に算定
中会社の場合 中会社(同族株主が取得する場合) 類似業種比準価額方式と純資産価額方式を一定割合で併用

同じ会社の株式であっても、「誰が取得するか」「会社の規模がどの区分にあたるか」によって評価額が変わる仕組みになっている点が、非上場株式評価の分かりにくさの一因です。

なぜ見直しが必要なのか|時価との乖離という構造的な問題

見直しの発端は、2024年11月に会計検査院が示した指摘だとされています。

報道によれば、会計検査院は「類似業種比準価額方式を用いると、純資産価額方式に比べて評価額が相当低い水準になる傾向がある」こと、また「会社規模が大きい会社ほど、この乖離が大きくなりやすい」ことを問題視したとされています。

つまり、業績が好調で内部留保が厚い会社ほど、実際の企業価値(時価)と相続税評価額の差が開きやすく、結果として意図的な節税に使われやすい構造になっている、という指摘です。

これは、異なる規模・業種の会社を持つオーナー間で「評価の公平性が保たれていないのではないか」という論点にもつながっており、有識者会議で継続的に議論されています。

見直しの方向性|「残余利益方式」への一本化とマンション評価改正との共通点

報道や国税庁の公表資料によると、検討されている新ルール案の柱は次の2点です。

  1. 評価方式の一本化:類似業種比準価額方式に代わり、企業の簿価純資産と収益力(利益)をベースにした「残余利益方式」に一本化する案が軸になっているとされる
  2. 会社規模区分の廃止:現行の「大会社・中会社・小会社」という区分そのものを見直す案も議論されている

この流れは、2024年に実施されたマンション(居住用の区分所有財産)の相続税評価改正と同じ方向性です。マンション評価改正も、「相続税評価額が市場での取引価格(時価)と大きく乖離しているケースがある」という問題意識から、評価額を時価に近づける補正率が導入されました。

具体的な検討内容は、国税庁が有識者会議の各回で公表している資料からも確認できます。

非上場株式についても、「実勢に近い評価に近づける」という国税庁の姿勢は一貫していると捉えることができます。ただし、非上場株式の評価方法の見直しは、マンション評価改正よりも制度設計が複雑で、検討にはより時間がかかる見通しです。

評価額が上がるとどうなる?影響を受けるケースと概算シミュレーション

現時点の報道を総合すると、見直しの影響は一様ではないとみられています。

  • 業績好調・内部留保が厚い中小〜大規模の非上場企業:評価額が上がり、相続税の負担が増える方向で検討されているとされる
  • 規模の小さい零細企業:会社規模区分の廃止などにより、むしろ税負担が軽くなる可能性があるとの報道もある

ここでは、あくまで理解を助けるための概算イメージとして、現行の類似業種比準価額方式による評価額が、仮に残余利益方式の導入で2割程度上昇したケースを試算してみます(実際の増減幅は会社の業種・収益構造によって大きく異なり、この数値を保証するものではありません)。

項目 現行制度(概算) 見直し後(概算・2割上昇と仮定)
自社株の相続税評価額 3億円 3億6,000万円
相続税評価額の増加分 — +6,000万円
適用される相続税率帯(目安) 40〜50%程度 40〜50%程度
増加分にかかる相続税負担(目安) — 約2,400万〜3,000万円

このシミュレーションはあくまで一つの仮定であり、実際の評価方法や上昇幅は今後の議論次第で大きく変わります。 それでも、含み益の大きい自社株を保有するオーナーにとって、無視できない規模のインパクトが生じ得ることは押さえておく価値があります。

自社株の評価額や事業承継の方針は、中小企業オーナーの相続、自社株で陥る5つの落とし穴|事業承継の生前対策ガイド でも詳しく取り上げていますので、あわせてご確認ください。

今すぐできる3つの対策

制度そのものが未確定である以上、「見直し後にどう備えるか」ではなく、「今の制度でできることを、今のうちに整理しておく」ことが現実的な備え方です。

① 事業承継税制(特例措置)の活用

法人版事業承継税制の特例措置は、後継者が非上場株式を贈与・相続で取得する際の贈与税・相続税を、一定の要件のもとで納税猶予・免除できる制度です。

この特例措置の適用を受けるためには「特例承継計画」の提出が必要ですが、この提出期限が延長されています。

項目 期限
特例承継計画の提出期限 2027年9月30日(2026年度税制改正で延長)
贈与・相続による事業承継の実行期限 2027年12月31日

特例承継計画の提出期限は延長されましたが、贈与・相続の実行期限自体は変わっていません。制度の詳細な要件や、自社が適用対象になるかどうかは、税理士・中小企業診断士に必ず確認しましょう。

② 株価対策(業績調整・役員退職金の活用)

自社株の評価額は、会社の利益水準や純資産の額に連動して変動します。そのため、決算対策や役員退職金の支給タイミングを調整することで、評価額そのものをコントロールできる余地があります。

ただし、こうした株価対策は税務上の要件や妥当性の判断が専門的であり、実行のタイミングを誤ると想定した効果が得られない、あるいは税務上の問題を指摘されるリスクもあります。必ず税理士に相談のうえで進めるべき領域です。

③ 生前贈与(暦年贈与・相続時精算課税)

自社株を後継者へ段階的に生前贈与しておくことも、有効な選択肢のひとつです。ただし、2024年の税制改正により、暦年贈与の「持ち戻し期間」が3年から7年へと延長されている点には注意が必要です。

暦年贈与の仕組みや持ち戻し期間の詳細については、生前贈与の7年ルールとは|2024年改正で変わった相続税の持ち戻し期間と対策 で詳しく解説しています。相続時精算課税制度との使い分けも含めて、専門家と一緒に方針を決めることをおすすめします。

デジタル終活を効率的に進めたい方は、DENのモニター募集をご確認ください。自社株の評価額や事業承継の検討状況を記録・整理しておくことは、相続・事業承継の備えとして有効です。

なお、非上場株式以外にも、相続税評価をめぐる制度は同時並行で検討が進んでいます。関連して【速報】個人向け国債の相続税、非課税化が検討中に|現行制度との違いと今後の動向 もあわせてご覧いただくと、相続税制全体の動きを把握しやすくなります。

DENで自社株情報・評価額・事業承継計画を記録しておく重要性

非上場株式の評価ルールがどう変わるにせよ、「自社株の評価額や事業承継の検討経緯を、家族や後継者にきちんと伝えられる状態にしておく」ことの重要性は変わりません。

制度が複雑で、しかも変化し続ける自社株の相続対策は、オーナー一人の頭の中だけで完結させてしまうと、いざというときに後継者や家族が判断に迷う原因になります。

  • 現在の自社株の評価額(毎年の概算)
  • 事業承継税制の適用状況・特例承継計画の提出状況
  • 生前贈与の実行履歴
  • 顧問税理士・専門家の連絡先

こうした情報をエンディングノートの形で整理・保管しておくことで、相続発生時の混乱を減らし、後継者がスムーズに事業を引き継げる土台をつくれます。DENは、こうした相続・事業承継に関する大切な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。現在、サービス開始に向けてモニターを募集しています。詳細はこちら

よくある質問(FAQ)

Q1. 非上場株式の評価ルールはもう決まったのですか?

いいえ、決まっていません。2026年9月時点では、国税庁の有識者会議で検討が進んでいる段階です。今後の税制改正の議論次第で、内容・適用時期ともに変更される可能性があります。

Q2. 評価額はどのくらい上がる可能性がありますか?

現時点で具体的な上昇率は公表されていません。本記事のシミュレーションはあくまで理解を助けるための概算例であり、実際の増減幅は会社の業種や収益構造、最終的な制度設計によって大きく異なります。

Q3. すべての非上場企業で評価額が上がるのですか?

一様ではないとみられています。報道では、業績好調で内部留保の厚い企業は評価額が上がる方向、規模の小さい零細企業はむしろ下がる可能性があるとされています。

Q4. 見直しが確定するまで何もしなくていいですか?

制度が未確定だからこそ、現行制度で使える事業承継税制・生前贈与などの対策は、早めに検討しておく価値があります。制度変更後に慌てて対応しようとすると、選択肢が限られてしまう可能性があります。

Q5. どの専門家に相談すればよいですか?

自社株評価や事業承継税制の適用可否は、税理士・中小企業診断士が専門的に扱う領域です。経営権の承継や株主間の調整が絡む場合は、弁護士への相談もあわせて検討しましょう。

Q6. マンション評価改正とはどう違うのですか?

どちらも「相続税評価額と時価の乖離を是正する」という問題意識は共通しています。ただし非上場株式は評価の仕組みがより複雑なため、制度設計の検討にはマンション評価改正以上に時間がかかるとみられています。

まとめ

非上場株式(自社株)の相続税評価ルールは、約62年ぶりの見直しに向けた議論が国税庁の有識者会議で進んでいます。類似業種比準価額方式など現行3方式を「残余利益方式」に一本化する案が軸に検討されており、実現すれば時価に近い評価に近づく可能性がありますが、2026年9月時点ではまだ何も決まっていません。

含み益の大きい非上場株式を保有する中小企業オーナーにとっては、評価額の上昇が相続税負担の増加や事業承継への影響につながり得るテーマです。制度の行方を注視しつつ、事業承継税制の活用・株価対策・生前贈与といった現行制度でできる対策を、税理士・中小企業診断士とともに早めに検討しておくことをおすすめします。

情報は今後アップデートされ次第、随時見直していきます。

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