相続土地国庫帰属制度は「使えない」って本当?承認率約50%の現実と、国が最大93%引きで売る二重基準の矛盾

相続税対策

公開日:2026年7月14日 / 最終確認日:2026年7月14日
フォーカスKW:相続土地国庫帰属制度 問題点 使えない
カテゴリ:相続税対策

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。


「田舎の実家を相続したけれど、誰も住まないし売れそうにもない」「更地にすればいいと言われたが、解体費用まで出す気にはなれない」——そう感じている方は少なくありません。

2023年4月にスタートした「相続土地国庫帰属制度」は、まさにこうした「いらない土地」を国に引き取ってもらうための制度として注目を集めました。ところが制度開始から3年が経過した今、SNSやニュースでは「使えない制度だった」という声が目立つようになっています。

その象徴が、2026年6月に財務省が示した新方針です。国が引き取った土地を売るとき、評価額を最大93%引きまで下げられるようにするというのです。相続税では土地を高く評価して課税しておきながら、国が売る段階では9割引き——この二重基準は、本当に妥当なのでしょうか。

本記事でわかること:

  • 相続土地国庫帰属制度の仕組みと、承認率が約50%にとどまる理由
  • 引き渡せない土地の具体的な要件(チェックリスト)
  • 却下されても戻らない審査手数料と、数十万〜数百万円かかる費用の実態
  • 「相続税は高く評価、国が売る時は93%引き」という矛盾の正体
  • 制度を利用すべき人・しない方がいい人の判断基準と、有力な代替手段

相続土地国庫帰属制度とは——「いらない土地」を国に引き渡せる仕組み

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって取得した土地のうち、管理や処分に困っている土地を国に引き渡せる制度です。所有者不明土地の発生を予防する目的で、2023年4月27日に施行されました。

制度を利用できるのは、相続や遺贈によって土地を取得した相続人本人に限られます。生前に自分で購入した土地や、贈与で受け取った土地は対象外です。また、相続登記が完了していることが前提となり、共有地の場合は共有者全員での申請が必要です。

手続きの流れは次の通りです。

  1. 法務局への事前相談
  2. 申請書の提出・審査手数料の納付
  3. 法務局による書面審査・実地調査
  4. 承認後、負担金の納付(30日以内)
  5. 国庫への帰属完了

一見シンプルに見えるこの制度ですが、実際に使ってみると「思ったより高いハードル」に直面する人が少なくありません。次の章で、その実態を数字で見ていきましょう。


承認率は約50%——半数が却下・不承認になる現実

制度開始から約3年が経過した2026年時点で、申請件数は5,000件を超える規模まで増加しました。しかし、実際に国庫への帰属が認められた件数は申請件数のおよそ半数にとどまっています。承認率は地目によって大きく異なり、宅地では5割程度である一方、山林は2割程度と低く、現地調査の難しさが承認のハードルを上げていることがうかがえます。また、審査の途中で申請そのものを取り下げるケースも一定数存在し、費用や手続きの負担の重さを物語っています。

申請段階で却下される土地(そもそも受け付けられない)

以下に該当する土地は、申請の時点で却下されます。

  • 建物が建っている土地
  • 抵当権や賃借権などの権利が設定されている土地
  • 通路など他人による使用が予定されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない、または所有権について争いがある土地

審査段階で不承認になる土地(申請は受理されても引き渡せない)

申請自体は受け付けられても、法務局の実地調査によって以下が判明すると不承認となります。

  • 一定の勾配・高さを超える崖がある土地(目安として傾斜30度以上・高さ5メートル以上)
  • 地下に除去が必要な工作物・埋設物がある土地
  • 隣接地の所有者との争いが解決していない土地
  • 水路の維持管理費用(賦課金)など、継続的な負担が発生する土地

「とりあえず申請してみよう」という軽い気持ちで臨むと、上記のいずれかに該当して却下・不承認となるリスクは決して低くありません。そして、この却下・不承認こそが、次に説明する「費用の壁」を一層重くしています。


費用の壁——却下されても審査手数料は戻らない

相続土地国庫帰属制度を利用する際にかかる費用は、決して小さくありません。

費用項目 金額目安 備考
審査手数料 14,000円(土地1筆あたり) 却下・不承認でも返還されない
負担金 原則20万円〜 面積に応じて算定される場合は100万円を超えることも
測量・境界確定費用 数万〜数十万円 境界不明の土地では必須
建物解体費用 数十万〜数百万円 建物付きの土地は解体しないと申請不可
司法書士等への依頼費用 10万〜30万円程度 書類作成・現地立会いを依頼する場合

ここで見落とされがちなのが、審査手数料は却下・不承認になっても一切返還されないという点です。実際に、負担金や審査手数料に加えて測量費用まで自己負担になると知り、申請を途中で断念する相談者も多いと専門家からは指摘されています。

つまり、「解体・測量に数十万円かけて申請したのに、境界確定の段階で不承認になり、手数料も戻ってこない」というケースが現実に起こり得るのです。手放したいだけの土地に対して、まとまった持ち出しが発生する——この構造こそが、「使えない制度」という評判につながっている大きな要因です。


最大の矛盾——相続税では高く評価、国が売る時は93%引き

ここが本記事の核心です。

相続税の申告では、土地は路線価や固定資産税評価額をもとに、市場での実勢価格に近い水準で評価されます。評価額が高くなれば、それだけ相続税の負担も重くなります。「使い道のない土地なのに、相続税だけはしっかり課税される」——これが多くの人の実感でしょう。

ところが2026年6月17日、財政制度等審議会の国有財産分科会で、財務省は次のような新方針を示しました。相続土地国庫帰属制度を通じて国が引き取った土地のうち、一般競争入札にかけても買い手がつかない土地について、評価額を段階的に引き下げて売却するというものです。

具体的な仕組みは次の通りです。

  1. 測量や地下埋設物の調査を行わない「現状有姿売買」を前提に、当初評価額から30%減額して売り出す
  2. それでも3ヶ月間買い手がつかなければ、さらに10%ずつ減額を重ねる
  3. 最終的には当初評価額の7%、つまり最大93%引きまで下げられるようにする
  4. 相手を特定して直接売却する「随意契約」も新たに導入する

背景にあるのは、国が引き取った土地の一般競争入札での売却実績が事実上ゼロだったという現実です。買い手がつかないまま国が土地を抱え続け、管理コストだけが積み上がっている状況を打開するための苦肉の策といえます。

「相続時には高く評価して課税しておきながら、国が売る段になったら9割引き」——この対比は、感情的には強い違和感を覚えて当然です。実際、この報道を受けてSNSやニュースサイトでは「国営の地上げ屋のようだ」「二重基準ではないか」といった批判の声が広がりました。

一方で、公平を期すために付け加えておくべき点もあります。相続税評価額(路線価・固定資産税評価額)は、あくまで「相続税を公平に課税するための評価」であり、実際に土地を売却できる価格(実勢価格)とは目的も算定方法も異なります。地価公示価格・路線価・固定資産税評価額・実勢価格という4つの価格が並存する日本の土地評価制度において、こうした乖離自体は珍しいことではありません。とはいえ、「相続人にとっては高く評価されて負担が重く、国にとっては安売りせざるを得ない土地」という構図そのものが、制度の設計と現実の間に大きなギャップがあることを示しているのは間違いありません。


なぜ売却実績はほぼゼロなのか——制度開始3年の現実

相続土地国庫帰属制度がスタートしてから3年あまりが経過しましたが、国が引き取った土地の一般競争入札による売却実績は、これまでほぼゼロという状態が続いていました。

そもそも国庫に帰属する土地は、相続人自身が「管理も処分もできない」と判断した土地です。市場性が低く、買い手がつきにくいのは当然の帰結ともいえます。それにもかかわらず国は、引き取った土地の管理義務を負い続けることになります。

  • 崖地であれば崩落対策
  • 山林であれば倒木・獣害対策
  • 空き地であれば草刈りや不法投棄の防止

こうした管理には継続的な費用と人員が必要です。売却できないまま土地を抱え込む期間が長引くほど、国の管理コストは膨らんでいきます。今回の「最大93%引き」という新方針は、この悪循環を断ち切るための現実的な選択だったとも言えるでしょう。

裏を返せば、これは「国庫帰属制度を使えば土地問題が解決する」という単純な話ではなく、引き取った後も土地そのものの価値が変わるわけではないという当たり前の事実を突きつけています。制度を利用するかどうかを判断する際は、この現実を踏まえておく必要があります。


制度を利用すべき人・しない方がいい人の判断基準

ここまでの内容を踏まえ、相続土地国庫帰属制度が向いているケースと、そうでないケースを整理します。

利用を検討する価値がある人

  • 建物がなく、境界も確定している更地を相続した
  • 抵当権など権利関係がクリアで、隣地との争いがない
  • 急傾斜地や土壌汚染などの明らかな欠格事由がない
  • 数十万円の初期費用(測量・負担金)を負担しても、将来の管理リスクを断ち切りたい

利用を再考した方がいい人

  • 相続した土地に建物が残っており、解体費用だけで数百万円かかる
  • 境界が未確定で、隣地所有者との調整に時間と費用がかかりそう
  • 山林・崖地など、審査段階での不承認リスクが高い土地を所有している
  • 「とりあえず申請してみて、ダメなら他を考えよう」という判断をしている(却下時の手数料は戻りません)

該当しそうな要件が一つでもある場合は、申請前に法務局の事前相談や専門家への相談を挟み、承認の見込みをある程度見極めてから動くことをおすすめします。


国庫帰属が難しい場合の代替手段

相続土地国庫帰属制度が使えない、あるいは費用面で見合わないと判断した場合でも、選択肢はほかにもあります。

①相続放棄

相続そのものを放棄すれば、その土地を含む一切の財産を相続しません。ただし、相続放棄は預貯金や他の不動産などプラスの財産も含めて「すべて」放棄する手続きであり、不要な土地だけを選んで放棄することはできません。

②自治体への寄付

自治体によっては、公共的な利用価値がある土地に限り寄付を受け付けている場合があります。ただし、多くの自治体は財政負担を理由に寄付を断るケースが大半で、確実な選択肢とはいえません。

③不動産業者への売却

市場性がまったくない土地でも、隣地所有者や近隣の不動産業者であれば買い取りに応じる場合があります。国庫帰属よりも手続きが早く、負担金も発生しない点がメリットです。

④空き家バンク・不動産マッチングサービスの活用

自治体が運営する空き家バンクや、民間の不動産マッチングサービスに登録することで、思わぬ需要とつながるケースもあります。市場性が低い土地であっても、取得を希望する人のニーズはさまざまであるため、複数の処分ルートを同時に試しておくことが重要だという指摘もあります。

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土地情報の生前整理が結局いちばんの対策になる——DENでできること

ここまで見てきたように、相続土地国庫帰属制度は「使えば必ず解決する魔法の制度」ではありません。境界確定や建物解体など、生前にできる準備を済ませておくかどうかで、相続人が直面するハードルの高さは大きく変わります。

  • 土地の境界が確定しているか
  • 権利関係(抵当権・賃借権など)が整理されているか
  • 測量図・登記情報・固定資産税納税通知書などがどこにあるか
  • 建物が残っている場合、解体・活用の方針を家族と共有できているか

これらの情報が家族に伝わっていなければ、相続人は何も分からないまま国庫帰属の申請を検討することになり、想定外の却下・不承認に直面するリスクが高まります。

DENは、こうした不動産・相続に関する重要な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。

  • 土地の登記情報・測量図・境界確認資料の保管場所を一元管理
  • 権利関係や過去のトラブルの経緯も記録として残せる
  • 三分割暗号化方式でプライバシーを守りながら、必要なときに家族へ伝達

「その土地をどうしたいか」を生前に整理し、記録として残しておくことが、相続後の余計な出費とトラブルを防ぐ最も現実的な対策になります。

DENは、相続・遺言・終活に関する大切な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。現在、サービス開始に向けてモニターを募集しています。
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よくある質問(FAQ)

Q1. 相続土地国庫帰属制度は「使えない制度」なのですか?

一概には言えません。境界が確定していて権利関係もクリアな更地であれば、実際に承認されているケースも一定数あります。一方で、建物付きの土地や境界未確定の土地では、費用倒れになるリスクが高いのも事実です。土地の状態次第で「使える・使えない」が大きく分かれる制度といえます。

Q2. 審査手数料はどのタイミングで、いくら必要ですか?

申請時に土地1筆あたり14,000円を納付します。審査の結果、却下・不承認となった場合でも、この手数料は返還されません。

Q3. 負担金は必ず20万円ですか?

原則として20万円が目安ですが、土地の種類や面積によって金額は変動します。特に面積に応じて算定される場合は、100万円を超えることもあります。

Q4. なぜ国が引き取った土地は9割引きで売られるのですか?

一般競争入札にかけても買い手がつかない土地が多く、国が管理コストを抱え続ける状態が続いていたためです。財務省は2026年6月、評価額を段階的に最大93%まで引き下げて売却する新方針を示しました。相続税評価額はあくまで課税の公平性を目的としたものであり、実際に売却できる価格(実勢価格)とは性質が異なる点も理解しておく必要があります。

Q5. 山林や崖地は国庫帰属を諦めるしかないのでしょうか?

諦める前に、法務局への事前相談を活用することをおすすめします。山林は現地調査の負担から承認率が低い傾向にありますが、傾斜や埋設物の有無など個別の状況次第で結果は変わります。あわせて、自治体への寄付や不動産業者への売却など、複数の処分ルートを同時に検討することが重要です。

Q6. DENのエンディングノートには、土地の登記情報や測量図も記録できますか?

はい、記録できます。登記情報や測量図の保管場所、権利関係の経緯、境界に関するやり取りなどを暗号化した形で残せるため、相続発生後に家族が土地の状況を把握しやすくなります。


まとめ:制度の限界を理解した上で、生前の準備を進める

相続土地国庫帰属制度の実態を整理します。

  • 承認率は約50%——半数の申請が却下・不承認となっている
  • 却下されても審査手数料(14,000円)は返還されない
  • 負担金(原則20万円〜)に加え、測量・解体費用が数十万〜数百万円かかることもある
  • 国が引き取った土地の一般競争入札での売却実績は事実上ゼロ
  • 2026年6月、財務省は評価額を最大93%引きまで下げて売却する新方針を提示
  • 「相続税は高く評価、国が売る時は9割引き」という構図には、評価目的の違いという背景もある

今日できる1アクション:

  1. 相続予定の土地について、境界確定・権利関係の状況を確認する
  2. 建物がある場合は、解体・活用・国庫帰属のどの選択肢が現実的か家族で話し合う
  3. 登記情報や測量図の保管場所を、DENなどで生前に整理し家族へ伝わる状態にしておく

制度の是非を議論する前に、まずは「自分の土地がどの状態にあるか」を正確に把握すること。それが、無駄な費用と手間を避ける最短の道です。


※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。


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