相続税・贈与税の申告漏れは本当にバレる?国税庁の調査能力とタンス預金・海外口座・名義預金の3大誤解

書斎で落ち着いて資産の記録を整理する様子、誠実な資産管理と生前対策をイメージした写真 相続税対策

「うちは申告額を少し控えめにしても、税務署にはバレないだろう」——相続税や贈与税の申告を前に、そう考えたことはありませんか。

タンス預金にすればわからない、海外口座なら国内の税務署は把握できない、子や孫の名義にしておけば相続財産に含まれない——こうした話を耳にしたことがある方も多いはずです。

しかし結論から言うと、これらはいずれも誤解です。国税庁は金融機関照会・不動産登記情報・生命保険契約照会・海外口座情報の自動交換(CRS)など、非常に幅広い情報収集の仕組みを持っており、相続税の実地調査が行われた場合、申告漏れ等が発覚する割合は8割を超えます。

本記事では、なぜ申告漏れが「まずバレる」と言えるのか、国税庁の具体的な調査手法とともに解説し、タンス預金・海外口座・名義預金という3つの誤解を一つずつ整理します。そのうえで、脱税を目指すのではなく、正しく申告し、正規の方法で節税するための生前対策についてもご紹介します。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。個別の税務判断については、必ず税理士など専門家にご相談ください。記事内の統計・制度は作成時点の情報であり、今後の法改正等により変更される場合があります。

相続税調査の実態を数字で見る

まずは国税庁が公表している統計から、相続税調査の実態を確認しましょう。

項目 数値(令和5〜6事務年度)
相続税の実地調査件数 8,556件(令和5事務年度)
実地調査での申告漏れ等の発覚割合 84.2%
実地調査+簡易な接触の合計割合 申告に係る被相続人数の約18.9%(約5人に1人)
無申告事案の追徴税額 123億円(令和6事務年度・公表開始以降で最高)

つまり、相続税を申告した人のうち約5人に1人は、実地調査か電話・文書による「簡易な接触」という形で、何らかの形で税務署から確認を受けています。そして実際に実地調査が入った場合には、8割以上のケースで申告漏れ等の指摘を受けているのが実態です。

「調査に来る確率はそこまで高くない」と油断していると、いざ調査が入ったときに高い確率で何らかの指摘を受けることになる——この数字が示しているのは、そうした現実です。

なぜバレるのか|国税庁の情報収集力

相続税の申告漏れが高い確率で発覚する背景には、国税庁が持つ強力な情報収集の仕組みがあります。

  • 金融機関への照会:税務署は法律に基づき、被相続人・相続人名義の預貯金口座の取引履歴を金融機関に照会できます。過去の入出金パターンから、贈与や資産移動の痕跡を把握します
  • 不動産登記情報の確認:法務局の登記情報と連携し、被相続人が保有していた不動産を把握します。名義変更の履歴からも資産移動の実態を確認します
  • 生命保険契約照会制度:生命保険協会を通じて、被相続人が契約者・被保険者となっていた保険契約の有無を一括で照会できる仕組みが整備されています
  • KSK(国税総合管理)システム:確定申告や過去の所得情報を長期間にわたり一元管理しており、被相続人の生前の収入と申告された相続財産に大きな乖離がある場合、調査対象として選定されやすくなります

こうした情報を組み合わせることで、税務署は申告書の提出前から、ある程度「この家庭にはどの程度の資産があるはずか」という見立てを持って調査に臨んでいます。

CRS(共通報告基準)で海外口座も把握される時代に

「海外に口座を作っておけば、日本の税務署にはわからない」という考え方も、現在ではほぼ通用しません。

CRS(共通報告基準)とは、OECDが策定した国際的な枠組みで、各国の税務当局が非居住者の金融口座情報を自動的に交換し合う制度です。日本もこの枠組みに参加しており、国税庁は海外の金融機関にある日本居住者の口座情報を、毎年自動的に入手しています。

相続によって海外口座の名義が変更された場合も、名義変更後の口座情報は継続してCRSを通じて日本の国税庁に報告され続けます。つまり「海外に移したから終わり」ではなく、相続後も情報は追跡され続ける仕組みになっているのです。

国税庁はこうしたCRS情報を、租税条約に基づく他の情報交換制度と合わせて、相続税調査における海外資産の把握に活用しています(参考:国税庁「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報」)。海外口座や海外不動産を保有している場合は、国内資産以上に慎重な申告が求められると考えたほうがよいでしょう。

3大誤解を正面から崩す

ここまでの内容を踏まえ、よくある3つの誤解を整理しておきましょう。

誤解1:「タンス預金にすればバレない」

現金として自宅に保管しておけば、口座の取引履歴には残りません。しかし、被相続人の生前の収入・資産状況と、相続財産として申告された金額との間に大きな差があれば、税務署はその差分を疑います。過去の所得申告や不動産売却の履歴などから「本来もっと財産があるはず」という見立てが立つと、実地調査の対象として選ばれやすくなります。現金として保管していること自体が、発覚を防ぐ理由にはなりません。

誤解2:「海外口座ならバレない」

前述のCRSにより、多くの国・地域の金融機関にある日本居住者の口座情報は、国税庁に自動的に報告されています。租税条約に基づく個別の情報交換制度と合わせ、海外資産の把握は年々強化されている分野です。

誤解3:「子供・孫名義にしておけば相続財産に含まれない」

これがいわゆる「名義預金」の問題です。判例上、預金が誰に帰属するかは、口座の名義だけで判断されるわけではありません。その資金を実際に出した人(出捐者)は誰か、口座の管理・運用を誰が行っていたか、利益(利息など)が実際に誰のものになっていたか、名義人がその名義を持つに至った経緯はどうだったか——こうした事情を総合的に考慮して判断されます。

子や孫の名義であっても、通帳・印鑑を親が管理し、実質的に自由に出し入れできる状態にあった場合は、名義預金として相続財産に算入される可能性が高くなります。税務調査で特に狙われやすいポイントの一つです。

発覚した場合のペナルティ

もし申告漏れが税務調査で発覚した場合、本来納めるべき税額に加えて、次のような加算税・延滞税が課される可能性があります。

  • 過少申告加算税:追加で納める税額の10〜15%程度(申告した税額と当初の税額のいずれか多い額を超える部分は税率が上がる場合があります)
  • 重加算税:財産の隠蔽・仮装があったと認定された場合に課される、より重いペナルティで、35〜40%程度に達することがあります
  • 延滞税:法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じて課される利息に相当する税金

正規の相続税に加えてこれらが上乗せされるため、結果的な負担は「最初から正しく申告していた場合」よりもはるかに大きくなります。意図的な隠蔽と判断されれば重加算税の対象となり、悪質なケースでは刑事罰の対象となることもある点も押さえておく必要があるでしょう。

贈与税の調査も強化されている

相続税だけでなく、贈与税の実地調査も継続的に行われています。令和5事務年度の贈与税実地調査件数は2,847件、追徴税額は約108億円にのぼります。

贈与税の調査で特に注目されやすいのが、次のようなケースです。

  • 年間110万円を超える現金贈与:暦年贈与の非課税枠(年110万円)を超える贈与を申告せずに続けていたケース
  • 名義預金からの発覚:相続税調査の過程で、生前の贈与が名義預金として扱われ、贈与税・相続税の両面で問題になるケース
  • 所得税調査からの派生:被相続人や相続人の所得税調査の過程で、口座の不自然な入出金から贈与の事実が発覚するケース

「贈与税は申告しなくてもわからないだろう」という考え方も、相続税と同様にリスクが高いといえます。

正しい生前対策で「節税」する

ここまで見てきたように、申告漏れを隠し通そうとする方向性にはリスクしかありません。一方で、正規の制度を活用した生前対策には、合法的に税負担を抑える手段が数多く用意されています。

  • 暦年贈与:年間110万円までの基礎控除枠を活用し、計画的に財産を移転する方法。2024年の改正で相続開始前7年以内の贈与が相続財産に加算される「持ち戻し」の対象になった点には注意が必要です
  • 相続時精算課税制度:一定の要件のもとで選択でき、年間110万円の基礎控除の範囲内であれば贈与税・相続税いずれの対象にもならない贈与が可能になる制度
  • 小規模宅地等の特例:一定の要件を満たす自宅や事業用の土地について、相続税評価額を大幅に減額できる特例
  • 生命保険の非課税枠の活用:「500万円×法定相続人の数」までの死亡保険金が非課税となる仕組みを活用する方法

これらはいずれも、正しく申告することを前提に税負担を軽減できる制度です。「隠す」のではなく「正しく使う」ことが、結果的に最も確実な節税につながります。制度の適用可否や具体的な設計は、家庭ごとの資産状況によって大きく異なるため、税理士への相談が欠かせません。

資産を正確に把握し、記録し、専門家に相談する

税務調査で申告漏れが指摘される背景には、「そもそも相続人自身が、被相続人の資産の全体像を正確に把握できていない」という事情も少なくありません。生前に本人がどこにどれだけの資産を持っていたかが整理されていなければ、相続人は正しい申告書を作ることすら難しくなります。

大切なのは、次の3つのステップを踏むことです。

  1. 資産を正確に把握する:預貯金・不動産・有価証券・保険・海外資産まで含め、財産の全体像を洗い出す
  2. エンディングノートに記録する:把握した資産の内容を、家族が確認できる形で記録として残しておく
  3. 税理士に相談する:記録をもとに、専門家と一緒に申告方針や生前対策を検討する

DENは、こうした資産情報を暗号化した状態でデジタル管理し、必要なタイミングで家族へ安全に伝えられるデジタルエンディングノートサービスです。預貯金・不動産・保険・デジタル資産まで含めた財産情報をあらかじめ整理しておくことで、相続発生時の申告作業がスムーズになるだけでなく、税理士への相談もスピーディーに進められるようになります。

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※繰り返しになりますが、本記事の内容は一般的な情報提供であり、個別の税務判断を保証するものではありません。相続税・贈与税の申告や税務調査への対応は、必ず税理士にご相談のうえ進めてください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 相続税の税務調査は、相続税がかからない程度の遺産でも来ることはありますか?

基礎控除以下で相続税が課税されない場合は、原則として税務調査の対象にはなりません。ただし、申告義務があるにもかかわらず無申告のままにしていると、被相続人の生前の所得情報などから資産規模が疑われ、確認の連絡が入ることがあります。

Q2. 税理士に依頼すれば、税務調査の対象になる確率は下がりますか?

税理士が申告書を作成した場合、書面添付制度などを活用することで、いきなり実地調査となる前に「意見聴取」という形で疑問点を確認してもらえる場合があります。申告内容の精度が上がることで、結果的に調査対象として選ばれにくくなる効果は期待できますが、確実に調査を避けられるものではありません。

Q3. 名義預金だと指摘された場合、必ず相続税がかかりますか?

名義預金と判断されれば、その預金は被相続人の相続財産として扱われ、相続税の課税対象に加算されます。ただし、贈与契約書の作成・贈与税の申告履歴など、贈与の事実を客観的に示せる資料がある場合は、名義預金ではなく贈与として認められる可能性もあります。

Q4. 税務調査はいつ頃、どのくらいの期間行われますか?

一般的には、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)から1〜2年程度が経過した時期に実施されることが多いとされています。調査自体は1〜2日程度で終わることが多いですが、その後の是正対応や追加資料の提出まで含めると、さらに時間がかかる場合があります。

Q5. 海外に住んでいた相続人が海外資産を相続した場合も申告は必要ですか?

被相続人・相続人の住所や国籍などの条件によって課税対象となる財産の範囲は異なります。海外資産が関わる相続税申告は判断が複雑になりやすいため、早い段階で税理士に確認することをおすすめします。

Q6. 過去の贈与について記録が残っていない場合、どうすればよいですか?

通帳の取引履歴や不動産の名義変更履歴など、確認できる資料をできる限り集めたうえで、税理士に相談しながら申告方針を検討することになります。今後については、贈与の都度、契約書や記録を残しておくことが将来のトラブル防止につながります。

まとめ|「隠す」より「正しく対策する」ほうが結果的に得をする

国税庁は、金融機関照会・不動産登記・生命保険契約照会・CRSによる海外口座情報など、幅広い手段で資産情報を把握しています。相続税の実地調査が行われた場合、申告漏れ等が発覚する割合は8割を超えており、「タンス預金」「海外口座」「名義預金」といった方法で申告額を抑えようとする考え方は、いずれもリスクの高い選択です。

一方で、暦年贈与・相続時精算課税制度・小規模宅地等の特例・生命保険の非課税枠など、正規の制度を活用した生前対策には、合法的に税負担を軽減できる余地が数多く残されています。大切なのは、資産を正確に把握し、記録として残し、早い段階で税理士に相談することです。

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参考:国税庁「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」、国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」、国税庁「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報」

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監修:本記事は相続・税務分野の専門家監修のもと、国税庁の公表統計・公的情報を参照して作成しています。統計数値は作成時点の最新公表データに基づくものであり、今後の制度改正により変更される場合があります。

最終更新日:2026年7月15日

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