公正証書遺言は最低2ヶ月かかる|手続き全プロセスと証人確保の落とし穴

相続・遺言

「遺言書、そろそろ作っておかないとな」と思い立ち、最寄りの公証役場に電話をかけたとき、こんな言葉が返ってきた。

「ただいま公証人が大変混み合っており、ご予約は最短でも2ヶ月先になります」

気持ちを奮い立たせてようやく動き出したのに、すぐには動けないという現実。公正証書遺言は「公証役場に行けばすぐ作れる」と思っている人が多いが、実際はそう簡単ではない。

この記事では、公正証書遺言の手続き全プロセスを整理し、なぜ時間がかかるのか、どう準備すればスムーズに進むかを解説します。

※冒頭のエピソードは体験談をもとにした例示です。公証役場の混雑状況は地域・時期によって異なります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)にご相談ください。

デジタルエンディングノート「DEN」では、公正証書遺言の作成に備えた財産情報の事前整理をサポートしています。
モニター募集・事前予約フォームはこちら


公正証書遺言とは?自筆証書遺言との違い

公正証書遺言の3つの特徴

公正証書遺言とは、公証人が関与して作成する遺言書のことです。法的効力が高く、紛失・偽造のリスクが低い点が最大のメリットです。

  1. 法的に強い — 公証人が作成に関与するため、形式上の不備で無効になるリスクがほぼない
  2. 原本が公証役場に保管される — 自宅で保管する必要がなく、紛失・改ざんの心配がない
  3. 家庭裁判所の検認が不要 — 相続発生後の手続きがシンプルになる

公証役場の公証人は法務大臣が任命する公務員であり、作成した遺言書は日本公証人連合会(https://www.koshonin.gr.jp/)のシステムで全国検索できます。信頼性という点では、公正証書遺言に勝る形式はないといえます。

自筆証書遺言との比較

項目 公正証書遺言 自筆証書遺言
作成費用 数万円〜(手数料+専門家報酬) ほぼ無料
手間 多い(書類収集・証人確保・公証役場との調整) 少ない(自分で書くだけ)
安全性 高い(形式不備で無効になるリスクが低い) 低い(書き方を誤ると無効になるリスクあり)
所要期間 1〜2ヶ月 即日可能
検認 不要 原則必要(法務局保管を除く)
専門家の関与 必須(公証人) 任意

費用と手間はかかりますが、「確実に有効な遺言書を残す」という目的では公正証書遺言が圧倒的に安全です。


公正証書遺言の作成手順——全6ステップ

STEP 1|遺言の内容を決める

まず「誰に何を残すか」を明確にします。財産目録(不動産・預金・有価証券など)を整理し、相続人・受遺者のリストを作っておくと、この後の手続きがスムーズになります。

50代・60代で遺言を検討し始める方が増えていますが、意外に多いのが「財産の全貌が把握できていない」というケースです。ネット銀行・証券口座・仮想通貨・デジタル資産なども漏れなくリストアップすることが大切です。

STEP 2|必要書類を集める

書類収集には1〜2週間かかることが多いです。主な必要書類は以下のとおりです。

  • 遺言者の実印・印鑑証明書
  • 遺言者の戸籍謄本(出生から現在までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産がある場合:固定資産評価証明書・登記事項証明書
  • 証人2名の氏名・住所・生年月日(身分証明書のコピー)

戸籍謄本は役所窓口またはオンラインで取得できますが、複数の市区町村にまたがる場合は郵送請求が必要になり時間がかかります。

STEP 3|証人2名を確保する(ここが難関)

公正証書遺言には証人2名の立ち会いが義務づけられています(民法969条)。しかし、誰でも証人になれるわけではありません。詳細は次の章で解説します。

STEP 4|公証役場に相談・予約

書類と証人の見通しが立ったら、管轄の公証役場に連絡し、相談の予約を取ります。ここで「2ヶ月待ち」という現実に直面するケースがあります。

公証人は全国で約500人しかおらず(法務省資料参照: https://www.moj.go.jp/)、都市部でも1つの役場に数人しかいません。相続関連の需要が高まっている近年、予約が取りにくくなっています。

STEP 5|公証人と文案を調整する

予約が取れたら、公証人と遺言書の文案を作成します。電話・メール・対面でのやりとりを経て、内容を確定させます。この調整に1〜2週間かかることが多いです。

STEP 6|公証役場で署名・押印・完成

当日は遺言者と証人2名が公証役場に出向き、以下の手順で手続きを行います。当日の所要時間は30分〜1時間程度です。

  1. 遺言者・証人の本人確認
  2. 遺言内容の読み合わせ・確認
  3. 遺言者・証人が署名・押印
  4. 公証人が署名・押印して完成

証人確保が「意外と難しい」理由——民法974条の壁

なれない人のリスト

民法974条により、以下の人は証人になることができません。

  • 未成年者
  • 推定相続人(遺産を受け取る可能性のある法定相続人)
  • 受遺者(遺言で財産をもらう予定の人)
  • 推定相続人・受遺者の配偶者および直系血族(親・子・孫など)
  • 公証人の配偶者・四親等内の親族・公証役場の書記や使用人

つまり、「家族に頼めばいいか」というわけにはいきません。配偶者も子も、基本的に証人にはなれないのです。

70代・80代の方が遺言書を作る場合、身近な知人が高齢であったり、相続人の関係者であったりして、証人が見つかりにくいというケースも少なくありません。

証人を探す3つの方法

① 自分で探す(知人・友人に依頼)

相続人でも受遺者でもない友人・知人に依頼する方法です。謝礼の目安は1人あたり1万円程度。ただし、遺言内容(財産情報)を知られることへの抵抗感を持つ人もいます。

② 公証役場に紹介してもらう

公証役場が証人を紹介してくれるケースがあります。費用は2名で1万〜1万5千円程度。法務省・検察庁OBなど法的知識のある人が担当することが多いです。

③ 司法書士・行政書士に依頼する

専門家に遺言作成全体を依頼すると、証人も兼ねてくれることが多いです。守秘義務があるためプライバシーも守られます。費用は2〜5万円程度(証人費用含む)です。


費用の目安

公証役場の手数料(財産額別)

公証役場に支払う手数料は、遺言書に記載する財産の総額によって異なります(政令で定められた金額)。

財産の価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 11,000円
500万円超〜1,000万円以下 17,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 23,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 29,000円
5,000万円超〜1億円以下 43,000円

※財産の種類が複数ある場合は合算して計算する場合と、別々に計算する場合があります。

専門家への報酬相場

依頼先 費用の目安
司法書士・行政書士 2〜5万円程度
弁護士 5〜15万円程度
信託銀行(パッケージ) 10万円〜

合計すると、専門家に依頼した場合の総費用は5〜20万円前後が目安となります。


なぜ2ヶ月以上かかるのか——3つの理由

理由① 公証人が全国で約500人しかいない

公証人は法務大臣が任命する公務員(実質は弁護士・裁判官・検察官のOBが多い)です。全国でおよそ500人しかおらず、人口の多い都市部でも予約が混み合うことが珍しくありません。近年の相続・遺言相談の増加で、特に混雑しています。

急ぎで遺言書を作りたいという事情があっても、公証役場の都合に合わせるしかないのが現実です。健康状態が悪化してから動き始めると、待機期間中にさらに状態が悪化するリスクもあります。

理由② 書類収集に時間がかかる

戸籍謄本の収集は、複数の市区町村にまたがる場合、郵送請求を繰り返すことになります。固定資産評価証明書は市区町村の窓口でしか取れないものもあり、すべて揃えるのに1〜2週間かかることが多いです。

理由③ 証人確保の調整

証人2名の都合を合わせる作業も、意外と時間がかかります。専門家に依頼すれば融通が利きますが、自力で探す場合は「断られる」「スケジュールが合わない」といった事態も起こりえます。


事前に情報を整理しておくと手続きがスムーズになる

公正証書遺言の作成で時間がかかる理由の多くは、「何を誰に残すかの整理ができていない」ことに起因します。財産目録が不明確なまま公証役場に相談に行っても、話が進みません。

遺言書を作る前に、以下の情報を整理しておくと手続きが格段にスムーズになります。

  • 財産目録:不動産・預金・保険・有価証券・デジタル資産など
  • 相続人リスト:続柄・連絡先・生年月日
  • 希望する分配方法:誰に何を渡したいか
  • デジタルアカウント情報:ネット銀行・証券・SNSアカウント・仮想通貨など

特にデジタル資産(ネット銀行・仮想通貨・SNSアカウントなど)は、遺族が存在すら知らないまま消滅するケースがあります。遺言書に盛り込むためにも、事前に一覧化しておくことが重要です。

こうした情報を事前にまとめておくツールとして、デジタルエンディングノート「DEN」 を活用する方法があります。DENは富裕層向けのデジタル遺産管理サービスで、財産情報や相続に関する希望を三分割暗号化技術で安全に記録・管理できます。

公正証書遺言の作成を検討する前段階として、まずDENで情報を整理しておくことで、専門家との相談もスムーズに進み、余分な往復の時間を削減できます。

DENへのご登録・ご相談はこちらからどうぞ。
モニター募集・事前予約フォームはこちら


よくある質問(FAQ)

Q1. 公正証書遺言を作るのに必要な期間はどれくらいですか?

通常1〜2ヶ月かかります。公証人の予約・書類収集・証人確保・文案調整の各ステップが必要なためです。公証役場が混雑している地域では、さらに長くかかる場合があります。

Q2. 証人になれない人はどんな人ですか?

民法974条により、推定相続人・受遺者・それらの配偶者や直系血族(親・子・孫)は証人になれません。未成年者や公証役場の関係者も同様です。つまり、家族は基本的に証人になれません。

Q3. 公正証書遺言の費用はいくらかかりますか?

公証役場の手数料(財産額に応じて5,000円〜)と専門家報酬(2〜15万円程度)がかかります。財産総額が5,000万円の場合、合計で7〜20万円程度が目安です。

Q4. 自筆証書遺言ではダメなのですか?

自筆証書遺言は費用がかからず手軽ですが、書き方のルールが厳格で不備があると無効になります。日付・署名・印の欠如、財産目録のパソコン作成(一部例外あり)などが原因で無効になったケースも多くあります。確実に遺言を残したい場合は公正証書遺言がおすすめです。

Q5. 公証役場に行けない場合(寝たきり・入院中など)はどうすればよいですか?

公証人に出張してもらうことが可能です(民法970条)。病院・自宅・老人ホームなどへ来てもらえます。ただし出張費用が別途かかります。また、認知症が進んで意思能力が低下すると公正証書遺言自体が作成できなくなりますので、早めの対応が重要です。

Q6. 公正証書遺言は後から変更できますか?

はい、何度でも変更(撤回・作り直し)できます。最後に作成した遺言書が有効となります。ただし変更するたびに手続き・費用が発生します。最初から正確な内容で作成できるよう、事前の情報整理が大切です。


まとめ——「早めに動く」が公正証書遺言の鉄則

公正証書遺言は、「思い立ったらすぐ作れる」ものではありません。公証人の予約・書類収集・証人確保・文案調整と、複数のステップを経て完成するまでに、通常1〜2ヶ月、場合によってはそれ以上かかります。

特に「公証人不足による予約の混雑」と「民法974条による証人の制限」は、多くの50代・60代・70代の方が事前に知らずに直面する壁です。

自筆証書遺言は手軽に書けますが、形式の不備で無効になるリスクがあります。確実に有効な遺言書を残したいなら、手間はかかっても公正証書遺言を選ぶべきです。

そして何より大切なのは、元気なうちに早めに動き出すこと。健康状態が悪化してからでは手続きに対応できなくなることもあります。「そのうち」ではなく、「今」動き始めることが、残される家族への最大の配慮になります。

まずは財産情報の整理から始めたい方は、DENのデジタルエンディングノートをぜひご活用ください。法律・税務の専門家との連携もサポートしています。

DEN モニター募集・事前予約フォームはこちら


※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)にご相談ください。民法・公証制度の詳細は法務省(https://www.moj.go.jp/)および日本公証人連合会(https://www.koshonin.gr.jp/)の公式情報をご参照ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました