公正証書遺言がオンラインで作成可能に!メリット・デメリットと高齢者が知っておくべき注意点

相続・遺言

「公証役場まで行くのが正直しんどい」「足腰が弱ってきて、あの手続きは負担が大きい」——公正証書遺言を作りたいと思いながらも、公証役場への往復がネックになって足が止まっている方は少なくありません。

2025年10月1日、そんな状況を変える制度が始まりました。公証人法の改正により、公正証書遺言の一部の手続きがオンライン化(デジタル化)され、自宅から完結できるようになったのです。60代・70代で遺言作成を検討し始める方はもちろん、80代以上の方やそのご家族にとっても影響の大きい制度変更です。自宅にいながら、Web会議システムを通じて公証人・証人とやりとりし、遺言書を作成できます。

ただし、「オンラインでできる」という言葉の響きほど、実際は簡単ではありません。この記事では、公正証書遺言のオンライン作成の仕組みとメリットを整理したうえで、「便利そうに見えて、実は高齢者にとってハードルが高い」という現実も正直にお伝えします。必要な機材のチェックリストと、対面作成との比較表も用意しましたので、ご自身やご家族に合った方法を選ぶ判断材料にしてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)にご相談ください。制度の詳細は必ず日本公証人連合会(https://www.koshonin.gr.jp/)および法務省(https://www.moj.go.jp/)の公式情報をご確認ください。

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2025年10月1日から公正証書遺言のオンライン作成がスタート

従来の公正証書遺言はどう作られてきたか

これまで公正証書遺言を作成するには、遺言者本人が証人2名とともに公証役場へ出向くことが原則でした。予約調整・書類収集・当日の移動と、体力的にも時間的にも負担の大きい手続きです。

公証人は全国でおよそ500人しかおらず、都市部でも予約が混み合うケースが珍しくありません。足腰が弱った高齢者や、遠方の病院・施設に入所している方にとって、「公証役場に行くこと」自体が最大のハードルになっていました。

オンライン化で何が変わったのか

2023年に成立した公証人法改正を受け、2025年10月1日から、Web会議システムを利用した公正証書の作成手続きが可能になりました(日本公証人連合会 公式発表)。遺言者・公証人・証人2名が、それぞれの場所からオンラインで参加し、映像と音声を通じて本人確認・意思確認を行います。

手数料は対面と同額で、追加費用は発生しません。ただし、すべてのケースでオンライン作成が使えるわけではなく、公証人が「相当」と判断した場合に限られる点には注意が必要です。判断能力の確認が難しいと公証人が感じた場合は、対面での作成を求められることがあります。


公正証書遺言のオンライン作成の仕組み

Web会議システム(Microsoft Teams)を使った手続きの流れ

オンライン作成では、指定のWeb会議システムとしてMicrosoft Teamsが使用されます。遺言者は自宅や病院・老人ホームなどからパソコンで接続し、公証人・証人とリアルタイムで対面同様のやりとりを行います。

  1. 公証人との事前相談・文案の調整(メール・電話など)
  2. 指定日時にMicrosoft Teamsへ接続
  3. 本人確認・証人確認
  4. 公証人が遺言内容を読み上げ、画面上で案文を共有
  5. 遺言者が内容を承認し、電子署名を行う
  6. 公証人・証人が電子署名を行い完成

本人確認・証人の立ち会い方法

本人確認は、マイナンバーカードや運転免許証を画面に提示する方法で行われます。証人2名も同じWeb会議に参加する形で立ち会い、対面時と同様に、遺言者の意思確認のプロセスに関与します。

電子署名・電子データでの保管

署名は、タッチパネルやペンタブレットを使って画面上に手書きで行うか、電子署名用のカードリーダーを用いて行います。作成された公正証書遺言の原本は電子データとして公証役場に保管され、正本・謄本も電子ファイルで交付できるようになりました。原本が電子化されることで、紙の原本にありがちな紛失・劣化のリスクは軽減されます。


オンライン作成のメリット

公証役場に出向けない方でも作成可能に

寝たきりや歩行が困難な方、遠方の病院・施設に入所している方でも、公証役場に出向くことなく遺言を作成できるようになりました。これまで「体力的に無理だから」と遺言作成を諦めていた方にとって、選択肢が一つ増えたことは大きな意味を持ちます。

移動の負担が大幅に軽減される

公証役場までの移動、当日の待ち時間、付き添いの手配——これらすべてがオンライン化により不要になります。特に地方在住で最寄りの公証役場が遠い方にとっては、時間的・経済的な負担軽減につながります。

証人もオンライン参加で手配しやすくなる

証人2名も同じ場所に集まる必要がなくなり、それぞれ別の場所からオンライン参加できます。証人のスケジュール調整がしやすくなった点は、地味に見えて実務上は大きなメリットです。


オンライン作成のデメリット・注意点【正直に解説】

ここまで読むと「便利になった」という印象を持たれるかもしれません。しかし、実際に利用を検討すると、いくつもの高いハードルが立ちはだかります。競合記事ではメリットばかりが強調されがちですが、この記事では現実的な課題を正直にお伝えします。

デメリット① Microsoft Teams必須、スマホ・タブレットは不可

オンライン作成に使用できる端末は、Microsoft Teamsが安定して動作するパソコンに限られます。スマートフォンやタブレットでは手続きができません。ふだんスマホしか使っていない高齢者にとって、この時点ですでに大きな壁になります。

デメリット② ウェブカメラ・マイク・電子サイン用機材が必要

パソコンのほかにも、以下のような機材・環境が必要です。

  • 安定したインターネット回線
  • ウェブカメラ・マイク(内蔵または外付け)
  • 電子署名用のタッチパネルまたはペンタブレット
  • 電子署名用のカードリーダー(マイナンバーカード読み取り用)
  • メールアドレス

これらをすべて揃え、事前に接続テストまで済ませておく必要があります。

デメリット③ ITに不慣れな高齢者には実質的なハードルが高い

制度の主な利用対象として想定されている高齢者層こそ、Microsoft Teamsのインストールや接続設定、カメラ・マイクのトラブルシューティングに不慣れなケースが多いのが実情です。「オンラインで完結できる」という制度の建前と、実際に使いこなせるかという現実の間には、大きなギャップがあります。家族のサポートが受けられない一人暮らしの高齢者にとっては、なおさら利用のハードルが高くなります。

デメリット④ 証人2名の立ち会いは従来通り必要

オンライン化されても、民法969条が定める証人2名の立ち会い義務は変わりません。証人になれない人の範囲(推定相続人・受遺者・その配偶者や直系血族など)も従来どおりで、証人探しの負担そのものが解消されたわけではない点には注意が必要です。

デメリット⑤ なりすまし・偽造リスクへの懸念

オンライン作成に対しては、専門家からも慎重な意見が出ています。Web会議越しでは、画面に映らない場所から第三者が遺言者に特定の発言を促したり、あらかじめ用意された文言を読み上げさせたりする可能性を完全には排除できません。対面であれば公証人が周囲の状況を直接確認できますが、オンラインでは物理的な確認に限界があります。また、作成した電子データの遺族への引き渡し方法についても、実務上の課題が指摘されています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)にご相談ください。オンライン作成の可否や具体的な手続きは、必ず管轄の公証役場および日本公証人連合会(https://www.koshonin.gr.jp/)の公式情報でご確認ください。


【チェックリスト】オンライン作成に必要な機材・環境

以下の項目にすべて当てはまるかどうかで、オンライン作成が現実的な選択肢かどうかを判断できます。

チェック項目 内容
端末 パソコン(スマホ・タブレットは不可)
通信環境 安定したインターネット回線(Wi-Fiまたは有線)
カメラ・マイク ウェブカメラ・マイクが使える状態
署名用機材 タッチパネルまたはペンタブレット
本人確認機材 マイナンバーカード用ICカードリーダー
メール 受信可能なメールアドレスを保有
操作サポート Teamsの接続・操作を一人で、または家族の助けを借りて行える
判断能力 公証人が「オンラインでの意思確認が可能」と判断できる状態

上記の多くにチェックが付かない場合は、無理にオンライン作成にこだわらず、次章の対面作成や公証人の出張制度を検討することをおすすめします。


対面作成 vs オンライン作成 比較表

項目 対面作成 オンライン作成
開始時期 従来から可能 2025年10月1日〜
必要な移動 公証役場への往復が必要 原則不要
対応端末 不要 パソコンのみ(スマホ・タブレット不可)
必要機材 特になし Web会議システム・カメラ・マイク・署名用機材
証人の立ち会い 対面で同席 オンラインで参加(義務自体は変わらず)
手数料 財産額に応じた手数料 対面と同額
高齢者への向き不向き 移動の負担はあるが操作は不要 移動は不要だがIT機材の準備・操作が必要
利用可否の判断 原則いつでも可能 公証人が「相当」と認めた場合のみ
なりすまし対策 公証人が対面で状況を確認 画面外の状況確認に限界あり

移動が難しいが家族や介護スタッフのITサポートを受けられる方にはオンライン作成が向いています。一方、ITに不慣れで一人暮らしの高齢者の場合は、無理にオンラインを選ばず、次章で紹介する代替手段を検討したほうが現実的です。


公証役場に行けない方への代替手段としての位置づけ

「オンライン作成のハードルが高そうだ」と感じた方には、もう一つの選択肢があります。それが、公証人に自宅・病院・施設まで出向いてもらう「出張(訪問)公証」です。

出張公証は民法970条に基づく従来からの制度で、公証人が遺言者のもとへ直接出向き、対面で手続きを行います。パソコンやカメラの準備は不要で、対面での本人確認・意思確認が行われるため、なりすましのリスクも低く抑えられます。ただし、出張費用が別途かかる点や、公証人のスケジュール調整が必要な点はデメリットです。

オンライン作成・出張公証・従来の公証役場への来所——この3つの選択肢を、ご本人のIT習熟度や体調、費用感に応じて使い分けることが、公正証書遺言を確実に残すための現実的なアプローチといえます。


普及率の現状と今後の課題

制度が始まって間もないこともあり、オンラインでの公正証書遺言作成の利用件数はまだ限定的です。報道でも「利用の軸となる高齢者にはまだ高い壁がある」という指摘がされており、制度の理念と実際の利用のしやすさの間にはギャップが残っています。

今後の課題としては、次のような点が挙げられます。

  • 高齢者向けの操作サポート体制の整備(家族・自治体・公証役場によるサポート)
  • なりすまし・偽造防止のための本人確認技術の強化
  • 相続手続きにおける電子データの取り扱い方法の標準化(金融機関側の受け入れ体制整備を含む)
  • スマートフォン・タブレットへの対応拡大の検討

制度は始まったばかりであり、今後の運用状況やルールの見直しについては、日本公証人連合会や法務省の発表を継続的に確認することが重要です。


遺言書の情報整理は、作成方法を選ぶ前から始められる

オンラインで作るか、対面で作るか、出張公証を使うか——どの方法を選ぶにしても、事前に「誰に何を残すか」「財産がどこにあるか」を整理しておくことが手続きをスムーズにする共通のポイントです。

特に、公正証書遺言は完成後も原本の保管場所や担当した公証役場の情報を家族が把握していなければ、いざという時にスムーズに活用できません。オンライン作成の場合は電子データでの保管となるため、「どの公証役場のシステムに、どの形式で保管されているか」を書き残しておくことが、これまで以上に重要になります。

あわせて、ネット銀行・証券口座・SNSアカウント・仮想通貨といったデジタル資産の情報も、遺言書だけではカバーしきれないケースが多く見られます。デジタル資産は遺族が存在に気づかないまま消滅してしまうこともあるため、遺言の作成方法を選ぶのと並行して整理しておくことをおすすめします。

デジタルエンディングノート「DEN」では、遺言書の保管場所や作成方法(対面・オンラインの別)、担当公証人の情報、さらにはデジタル資産の情報までを、三分割暗号化技術を用いて安全に記録し、必要なときに家族へ伝えられる仕組みを提供しています。公正証書遺言をどの方法で作るか迷っている段階から、ぜひご活用ください。サービスの詳細は下記フォームからご覧いただけます。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 公正証書遺言のオンライン作成はいつから始まりましたか?

2025年10月1日から始まりました。公証人法改正により、Web会議システムを利用した公正証書の作成手続きが可能になっています。詳細は日本公証人連合会(https://www.koshonin.gr.jp/)の公式発表をご確認ください。

Q2. スマートフォンやタブレットでもオンライン作成はできますか?

できません。オンライン作成にはパソコンが必須で、Microsoft Teamsが安定して動作する環境が必要です。ふだんスマホしか使っていない方は、事前にパソコンと周辺機器の準備が必要になります。

Q3. オンライン作成でも証人は必要ですか?

必要です。民法969条により証人2名の立ち会いが義務づけられており、この点はオンライン作成でも変わりません。証人はWeb会議に参加する形で立ち会います。

Q4. 誰でもオンライン作成を選べますか?

いいえ。公証人が「オンラインでの手続きが相当である」と判断した場合に限られます。判断能力の確認が難しいと公証人が感じた場合には、対面での作成を求められることがあります。

Q5. オンライン作成と対面作成で、費用に差はありますか?

手数料は対面と同額です。ただし、オンライン作成にはパソコンやカメラ、電子署名用機材の準備費用が別途発生する場合があります。

Q6. 公証役場に行くのもオンライン機材の準備も難しい場合はどうすればよいですか?

公証人に自宅や病院・施設まで出向いてもらう「出張(訪問)公証」という制度があります(民法970条)。パソコンの準備は不要で、対面での手続きが行われます。出張費用が別途かかる点にはご注意ください。


まとめ——「便利」を鵜呑みにせず、自分に合った方法を選ぶ

2025年10月1日から始まった公正証書遺言のオンライン作成は、公証役場への移動が難しい方にとって新しい選択肢となる制度です。証人もオンラインで参加できるようになり、移動の負担は確かに軽減されます。

一方で、Microsoft Teamsが動くパソコン・ウェブカメラ・電子署名用機材の準備が必須であり、ふだんITに不慣れな高齢者にとっては、対面での手続きよりもかえってハードルが高くなる場合があります。証人2名の立ち会いという根本的な負担が解消されたわけでもなく、なりすまし・偽造リスクへの懸念も専門家から指摘されています。

「オンラインだから便利」と単純に飛びつくのではなく、ご本人のIT習熟度や体調、サポートしてくれる家族の有無に応じて、オンライン作成・出張公証・従来の公証役場への来所のいずれが適しているかを見極めることが大切です。

どの方法を選ぶ場合でも、まずは財産情報や遺言に関する希望の整理から始めることをおすすめします。DENのデジタルエンディングノートは、そうした情報整理と、遺言書の保管場所・担当公証人といった大切な情報を家族へ伝える仕組みをサポートしています。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・司法書士・行政書士)にご相談ください。公正証書遺言のオンライン作成制度の詳細は、法務省(https://www.moj.go.jp/)および日本公証人連合会(https://www.koshonin.gr.jp/)の公式情報を必ずご確認ください。

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