自宅で死ぬ人はわずか17%——戦後90%から逆転した「在宅死」の現実と備え

夕暮れの和室と縁側、静かな在宅の情景をイメージした温かみのある写真 終活・エンディングノート

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・法律・税務相談ではありません。ご自身やご家族の治療方針・看取りの方針については、必ず主治医・訪問看護師など医療専門職にご相談ください。死亡後の手続きについては、必要に応じて警察・葬儀社・弁護士・司法書士など専門家にご確認ください。記事内の統計データは、厚生労働省・警察庁など公的機関が作成時点で公表した数値であり、その後の調査で更新される場合があります。


本記事で理解できること

「できることなら、住み慣れた自宅で最期を迎えたい」——多くの方が一度は思い描く願いではないでしょうか。実際、内閣府などの意識調査では、人生の最期を自宅で迎えたいと答える人が約6割にのぼるとされています。

けれど、実際に自宅で亡くなる方の割合は、全体の約17%にとどまります。祖父母の世代まで遡れば、自宅での看取りはむしろ「当たり前」の光景でした。この願いと現実のあいだには、なぜこれほど大きな差が生まれたのでしょうか。

本記事では、在宅死の現在地を公的統計で確認したうえで、戦後から現代までの「死に場所」の歴史的な変化をたどります。そのうえで、実際に自宅で最期を迎える場合にどのような手続きが必要になるのか、そして自宅での看取りを望む場合に何を準備しておくべきかを、できるだけ具体的にお伝えします。

「自宅で死ぬべきだ」という主張をするものではありません。自宅・病院・施設、それぞれに事情とメリットがあります。大切なのは、どちらを選ぶにしても後悔が少なくなるよう、事前に知っておくことです。


「自宅で死にたい」6割、実現するのは約17%という現実

まず、現在の日本人がどこで亡くなっているのか、公的統計で確認しておきましょう。

厚生労働省「人口動態統計」(令和5年)によると、日本人の死亡場所の内訳はおおむね次のとおりです。

  • 病院・診療所:約65〜66%
  • 自宅:約17%
  • 介護施設等(老人ホーム・介護老人保健施設など):約15〜18%

(出典:厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)の概況」)

つまり、現在も死亡者の約3人に2人は病院で最期を迎えており、自宅で亡くなる方は6人に1人程度という計算になります。

一方で、意識調査に目を向けると、様相が変わります。「最期を迎えたい場所」を尋ねる各種調査では、自宅を希望する人がおおむね5〜6割にのぼるという結果が繰り返し報告されています。

つまり、多くの人が自宅を望みながら、実際にそれを実現できているのは希望者の3分の1にも満たない、というギャップが存在するのです。このギャップの背景には、単なる「準備不足」だけでなく、時代とともに変化してきた社会構造そのものが関係しています。


戦後90%超から現代17%へ——「死に場所」の逆転史

在宅死の割合は、実は昔からこの水準だったわけではありません。むしろ、歴史をさかのぼるほど自宅での死亡が「普通」だったことがわかります。

昭和中期まで:看取りは家庭の営みだった

昭和20年代(1950年前後)の統計では、自宅での死亡が全体の80〜90%を占めていたとされています。当時は三世代同居が一般的で、祖父母の介護や看取りは、家族の中で自然に受け継がれる役割のひとつでした。医師が最期に立ち会うことは今よりも少なく、家族が最期の瞬間を見届けることが日常の延長線上にあったのです。

高度経済成長期以降:病院死が「普通」になった

大きな転換点となったのは、高度経済成長期です。国民皆保険制度の整備によって誰もが病院にかかりやすくなり、医療技術の進歩によって「治療すれば延命できる」という選択肢が広がりました。同時に核家族化が進み、日中に家族が家にいない世帯が増えたことで、自宅で看取ることが物理的に難しくなっていきます。

この結果、1970年代から2000年代にかけて、病院での死亡が急増し、自宅での死亡は長らく10%台前半で推移するようになりました。「死は病院で迎えるもの」という感覚が、この数十年で社会全体に定着したといえます。

現代:在宅医療の整備で再び微増傾向に

近年は、この流れにわずかな変化が見られます。訪問診療・訪問看護を担う医療機関の増加や、地域包括ケアシステムの推進により、在宅医療の受け皿が少しずつ整いつつあるためです。厚生労働省の資料では、在宅医療を必要とする高齢者数は2025年時点で約176万人に上ると推計されており、2027年度以降もさらなる体制整備が計画されています(出典:厚生労働省「第8次医療計画における在宅医療の体制整備について」)。

新型コロナウイルス流行期には、入院・面会制限の影響もあって在宅死の割合が一時的に上昇したとの研究報告もあります。とはいえ、依然として病院死が主流であることに変わりはなく、「昔のように自宅で看取るのが当たり前」という時代に戻ったわけではありません。

在宅で最期を迎えたいと望む場合には、こうした社会構造の変化を踏まえたうえで、意識的な準備が必要になる時代になっているのです。


自宅で最期を迎えるとどうなるのか——手続きのリアル

「自宅で見送る」と一口に言っても、実際にその場面に直面すると、多くの方が想像していなかった手続きに戸惑います。ここでは、知っておきたい現実を整理します。

かかりつけ医の有無で、最初の対応がまったく変わる

自宅で家族が息を引き取ったとき、最初に何をするかは「かかりつけ医がいるかどうか」で大きく変わります。

  • かかりつけ医・訪問診療医がいる場合:主治医や訪問看護師に連絡し、死亡の確認と死亡診断書の交付を依頼します。生前から診療を受けていた病気に関連する死亡であれば、医師の判断により死亡診断書が発行されます。
  • かかりつけ医がいない、または生前に診察を受けていない場合:警察に連絡し、検視・検案を受けたうえで死体検案書を発行してもらう流れになります。

明らかに死亡していると判断できる場合、救急車を呼んでも救命処置はできません。むやみに遺体を動かさず、そのままの状態で医師や警察の到着を待つことが基本とされています。

「救急車を呼ぶと警察も来る」という、知らない人が多い現実

在宅死で意外と知られていないのが、救急車を呼んだ結果として警察が来るケースがあるという点です。

かかりつけ医が直前24時間以内に診察していない、あるいは死因がはっきりしない場合、救急隊員は事件性の有無を判断できないため、警察への通報を行うことがあります。これは家族を疑っているわけではなく、法律上の手続きとして行われるものですが、実際に経験すると「なぜ警察が来るのか」と戸惑うご遺族が少なくありません。

警察が来た場合には、第一発見者や同居家族への事情聴取が行われ、事件性がないと判断されれば、監察医や警察医による検視・検案を経て死体検案書が交付されます。悲しみの中でこうした対応を求められることは、精神的な負担が大きいものです。あらかじめこの可能性を知っておくだけでも、いざというときの心構えが変わってきます。

死亡診断書と死体検案書、そのあとの届出

死亡診断書(または死体検案書)を受け取ったら、次のような手続きに進みます。

  1. 葬儀社への連絡:死亡確認後、遺体の搬送・安置場所について葬儀社に相談します。
  2. 死亡届の提出:死亡診断書・死体検案書の交付を受けてから7日以内に、市区町村役場へ死亡届を提出します。
  3. 火葬許可申請:死亡届の提出とあわせて火葬許可を申請し、許可証を受け取ります。

これらの手続きは、深い悲しみのなかで短期間に進めなければならないものです。あらかじめ流れを知っておくことで、いざというときの負担を少しでも軽くすることができます。


自宅で看取るための4条件

自宅での看取りを望む場合、何もせずに実現できるわけではありません。実現の可能性を高めるためには、次のような準備が重要になります。

① かかりつけ医・在宅医療チームの整備

もっとも重要なのが、日頃から相談できるかかりつけ医の存在です。定期的に自宅や施設を訪問してくれる訪問診療医がいれば、亡くなる直前まで継続的な診察を受けていることになり、死亡時にも医師の判断でスムーズに死亡診断書が交付されやすくなります。かかりつけ医との関係が、実は「どこでどう最期を迎えられるか」を左右する重要な要素なのです。

② 訪問看護・訪問介護の活用

訪問看護師は、症状の変化を医師に伝える窓口となり、家族だけでは対応しきれない医療的なケアを担ってくれます。訪問介護と組み合わせることで、家族の身体的・精神的な負担を分散させることができます。地域包括支援センターやケアマネジャーに相談し、利用できるサービスを早めに把握しておくとよいでしょう。

③ 家族の理解と協力

在宅での看取りは、同居家族だけでなく、離れて暮らす家族の理解も欠かせません。「なぜ入院させないのか」といった意見の相違が、後になって家族間の心のしこりになることもあります。本人の希望を家族全員で共有し、納得したうえで在宅療養を選ぶプロセスが重要です。

④ ACP(アドバンス・ケア・プランニング)で意思を伝えておく

ACPとは、将来の医療・ケアについて、本人が家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合っておくプロセスのことです。「延命治療をどこまで望むか」「最期はどこで迎えたいか」を、判断力があるうちに言葉にして共有しておくことで、いざというときに家族が迷わず対応できるようになります。


「どこで死にたいか」を家族と共有しておく重要性

ここまで見てきたように、自宅で最期を迎えることは、単に「家にいる」というだけでは実現しません。かかりつけ医との関係づくり、訪問医療の活用、家族との対話、そしてACPによる意思表示——これらすべてが揃って、初めて希望に近い形が実現しやすくなります。

こうした準備で意外と見落とされがちなのが、「意思を誰にどう伝えておくか」という情報伝達の部分です。頭の中で考えているだけでは、いざというときに家族が本人の意思を確認する術がありません。

デジタル終活サービス「DEN」は、こうした「どこで最期を迎えたいか」「延命治療についてどう考えているか」といった意思を、エンディングノートとしてデジタルで整理し、必要なタイミングで家族やかかりつけ医と共有できるようにするためのサービスです。紙のノートでは保管場所がわからなくなったり、更新が面倒で放置されてしまったりすることもありますが、デジタルであれば継続的に見直し、家族と情報を共有しやすくなります。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 自宅で家族が亡くなったら、まず何をすればよいですか?

明らかに死亡していると判断できる場合は、遺体を動かさずそのままにし、かかりつけ医がいれば主治医や訪問看護師に、いない場合は警察に連絡します。判断に迷う場合は、慌てず119番(救急)に相談してよいとされています。

Q2. 救急車を呼んだら、必ず警察も来るのですか?

必ずではありません。かかりつけ医が直前まで診察していた病気による死亡であれば、警察が介入しないケースも多くあります。ただし、死因がはっきりしない場合や、かかりつけ医がいない場合には、救急隊の判断で警察に連絡が入ることがあります。

Q3. 在宅死の割合は今後増えていくのでしょうか?

在宅医療の体制整備が進んでいることもあり、緩やかな増加傾向にあるとされています。ただし、病院死が全体の6割以上を占める状況が急に変わるわけではなく、地域による医療体制の差も大きいため、一概に「増える」とは言い切れません。

Q4. 自宅での看取りにはどのくらい費用がかかりますか?

訪問診療・訪問看護の利用料、介護保険サービスの自己負担分などが必要になります。医療保険・介護保険の適用範囲や自己負担割合は個々の状況によって異なるため、担当のケアマネジャーや訪問診療医療機関に具体的な見積もりを確認することをおすすめします。

Q5. かかりつけ医がいない場合、今から準備できますか?

可能です。地域の医師会や地域包括支援センターに相談すると、訪問診療に対応しているかかりつけ医を紹介してもらえる場合があります。元気なうちからかかりつけ医との関係を築いておくことが、将来の選択肢を広げることにつながります。

Q6. 家族に自宅で看取ってほしいと伝えるタイミングはいつがよいですか?

判断力があり、落ち着いて話し合える時期であれば早いに越したことはありません。健康診断の結果を話すタイミングや、エンディングノートを作成するタイミングなど、自然な話題の延長で切り出す方法もあります。


まとめ

自宅で最期を迎えたいと願う人は多い一方で、実際に自宅で亡くなる方は全体の約17%にとどまります。戦後間もない頃には80〜90%が自宅で亡くなっていたことを踏まえると、これは決して小さな変化ではありません。核家族化と医療の発展が病院死を「普通」にした一方で、近年は在宅医療の整備によって、再びわずかながら自宅死が増える兆しも見えています。

自宅で最期を迎えることには、かかりつけ医との関係づくりや、救急車を呼んだ際に警察が関与する可能性など、事前に知っておかないと戸惑う現実もあります。大切なのは、「自宅か病院か」を今すぐ決めることではなく、どちらを選んでも後悔が少ないように、本人の意思を家族や医療者と共有しておくことです。

自宅で亡くなった場合の具体的な連絡先や手続きの流れをさらに詳しく知りたい方は、公的な情報とあわせて確認しておくことをおすすめします。

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参考・出典

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