家族信託の失敗事例7選|設計ミス・運用ミスで逆効果になる注意点と防ぐ方法

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家族信託の失敗事例7選|設計ミス・運用ミスで逆効果になる注意点と防ぐ方法

公開日:2026年8月10日 最終確認日:2026年8月10日

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。

※本記事で紹介する失敗事例は、複数の公開事例・相談事例をもとに再構成した創作エピソードです。実在の個人・団体とは関係ありません。


「認知症になっても財産が凍結されない」「柔軟な財産管理ができる」——こうした触れ込みで注目を集める家族信託ですが、実際には設計や運用を誤ると、かえって家族を苦しめる結果になるケースが少なくありません。

家族信託は、成年後見制度のように家庭裁判所が関与する仕組みではなく、家族間の契約によって自由に設計できます。この自由度の高さこそが最大のメリットであると同時に、専門知識のないまま進めると重大なミスにつながる最大のリスクでもあります。

この記事を読むと、次のことがわかります。

  • 家族信託が「設計次第」で逆効果になる理由
  • 不動産・融資・税務・認知症・受託者・銀行口座・遺言書・費用という7つの失敗類型
  • 各事例の原因・結果・防ぐ方法
  • 家族信託が向いている人・向いていない人の見極め方
  • 失敗を避けるための5つの実践ポイント

なぜ家族信託は「設計次第」で逆効果になるのか

家族信託は、成年後見制度と違い、家庭裁判所の監督を受けません。契約書の内容は当事者間で自由に設計できる一方、その自由度の高さが、専門家の関与が不十分なまま進めた場合の設計ミス・運用ミスの温床になっています。

「家族信託さえすれば、認知症になっても財産が凍結されず安心」という説明は半分正しく、半分誤解です。契約の設計を誤れば、融資が受けられなくなったり、想定外の税金が発生したり、家族間の新たなトラブルの火種になったりすることがあります。

以降では、実務で報告されている失敗パターンを7つの類型に整理し、それぞれの原因・結果・防ぐ方法を見ていきます。


失敗事例①:不動産を信託財産にしたら、金融機関の融資が受けられなくなった

※以下は複数の相談事例をもとに再構成した創作エピソードです。

70代の父親が所有する賃貸アパートを、認知症対策として家族信託の信託財産に組み入れました。しかし数年後、老朽化した設備の更新のためにリフォームローンを申し込んだところ、金融機関から「信託財産に対する融資は取り扱いが難しい」と断られてしまいました。

原因

家族信託を扱える金融機関は、まだ限定的です。信託財産となった不動産に新たに融資を受けようとしても、対応できる金融機関自体が少ないのが実情です。また、すでに住宅ローン等の担保(抵当権)が設定されている不動産を信託財産に組み入れる場合、金融機関の事前承諾が必須です。無断で信託してしまうと契約違反とみなされ、最悪の場合、残債の一括返済を求められるリスクがあります。

防ぐ方法

  • 信託財産に不動産を組み入れる前に、既存の借入先金融機関へ必ず事前相談・承諾を得る
  • 将来の融資(リフォームローン・建て替え等)を想定するなら、契約書に「受託者が金融機関から借入を行い、信託財産に担保を設定できる」旨を明記しておく
  • 対応可能な金融機関を事前にリストアップしておく

失敗事例②:受益者を分けたら、贈与税が発生した

※以下は複数の相談事例をもとに再構成した創作エピソードです。

母親の老後資金を守るために家族信託を設計した際、「将来子どもに財産を渡しやすくしたい」という考えから、委託者を母親、受益者を長男に設定しました。ところが翌年、長男に多額の贈与税の納税通知が届き、家族は制度の理解不足を痛感することになりました。

原因

家族信託の税務は「実質所得者課税の原則」に基づき判断されます。委託者と受益者が同一人物であれば信託財産から生じる利益は本人に帰属するとみなされ、贈与税は発生しません(自益信託)。しかし、委託者と受益者が異なる場合、信託財産の利益が委託者から受益者へ移転したとみなされ、受益者に贈与税が課税されます(他益信託)。「財産管理を子に任せる」ことと「財産を子に渡す」ことは、税務上まったく別の扱いになるのです。

防ぐ方法

  • 認知症対策・財産管理のみが目的であれば、委託者=受益者(自益信託)で設計する
  • 財産の承継まで意図する場合は、贈与税・相続税の試算を必ず事前に行う
  • 契約前に税理士へ課税関係を確認する

失敗事例③:契約後に認知症が進み、追加の財産を信託に入れられなくなった

※以下は複数の相談事例をもとに再構成した創作エピソードです。

数年前に自宅と一部の預金を信託財産として家族信託を契約した父親。その後、認知症が進行し、契約時に信託していなかった別の預金口座や有価証券を追加で信託しようとしたところ、「本人の意思確認ができない」という理由で追加契約ができませんでした。

原因

家族信託の契約(追加信託を含む)には、本人に契約内容を理解できる意思能力があることが前提となります。認知症が進行し、意思能力が失われた後は、信託契約の追加・変更ができなくなります。信託財産に含めなかった財産は、結局、成年後見制度を利用しなければ動かせない状態のまま残ってしまいます。

防ぐ方法

  • 契約時に、将来使う可能性のある財産まで含めて、余裕を持った範囲で信託財産を設計する
  • 信託契約に「委託者の指図により信託財産を追加できる」旨(追加信託条項)を明記しておく
  • 判断能力があるうちに、早めに専門家へ相談する

失敗事例④:受託者(子)が信託財産を使い込んだ

※以下は複数の相談事例をもとに再構成した創作エピソードです。

長男を受託者として、母親名義の預金を管理する家族信託を契約しました。ところが数年後、他のきょうだいが通帳を確認したところ、生活費として説明のつかない多額の出金が繰り返されていたことが発覚しました。

原因

家族信託には、成年後見制度のような家庭裁判所の定期的な監督がありません。契約に受託者の財産管理を監督する仕組み(信託監督人・受益者代理人など)を設けていなかった場合、受託者による使い込みが起きても、他の家族が気づきにくく、発覚が遅れやすい構造になっています。成年後見制度でも後見人による横領は起こり得ますが、家族信託は監督機能を自分たちで設計しなければならない点が異なります。

防ぐ方法

  • 契約時に信託監督人(弁護士・司法書士など第三者)を選任し、定期的な報告義務を課す
  • 信託口口座の入出金記録を、受託者以外の家族も定期的に確認できる体制にする
  • 収支報告を年1回以上、書面で家族に共有するルールを契約書に盛り込む

なお、財産管理を任された人による使い込みは、成年後見制度でも起こり得る共通の課題です。あわせてこちらの記事もご覧ください。

成年後見人の横領・トラブルはなぜ起きるのか|2026年7月の懲戒事案に学ぶ、財産を守る4つの事前対策


失敗事例⑤:信託口口座を開設できる銀行が見つからなかった

※以下は複数の相談事例をもとに再構成した創作エピソードです。

司法書士に依頼して信託契約書を公正証書化したものの、その後、信託財産専用の「信託口口座」を開設しようと近隣の金融機関を回ったところ、対応できる支店が見つからず、口座開設だけで数ヶ月を要してしまいました。

原因

信託口口座(受託者の固有財産と分別管理するための専用口座)に対応している金融機関は、地域や支店によって差があるのが実情です。対応していない金融機関では、やむを得ず受託者個人名義の口座で管理する「信託専用口座」で代用するケースもありますが、この場合、受託者の相続発生時に信託財産と受託者個人の財産が混同されるリスクが残ります。

防ぐ方法

  • 契約書作成前の段階で、信託口口座に対応している金融機関を確認しておく
  • 司法書士・弁護士に、地域で信託口口座に対応している金融機関の情報を確認する
  • やむを得ず個人名義口座で代用する場合は、その旨とリスクを家族全員で共有しておく

失敗事例⑥:遺言書と家族信託の内容が矛盾してトラブルになった

※以下は複数の相談事例をもとに再構成した創作エピソードです。

すでに公正証書遺言で「自宅は長女に相続させる」と定めていた父親が、数年後、認知症対策として自宅を信託財産に含む家族信託を契約しました。しかし遺言書の内容を見直さなかったため、自宅の帰属先について遺言書と信託契約の内容が食い違い、相続発生後にきょうだい間で解釈をめぐる対立が生じました。

原因

家族信託の契約によって信託財産となった財産は、原則として遺言書の対象から外れます。信託契約で定めた帰属権利者(信託終了時に財産を受け取る人)が優先される一方、既存の遺言書がその財産について別の記載を残していると、どちらが有効なのか家族の解釈が割れる原因になります。信託契約と遺言書は別々の制度であり、自動的に整合性が取れる仕組みにはなっていません。

防ぐ方法

  • 家族信託を契約する際は、既存の遺言書の内容を必ず確認し、重複・矛盾がないか整理する
  • 信託財産に含めた財産については、遺言書側の記載を削除・修正する
  • 信託財産に含めなかった財産(信託契約でカバーしきれない部分)は、引き続き遺言書でカバーする

失敗事例⑦:コストが高すぎて費用倒れになった

※以下は複数の相談事例をもとに再構成した創作エピソードです。

「老後の安心のために」と、預金300万円程度の財産に対して家族信託の契約を専門家に依頼したところ、コンサルティング費用・公正証書作成費用などを合わせて総額70万円近くかかってしまいました。財産規模に対して費用負担が重く、結果的に「何のために契約したのか分からない」という状態になりました。

原因

家族信託を専門家に依頼する場合の費用相場は、総額でおおむね50万〜100万円程度、コンサルティング費用は信託財産額の1〜1.5%程度が目安とされています。財産規模が小さい場合、この固定費・比率型費用の負担が相対的に重くなり、費用倒れになりやすい傾向があります。

防ぐ方法

  • 信託財産の総額に対して、想定費用が過大にならないか事前に見積もりを取る
  • 少額の財産のみが対象であれば、財産管理委任契約や任意後見制度など、より低コストな選択肢も比較検討する
  • 複数の専門家から見積もりを取り、費用体系(固定額か、財産額に対する比率か)を確認する

財産管理委任契約についてはこちらで詳しく解説しています。

財産管理委任契約とは?親の認知症前にできる財産管理の方法を徹底解説


7つの失敗事例まとめ【原因・防ぐ方法 一覧表】

# 失敗事例 主な原因 防ぐ方法
融資が受けられない 信託財産への融資対応が限定的、担保設定に金融機関の承諾が必要 事前に金融機関へ相談、契約書に借入・担保設定権限を明記
贈与税が発生 委託者≠受益者(他益信託)で利益移転とみなされる 目的に応じて自益信託・他益信託を選択、税理士に事前確認
追加信託ができない 意思能力低下後は契約の追加・変更が不可 余裕を持った信託財産の範囲設定、追加信託条項の明記
受託者の使い込み 監督の仕組みがない 信託監督人の選任、収支報告ルールの明記
信託口口座が開設できない 対応金融機関が限定的 契約前に対応金融機関を確認
遺言書との矛盾 信託契約と遺言書の内容が未整理 既存の遺言書を確認・修正、役割分担を整理
費用倒れ 財産規模に対してコストが過大 事前見積もり、少額財産は他の制度と比較検討

家族信託が向いている人・向いていない人

向いている人(チェックリスト)

  • 収益不動産など、認知症発症後に「動かせなくなる」と困る財産がある
  • 委託者と受益者を同一にする(自益信託)ことで、税務上の問題を回避できる
  • 財産管理を任せられる、信頼できる受託者候補(家族)がいる
  • 信託監督人の選任など、監督の仕組みを整える予算・意欲がある
  • 財産規模が、専門家費用(50万〜100万円程度)に見合う水準である

向いていない人(チェックリスト)

  • 財産のほとんどが少額の預貯金のみで、複雑な管理を必要としない
  • 信頼して財産管理を任せられる家族がいない、または家族間の関係が不安定
  • 身上監護(施設入所契約や医療同意など)まで含めた支援を必要としている(家族信託は財産管理のみが対象)
  • すでに認知症の診断を受けており、契約に必要な意思能力に疑いがある
  • 遺言書との整理・調整に時間や専門家費用をかけられない

身上監護までカバーする制度としては、任意後見・成年後見制度との比較検討が必要になります。詳しくはこちらをご覧ください。

成年後見制度の「闇」を回避する4つの方法|家族信託・共同後見・生前贈与・死後事務委任を徹底比較


家族信託を成功させるための5つのポイント

  1. 契約前に必ず専門家(司法書士・弁護士・税理士)に相談する — 税務・登記・監督の仕組みは専門知識が不可欠です
  2. 金融機関へ事前に相談する — 融資・信託口口座いずれも、対応可否は金融機関ごとに異なります
  3. 信託監督人を設置する — 受託者だけに管理を任せきりにしない仕組みを作ります
  4. 既存の遺言書・他の制度との整合性を確認する — 信託財産と遺言対象財産が重複しないよう整理します
  5. 判断能力があるうちに、早めに動く — 認知症が進行してからでは、契約も追加信託もできなくなります

DENのエンディングノートで信託契約情報・受託者連絡先を記録する

家族信託の失敗事例の多くは、契約内容や関係者の情報が、受託者以外の家族に共有されていないことが背景にあります。信託監督人がいても連絡先が分からない、契約書の保管場所が不明——こうした情報の空白が、トラブルの発見を遅らせる原因になります。

DENは、相続・遺言・終活に関する大切な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。家族信託の契約書の保管場所、受託者・信託監督人の連絡先、信託口口座の情報などを、三分割暗号化方式で安全に記録し、いざというときに家族へ確実に伝えられる仕組みを提供します。現在、サービス開始に向けてモニターを募集しています。

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よくある質問

Q1. 家族信託を契約すれば、認知症になっても財産管理は完全に安心ですか?

いいえ。家族信託は財産管理に特化した制度であり、身上監護(施設入所契約や医療同意など)はカバーしません。また、契約時に信託財産に含めなかった財産は、認知症進行後に追加できなくなるため、契約範囲の設計が重要です。

Q2. 家族信託の受託者は、必ず子どもでなければいけませんか?

いいえ。受託者は家族に限らず、信頼できる第三者や法人(信託会社等)を選ぶことも可能です。ただし家族間で受託者を選ぶ場合は、監督の仕組み(信託監督人など)を併せて検討することをおすすめします。

Q3. 家族信託と成年後見制度は、どちらを選ぶべきですか?

財産管理のみを目的とし、認知症発症前に柔軟な設計をしておきたい場合は家族信託が向いています。一方、身上監護まで必要な場合や、すでに判断能力が低下している場合は、成年後見制度(法定後見)の利用が現実的な選択肢になります。両制度を組み合わせるケースもあるため、専門家への相談をおすすめします。

Q4. 信託財産に含めた不動産は、遺言書に書かなくてよいですか?

信託契約で帰属権利者を定めた財産は、原則として遺言書の対象から外れます。ただし、既存の遺言書にその財産の記載が残っていると内容が矛盾する可能性があるため、信託契約時に遺言書側の記載も必ず見直してください。

Q5. 家族信託の費用を抑える方法はありますか?

財産規模が小さい場合は、家族信託よりも財産管理委任契約や任意後見制度の方が費用対効果に優れることがあります。また、専門家によってコンサルティング費用の体系(固定額か、財産額に対する比率か)が異なるため、複数の専門家から見積もりを取ることをおすすめします。

Q6. 受託者による使い込みを防ぐには、具体的に何をすればよいですか?

契約時に信託監督人(弁護士・司法書士などの第三者)を選任し、定期的な収支報告を義務付けることが有効です。また、信託口口座の入出金記録を受託者以外の家族も確認できる体制を作ることで、早期発見につながります。


まとめ|家族信託は「契約すること」ではなく「設計」が本質

家族信託は、認知症対策・財産管理の有効な選択肢である一方、設計や運用を誤ると、融資が受けられない・想定外の贈与税が発生する・受託者の使い込みに気づけないといった逆効果を招くリスクがあります。

  • 不動産を信託する前に金融機関への事前相談を欠かさない
  • 委託者と受益者の関係で贈与税の課税関係が変わることを理解する
  • 意思能力があるうちに、将来を見据えた範囲で信託財産を設計する
  • 信託監督人など、受託者を監督する仕組みを契約に組み込む
  • 遺言書との整合性を必ず確認する
  • 財産規模に見合った費用かどうかを事前に見積もる

「家族信託さえすれば安心」ではなく、専門家と共に慎重に設計し、契約後も家族間で情報を共有し続けることが、家族信託を本来の目的どおりに機能させる鍵になります。個別の事情に応じた設計については、司法書士・弁護士・税理士への相談を強くおすすめします。

エンディングノートのデジタル化にご興味がある方は、DENのサービス紹介ページをご覧ください。


執筆・監修について

本記事は、DEN編集部が家族信託・相続に関する公開情報をもとに作成しました。法律・税務に関する内容については、司法書士・弁護士・税理士の監修を受けることを推奨します。個別の相談は専門家にお問い合わせください。

参考資料・外部リンク
法務省:信託制度のパンフレットの公表について(信託制度を知って、活用する)
国税庁:F2-5 信託に関する受益者別(委託者別)調書(同合計表)

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