2026年7月以降、個人向け国債の相続税を非課税にする案が政治の場で相次いで浮上しています。国民民主党はNISA口座内で保有する国債について相続税を非課税とする法案を参議院に提出したと報じられており、片山財務大臣も国債の商品性見直しを急ぐ考えを示したとされています。ただし、2026年8月時点でこの非課税化は決定した制度ではありません。
本記事では、報道されている検討内容を正確に整理したうえで、現行制度との違い、非課税になった場合に想定されるメリット、そして「決まっていない今」だからこそ準備しておきたいことを解説します。
本記事で理解できること
– 政府・与野党が検討しているとされる国債の相続税非課税案の中身
– 現行制度では国債が相続税の課税対象であるという事実
– 非課税になった場合に想定される節税効果のイメージ
– 生命保険の非課税枠・生前贈与など既存の相続税対策との違い
– 個人向け国債(変動10年・固定5年・固定3年)の基本
– 今後どのように動向を注視すべきか
※本記事は2026年8月時点の情報にもとづいています。制度の詳細・施行時期は今後の議論や税制改正により変更される可能性があります。
- 現行制度のおさらい|国債は今のところ相続税の課税対象
- 何が検討されているのか|NISA組み入れ+相続税非課税案の中身
- なぜ今検討されているのか|日銀の国債買入れ縮小と個人保有層拡大の狙い
- もし非課税になったら|相続税対策としてのシミュレーション(イメージ)
- 既存の相続税対策との比較|生命保険の非課税枠・生前贈与との違い
- 個人向け国債の基本|変動10年・固定5年・固定3年の特徴
- 注意点|まだ決定していない・「富裕層優遇」批判もある・制度設計次第で条件が変わる
- 今後の動向をどう注視すべきか|年末の税制改正が一つの焦点
- 決まっていない今だからこそ|エンディングノートで金融資産・国債情報を記録する重要性
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
現行制度のおさらい|国債は今のところ相続税の課税対象
まず押さえておきたいのは、2026年8月現在、国債(個人向け国債を含む)には相続税の非課税枠が存在しないという事実です。
亡くなった方が保有していた国債は、利付国債・割引国債・個人向け国債のいずれであっても、有価証券として相続財産に含まれます。国債だからという理由で相続税が軽減される特別な仕組みは、現行制度上ありません。
相続税評価の考え方は次のとおりです。
| 国債の種類 | 評価の考え方(目安) |
|---|---|
| 個人向け国債 | 額面金額+経過利子相当額-中途換金調整額 |
| 利付国債(上場) | 相続開始日の市場価格(時価)をもとに評価 |
| 割引国債 | 発行価額に相続開始日までの償還差益相当額を加算して評価 |
このように、国債は預貯金や上場株式と同じように「相続財産の一部」として扱われ、他の財産と合算したうえで相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える部分に課税されます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。国債を含む相続財産の評価・申告については、税理士などの専門家にご相談ください。
何が検討されているのか|NISA組み入れ+相続税非課税案の中身
報道によると、2026年7月、個人向け国債をNISA(少額投資非課税制度)の対象に加え、NISA口座内で保有する国債については相続税も非課税とする仕組みの検討を政府に求める法律案が、議員立法として参議院に提出されたとされています。
あわせて、自民党内でも国債の相続に関する税負担を軽減する案が議論されているとの報道があります。片山財務大臣は2026年7月14日の閣議後記者会見で、国債の商品性見直し(NISAへの組み入れを含む)について「早急に具体化したい」といった趣旨の発言をしたと伝えられています。
現時点で報じられている検討の方向性を整理すると、次のようになります。
- NISA組み入れ案:個人向け国債をNISAの対象商品に加え、利子・譲渡益を非課税にする
- 相続税非課税案:NISA口座で保有する国債に限り、相続時の評価額を相続税の対象から外す、または優遇する
- 検討主体:与党内の議論に加え、国民民主党が法案を提出したと報じられている
- 決定時期:報道時点(2026年8月上旬)では未定。年末の税制改正議論が一つの節目になるとみられている
いずれも「検討中」の段階であり、対象となる国債の種類、非課税となる上限額、適用開始時期などの制度設計は、今後の議論次第で変わる可能性があります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。今後の制度改正の詳細については、財務省・国税庁の公表情報や税理士等の専門家の見解を必ずご確認ください。
なぜ今検討されているのか|日銀の国債買入れ縮小と個人保有層拡大の狙い
なぜこのタイミングで、国債の相続税をめぐる議論が浮上しているのでしょうか。報道からは、主に次のような背景が読み取れます。
日本銀行の国債買入れ縮小
日本銀行が金融政策の正常化を進める中で、国債の買い入れ額を段階的に縮小しているとされています。これまで日銀が担ってきた「国債の主要な買い手」としての役割が縮小すれば、その分を誰かが引き受ける必要が出てきます。
個人を新たな受け皿に
そこで焦点が当たっているのが「個人」です。個人の金融資産は預貯金に偏っているとされており、その一部を国債購入に振り向けてもらうことで、国債の安定的な消化を図りたいという狙いがあると報じられています。
資産形成の後押しという目的も
あわせて、NISAの拡充などを通じて個人の資産形成を後押しするという政策目的も語られています。国債は株式などに比べて値動きが小さく、相対的にリスクを抑えた資産とされることから、高齢層を含む幅広い個人の受け皿になり得ると期待されているようです。
一方で、この動きに対しては慎重な見方も報じられています。国債の相続税を軽減することが「富裕層優遇」につながるのではないか、他の金融商品(預貯金や投資信託など)との中立性が保てるのか、世代間の公平性を損なわないか、といった論点です。日本経済新聞は、国債の相続税軽減案についてこうした批判があると報じています。
もし非課税になったら|相続税対策としてのシミュレーション(イメージ)
仮に、報道されているような「NISA口座内の国債は相続税非課税」という制度が実現した場合、どの程度の効果が見込めるのでしょうか。ここではあくまで試算のイメージとして、簡易的なシミュレーションを示します。
前提(仮の試算例)
– 相続財産のうち2,000万円分を、NISA口座で個人向け国債として保有していたと仮定
– 相続税の限界税率を20%と仮定(財産総額・法定相続人数により実際の税率は変動)
この場合、非課税措置がなければ、2,000万円の国債部分に対しておおよそ400万円程度の相続税負担が生じる計算になります。仮に非課税措置が適用されれば、この部分の税負担がゼロになる可能性がある、という試算です。
ただし、この数字はあくまで単純化したイメージにすぎません。実際の相続税額は、他の相続財産(不動産・預貯金・保険金など)との合算、基礎控除、法定相続人の数、各種特例の適用状況によって大きく変わります。また、非課税となる金額に上限が設けられる可能性や、NISA口座での保有期間・保有額に条件が付く可能性も報じられており、制度設計が固まらない限り正確な効果は算出できません。
現時点で言えること
– 非課税措置が実現すれば、相続税対策の選択肢の一つとして国債が注目される可能性がある
– ただし対象範囲・上限額・適用条件は未定であり、過度な期待は禁物
– 具体的な節税効果は、実際の制度内容が固まった段階で税理士に試算を依頼するのが確実
※本記事の数値はあくまで理解のための簡易試算であり、実際の税額を保証するものではありません。個別の税額計算は税理士にご確認ください。
既存の相続税対策との比較|生命保険の非課税枠・生前贈与との違い
「国債の相続税が非課税になるかもしれない」というニュースを理解するうえで、既存の相続税対策と比較しておくと全体像がつかみやすくなります。
| 対策 | 現行制度での扱い | 特徴 |
|---|---|---|
| 生命保険金 | 「500万円×法定相続人の数」が非課税 | 現行制度で確立された非課税枠。受取人を指定でき、遺産分割協議を経ずに資金を渡せる |
| 生前贈与 | 年110万円の基礎控除(暦年課税)、相続開始前7年以内の贈与は原則持ち戻し(2024年改正) | 早めに始めるほど効果的。持ち戻し期間の把握が重要 |
| 個人向け国債(現行) | 非課税枠なし。相続財産として全額課税対象 | 現時点では税制上のメリットはなく、あくまで「安全性の高い金融商品」という位置づけ |
| 個人向け国債(検討中の案) | NISA口座内保有分に限り非課税とする案が検討中(未決定) | 実現すれば新たな相続税対策の選択肢になり得るが、条件次第 |
生前贈与の持ち戻しルールについては、2024年の改正で相続開始前7年以内の贈与が原則として相続財産に加算されることになっています。詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご確認ください。
▶ 生前贈与の7年ルールとは|2024年改正で変わった相続税の持ち戻し期間と対策
また、生命保険の非課税枠は「終活で見直すべき保険活用法」として、こちらの記事でも詳しく取り上げています。
▶ 終活で保険を見直す重要性|「保険料がもったいない」は誤解?種類別の活用法と相続税非課税枠を徹底解説
こうして並べてみると、生命保険の非課税枠や生前贈与はすでに確立された制度であるのに対し、国債の非課税案は「検討段階」にとどまっている点が大きな違いです。既存の制度を活用しつつ、国債の動向は追加情報として注視するというスタンスが現実的といえるでしょう。
個人向け国債の基本|変動10年・固定5年・固定3年の特徴
そもそも「個人向け国債」とはどのような商品なのか、基本を確認しておきます。個人向け国債は、国(財務省)が個人投資家向けに発行する国債で、3つのタイプがあります。
変動10年
– 満期10年、金利は半年ごとに見直される変動金利
– 市場金利が上昇すれば受取利子も増える可能性がある一方、下落局面では利子が減る
– 最低金利保証(年0.05%)が設けられている
固定5年
– 満期5年、発行時に決まった金利が満期まで適用される固定金利
– 将来の受取額を見通しやすい
固定3年
– 満期3年、固定金利
– 3タイプの中では最も償還までの期間が短い
共通の特徴
– 購入単位は1万円から
– 発行から1年経過すれば、原則いつでも中途換金が可能(直前2回分の利子相当額が差し引かれる)
– 国が発行する債券であるため、信用力が高いとされる
– 元本割れのリスクは、市場で売買される利付国債などと比べて限定的とされている
いずれのタイプも、現行制度では相続税の課税対象である点は変わりません。今回報道されている非課税案が、3タイプすべてを対象とするのか、あるいはNISA口座での保有分に限定されるのかといった具体的な範囲は、2026年8月時点では明らかになっていません。
注意点|まだ決定していない・「富裕層優遇」批判もある・制度設計次第で条件が変わる
ここまで見てきた検討内容について、あらためて注意点を整理します。
① まだ何も決定していない
NISA組み入れ案・相続税非課税案は、いずれも国会・与党内での議論や法案提出の段階と報じられており、2026年8月時点で正式な制度として決定した事実はありません。施行時期・対象範囲・非課税上限額なども未定です。
② 批判・慎重論も報じられている
日本経済新聞は、国債の相続税軽減案について「富裕層優遇」につながるのではないかという批判があると報じています。国債を大量に保有できるのは、そもそも一定以上の金融資産を持つ層に偏りやすいという指摘です。また、預貯金や投資信託など他の金融商品との公平性・中立性をどう保つかという論点も指摘されています。
③ 制度設計次第で条件が大きく変わる可能性
仮に非課税化が実現するとしても、対象となる国債の種類、NISA口座での保有要件、非課税となる上限額、適用開始時期などの詳細は、今後の税制改正プロセスの中で決まっていきます。現時点で「こうなる」と断定できる情報はありません。
④ 個別の判断は専門家に相談を
相続税は財産の種類・評価額・法定相続人の数・各種特例の適用可否によって税額が大きく変わる分野です。国債の非課税案の動向にかかわらず、ご自身やご家族の相続税対策については、税理士やファイナンシャルプランナー(FP)など専門家への相談を強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資に関する助言ではありません。個別の相続税対策の検討にあたっては、必ず税理士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。本記事は2026年8月時点の情報にもとづいており、制度の詳細・施行時期は今後変更される可能性があります。
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今後の動向をどう注視すべきか|年末の税制改正が一つの焦点
報道によると、財務省は個人向け国債の商品性見直しの具体案を2026年中にまとめる方向で検討を進めているとされ、与野党から浮上している相続税軽減案が年末の税制改正議論で論点になる可能性があると伝えられています。
今後、次のようなタイミングで新しい情報が出てくることが見込まれます。
- 与党税制調査会での議論・報道
- 年末(例年12月頃)に決定される税制改正大綱
- 財務省・国税庁からの正式な発表
- NISA制度の見直しに関する金融庁の動き
これらの動きを継続的にチェックし、「検討中の情報」と「決定した制度」を混同しないことが大切です。特にSNSやまとめサイトでは、検討段階の情報があたかも決定事項であるかのように拡散されることもあるため、財務省・国税庁など公的機関の一次情報にあたる習慣をつけておくと安心です。
決まっていない今だからこそ|エンディングノートで金融資産・国債情報を記録する重要性
制度がどう変わるにせよ、相続の準備において変わらず重要なのは「自分がどんな金融資産を、どこに、どれだけ保有しているか」を家族に伝えられる状態にしておくことです。
個人向け国債は、証券会社や銀行の口座内で管理されているため、本人以外にはその存在自体が把握しにくい財産の一つです。実際、相続の現場では「故人が国債を保有していたことに気づかず、相続税の申告漏れにつながった」というケースも起こり得ます。相続税の申告漏れと税務調査の実態については、以下の記事も参考にしてください。
▶ 相続税・贈与税の申告漏れは本当にバレる?国税庁の調査能力とタンス預金・海外口座・名義預金の3大誤解
DENのようなデジタルエンディングノートサービスを活用すれば、保有している個人向け国債の種類(変動10年・固定5年・固定3年)、購入した証券会社・銀行、口座番号、購入時期といった情報を、暗号化された形で安全に記録・整理しておくことができます。制度が非課税になるかどうかにかかわらず、「どこに何があるか分からず、相続人が財産を把握できない」という事態を防ぐこと自体に大きな価値があります。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 個人向け国債の相続税非課税は、もう決まったのですか?
A1. いいえ、2026年8月時点では決定していません。NISA口座内の国債を相続税非課税とする法案が議員立法として提出されたと報じられているほか、与党内でも相続減税に関する議論があるとされていますが、いずれも検討段階です。今後の国会審議や税制改正プロセスを経て決まっていくとみられます。
Q2. 今、国債を保有していると相続税はどうなりますか?
A2. 現行制度では、個人向け国債を含むすべての国債は相続財産として扱われ、相続税の課税対象になります。国債専用の非課税枠は現時点では存在しません。評価方法は国債の種類によって異なるため、詳細は税理士にご確認ください。
Q3. NISA口座の国債だけが対象になるのですか、それとも国債全般が対象になりますか?
A3. 報道されている限りでは、NISA口座内で保有する国債を対象とする案が中心とされていますが、対象範囲の詳細はまだ固まっていません。今後の制度設計次第で変わる可能性があります。
Q4. 非課税になるとしたら、いつから適用されますか?
A4. 2026年8月時点で、具体的な適用開始時期は明らかになっていません。報道では、年末の税制改正議論が一つの節目になる可能性が指摘されていますが、確定した情報ではありません。
Q5. 相続税対策として、今から国債を買っておくべきですか?
A5. 制度が未確定である以上、非課税化を前提に投資判断をすることはおすすめできません。国債は相続税対策以前に「安全性が高いとされる金融商品」としての特性を踏まえたうえで検討すべきものです。相続税対策全体の設計については、税理士やファイナンシャルプランナーに相談しながら判断することをおすすめします。
Q6. 生命保険の非課税枠や生前贈与と、どちらを優先すべきですか?
A6. 生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の数)や生前贈与は、現行制度ですでに確立された対策です。国債の非課税案はあくまで検討中の情報のため、まずは既存の制度を活用しつつ、国債の動向を追加情報として注視するのが現実的です。詳しくは税理士にご相談ください。
まとめ
個人向け国債の相続税非課税化は、2026年7月以降、与野党の議論や報道を通じて浮上してきたテーマです。日銀の国債買入れ縮小を背景に、個人を国債の新たな受け皿にしたいという狙いがあるとされ、NISA組み入れとあわせて検討が進んでいると報じられています。一方で、「富裕層優遇」につながるのではないかという批判も報じられており、対象範囲・非課税上限・適用時期といった制度設計はいずれも未定です。
現行制度では、国債は依然として相続税の課税対象であり、生命保険の非課税枠や生前贈与のような確立された非課税措置はありません。制度がどう決まるかを注視しつつ、今できることとして、既存の相続税対策を進め、保有する金融資産(国債を含む)の情報を家族に伝わる形で整理しておくことが大切です。
相続税対策の具体的な判断は、必ず税理士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談のうえ進めてください。
※本記事は2026年8月時点の情報です。制度の詳細・施行時期は今後変更される可能性があります。
参考資料・出典
– 片山財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要(令和8年7月14日)|財務省
– 個人の国債保有増へ、自民に相続減税論 国民民主「NISA対象に」|日本経済新聞
– 国債の相続税軽減案に批判 NISA組み入れ、富裕層の節税色強く|日本経済新聞
– 国債買い手、「個人」に照準 減税・NISA対象案も浮上|時事ドットコム
更新日: 2026年8月19日(最終確認日: 2026年8月19日)
専門家監修について: 本記事は一般的な情報提供を目的として編集部が作成したものであり、個別の税務判断を保証するものではありません。実際の相続税対策・申告にあたっては、税理士・ファイナンシャルプランナーなどの専門家に必ずご相談ください。


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