公開日: 2026-09-09 / 最終確認日: 2026-09-09
監修: 終活・相続専門チーム(DEN編集部)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。
個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士・不動産会社)にご相談ください。
記事内の情報は作成時点のものであり、法改正や市況の変化により内容が変更される場合があります。
親が亡くなった、あるいは施設に入った。そのあとに残された地方の実家を前にして、「どうすればいいのか」と立ち止まっている方は少なくありません。
売ろうと思えば、思い出が詰まった家を手放すことへの罪悪感が先に立つ。かといって残しておけば、固定資産税や管理の負担がのしかかり続ける。しかも調べてみると、地方の不動産は「思ったより安くしか売れない」という現実にもぶつかります。
本記事では、地方の実家の相続・売却をめぐる問題を、きれいごと抜きで整理します。
本記事でわかること:
– 実家を手放すことへの罪悪感や親族間の意見対立は、なぜ起きるのか
– 地方の実家が「思ったより安く」しか売れない理由
– 売却価格から解体費用・諸費用を引いた「手残り」の具体的な目安
– 遺品整理から相続人間の調整まで、見落とされがちな「労力」の重さ
– 放置し続けた場合に発生する固定資産税・特定空き家リスク
– 売却・賃貸・放置を比較したときに見えてくる、それぞれの向き不向き
– 賃貸活用を選ぶ場合の採算計算の考え方
「実家を売る」ことへの罪悪感——まず心理的な壁と向き合う
地方の実家をどうするか、という話し合いを難しくしているのは、実は制度や価格よりも「気持ち」の問題であることが少なくありません。
生まれ育った家、親が長年暮らした家には、金額に換算できない思い出が積み重なっています。それを手放すという決断には、「親不孝なのではないか」「思い出まで捨ててしまうのではないか」という罪悪感がついて回ります。
さらに、相続人が複数いる場合はやっかいです。「売って現金化したい」という人もいれば、「残しておきたい、たまには帰りたい」という人もいて、意見がまとまらないまま時間だけが過ぎていくケースが多く見られます。
こうした心理的なブレーキは、決して不合理なものではありません。長年住んだ家への愛着は自然な感情であり、否定されるべきものではないでしょう。大切なのは、感情と現実的な判断を切り分けて考える時間を、家族で意識的に持つことです。
不動産の分け方をめぐって話し合いが行き詰まったときには、「換価分割」という選択肢が提案されることもあります。実家を売却して現金化してから相続人間で分ける方法ですが、これにも独自の注意点があります。詳しくは換価分割とは?意味・メリット・問題点をわかりやすく解説で確認しておくと安心です。
地方の実家はなぜ「思ったより安く」しか売れないのか
心理的な整理がついたとしても、次に直面するのが「価格の現実」です。
総務省統計局の調査によれば、全国の空き家数は増加傾向が続いており、地方ほど住宅需要そのものが縮小しています。(参考:総務省統計局「住宅・土地統計調査」)人口が減り続ける地域では、「そもそも家を探している人が少ない」という根本的な問題があるのです。
さらに、築年数が古い建物ほど値段がつきにくくなります。木造住宅の場合、築20年前後で建物の資産価値はほぼゼロと評価されることが一般的で、売却価格は事実上「土地代のみ」になるケースが大半です。
ここでよく誤解されるのが、固定資産税評価額と実際の売却価格の関係です。固定資産税評価額は行政が課税のために算出した金額であり、実勢の売却価格とは必ずしも一致しません。地方では、固定資産税評価額よりもさらに安い価格でしか買い手がつかない、という事例も珍しくないのです。
「毎年これだけの税金を払っているのだから、それなりの値段で売れるはず」——そう考えていた方ほど、実際の査定額にショックを受けやすい傾向があります。まずは相場観を早めに知っておくことが、心の準備にもつながります。
売却の手残りをシミュレーション——売却価格-解体費用-諸費用
「売れさえすれば、まとまったお金が入る」というイメージを持っている方も多いのですが、実際に手元に残る金額は、想像より少なくなりがちです。理由は、売却価格から差し引かれる費用が意外に多いためです。
解体費用は100万〜300万円が相場とされ、これに諸費用が加わります。代表的な費用は次のとおりです。
- 解体費用:老朽化した建物を解体してから土地として売る場合、木造住宅で概ね100万〜300万円程度が相場とされています。構造や立地、廃材処理の状況によってはさらに高くなることもあります。
- 仲介手数料:不動産会社に売却を依頼した場合、売却価格に応じた仲介手数料が発生します。
- 測量費:地方の古い土地は境界が確定していないことも多く、測量が必要になるとその分費用がかかります。
- 登記費用:相続登記や抵当権抹消登記などの手続きに、登録免許税や司法書士報酬が発生します。
たとえば、売却価格が500万円だった土地付き建物で、解体費用に150万円、仲介手数料・測量費・登記費用などの諸費用に50万円ほどかかったとすると、手元に残るのは300万円程度という計算になります。「売れた」という事実だけを見ると成功のように思えても、実際の手残りを見て「思ったより少なかった」と感じる方は少なくありません。
事前にこうした費用の目安を把握しておけば、「売る・売らない」を判断する材料が明確になります。判断に迷う場合は、地元の不動産会社に概算査定を依頼し、解体費用は複数の解体業者から見積もりを取ることをおすすめします。
見落とされがちな「労力」の重さ
売却価格や費用と同じくらい、あるいはそれ以上に負担が大きいのが「労力」です。
まず着手しなければならないのが遺品整理です。長年暮らした家には家財道具が大量に残っており、仕分け・処分・清掃だけで数週間から数ヶ月かかることもあります。業者に依頼する場合は費用が発生し、自分たちで行う場合は時間と体力を要します。
相続人が複数いる場合は、誰がいつ実家に集まって作業するか、費用をどう分担するかといった調整も必要になります。特に、実家から離れた場所に住んでいる相続人がいる場合、交通費や宿泊費がかさみ、有給休暇を使って何度も現地に足を運ぶことになるケースもあります。
さらに、売却活動そのものにも時間がかかります。地方の物件は買い手が見つかりにくいため、売り出してから成約まで数ヶ月から1年以上を要することも珍しくありません。「早く手放してすっきりしたい」と思っていても、思うようには進まないのが実情です。
こうした労力の大きさを考えると、「売却して得られる金額」と「かかる時間・手間」のバランスを冷静に見積もっておくことが重要です。労力の割に手元に残るものが少ない、という現実を正直に受け止めたうえで、次の一手を考える必要があります。
「とりあえず放置」の代償——固定資産税と特定空き家リスク
判断に迷うあまり、「とりあえずそのままにしておく」という選択をする方も少なくありません。しかし、放置には確実にコストが発生します。
まず、実家を所有し続ける限り、固定資産税と都市計画税の納税義務は毎年続きます。誰も住んでいない家であっても、この負担がなくなることはありません。
さらに注意すべきなのが、「特定空き家」または「管理不全空き家」に指定されるリスクです。空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、倒壊の危険性や衛生上の問題があると自治体に判断され、必要な改善を求める「勧告」まで進んだ場合、住宅用地に適用されていた固定資産税の軽減措置が解除されます。その結果、税額が実質的に数倍に跳ね上がるケースがあります。(参考:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法」について)
加えて、放置期間が長引くほど建物の老朽化が進み、雨漏りやシロアリ被害などで資産価値がさらに下がっていきます。「いつか判断しよう」と先延ばしにするほど、選べる選択肢は狭まっていくのです。
放置は一見「何もしない」という安全な選択に見えますが、実際には時間とともに負担が積み上がっていく選択でもあります。
売却・賃貸・放置を徹底比較——実家の選択肢は3つある
ここまでの内容を踏まえ、実家の選択肢を「売却」「賃貸」「放置」の3つに整理して比較します。
| 項目 | 売却 | 賃貸 | 放置 |
|---|---|---|---|
| 手残り・収益 | まとまった額を一度に得られるが、解体費・諸費用で目減り | リフォーム次第で継続収入が得られる可能性あり | 収入なし、支出のみ発生 |
| 労力 | 遺品整理・売却活動に数ヶ月〜1年 | リフォーム・管理体制の構築が必要 | 短期的には少ないが管理義務は残る |
| 心理的負担 | 手放す罪悪感が大きい | 家を残しつつ活用できる安心感がある | 先送りによる不安が蓄積しやすい |
| リスク | 買い手が見つからない可能性 | 空室リスク・管理コスト | 特定空き家指定・資産価値の下落 |
| 向いているケース | 立地が悪く活用の見込みが薄い場合 | 立地・築年数・状態が一定水準にある場合 | 判断材料が揃うまでの一時的な猶予期間 |
こうして並べてみると、「放置」が最もリスクの高い選択であることが見えてきます。一方で、「売却」と「賃貸」のどちらが適しているかは、物件の立地・状態・家族の意向によって変わります。次の章では、賃貸という選択肢を具体的に見ていきます。
賃貸活用という第三の道——採算計算の考え方
立地条件や建物の状態が一定水準にある場合、売却よりも賃貸のほうが結果的に有利になることがあります。判断のポイントは、リフォーム費用と見込める賃料収入のバランスです。
考え方はシンプルです。
リフォーム費用 ÷ 想定月額賃料 = 投資回収にかかる月数(年数)
たとえば、リフォームに200万円をかけて、月額5万円で貸し出せる見込みがあるとすれば、単純計算で40ヶ月(約3年4ヶ月)で投資分を回収できる計算になります。これより早く回収できそうであれば、賃貸は有力な選択肢になり得ます。反対に、回収に10年以上かかるような試算になる場合は、売却のほうが合理的かもしれません。
ただし、この試算はあくまで単純化したものです。実際には、空室期間、修繕費、管理コスト、固定資産税などのランニングコストも加味する必要があります。特に実家が遠方にある場合、入居者対応や物件管理を自分たちで行うのは現実的ではありません。信頼できる管理会社に委託することで、遠方に住みながらでも安定した賃貸経営が可能になります。
こうした採算計算は専門知識が必要になるため、地元の不動産会社や賃貸管理会社に具体的なシミュレーションを依頼することをおすすめします。
民泊・シェアハウスという応用的な活用法
立地によっては、通常の賃貸以外の活用方法も選択肢に入ります。
観光地や大学が近い地域であれば、民泊やシェアハウスとしての運用が可能な場合があります。民泊は宿泊需要がある地域であれば通常の賃貸より高い収益が見込めることもありますが、旅館業法や住宅宿泊事業法(民泊新法)への対応、近隣住民との関係構築など、通常の賃貸にはない手間も発生します。
シェアハウスは、間取りが広い古い一軒家との相性がよく、初期投資を抑えながら複数人からの家賃収入を見込める形態です。ただし、こちらも運営ノウハウや入居者管理が必要になるため、実績のある運営会社と組むケースが一般的です。
いずれも「立地」と「地域の需要」が成立の前提条件になるため、まずは地元の不動産会社や民泊運営の実績がある事業者に相談し、実現可能性を確認することが第一歩になります。
エンディングノートで実家の情報と希望を残しておく
ここまで見てきたとおり、実家の売却・賃貸・放置には、それぞれメリットと負担があります。そして、こうした判断を相続が発生してから慌てて行うと、心理的な負担も労力もさらに大きくなりがちです。
だからこそ重要なのが、実家をどうしたいかという希望を、元気なうちから家族と共有しておくことです。「売ってほしいのか、残したいのか」「賃貸に出す場合、誰が管理を担うのか」といった意向を生前に明確にしておくだけで、相続人同士の意見対立や、判断に迷う時間を大きく減らすことができます。
デジタル終活を安全・簡単に進めたい方は、DENのモニター募集をご確認ください。実家の情報や処分の希望、不動産の権利関係といった重要な情報を暗号化して安全に記録し、家族に確実に伝えられる仕組みを提供しています。
モニター募集に申し込む
実家に関する手続きを進めるうえでは、相続登記の義務化についても押さえておく必要があります。2024年4月からは相続登記が法律上の義務となり、期限内に手続きをしないと過料の対象になる可能性があります。詳しくは相続登記の義務化完全ガイドをご確認ください。
また、実家を売却する場合には、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「空き家特例」を利用できる可能性があります。(参考:国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」)適用条件は細かく定められているため、詳細は相続した空き家を売却したら3,000万円控除?で確認しておくことをおすすめします。
デジタル終活を効率的に進めたい方は、DENのサービス紹介ページもあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 実家を売ることに罪悪感があります。売らない方がよいのでしょうか?
罪悪感を抱くこと自体は自然な感情であり、否定される必要はありません。ただし、感情面の整理と、税金・管理負担といった現実的な判断は分けて考えることが大切です。すぐに結論を出さず、家族で話し合う時間を確保したうえで、必要であれば専門家に相談しながら決めていくとよいでしょう。
Q2. 解体してから売るべきですか、それとも解体せずに売るべきですか?
物件の状態や立地によって最適な判断は異なります。古家付きのまま「土地」として売却し、買主側で解体してもらう方法もあります。どちらが有利かは地域の需要によって変わるため、地元の不動産会社に両方のパターンで査定を依頼することをおすすめします。
Q3. 相続人の間で意見がまとまりません。どうすればよいですか?
売却・賃貸・保有のいずれを望むかが相続人ごとに異なる場合、感情的な対立に発展しやすくなります。第三者である不動産会社や司法書士、弁護士を交えて話し合うことで、冷静に選択肢を整理できることがあります。換価分割など、公平に分配できる方法も検討材料になります。
Q4. 賃貸に出す場合、遠方に住んでいても管理できますか?
管理会社に委託することで、遠方に住みながらでも賃貸経営は可能です。入居者対応、家賃回収、修繕手配などを代行してもらえるため、まずは複数の管理会社から委託内容と手数料を比較することをおすすめします。
Q5. 実家を放置しているとどのくらいのリスクがありますか?
固定資産税・都市計画税の負担が継続するほか、自治体から「特定空き家」または「管理不全空き家」に指定され勧告を受けると、住宅用地の軽減措置が解除され、税負担が実質的に大きく増える可能性があります。また、老朽化が進むことで将来的な売却価格がさらに下がるリスクもあります。
Q6. 実家の処分について、誰に相談すればよいですか?
売却価格や市場動向については地元の不動産会社、税金や特例の適用については税理士、相続人間の権利関係や登記手続きについては司法書士や弁護士が、それぞれの専門領域になります。複数の専門家に相談しながら、総合的に判断することをおすすめします。
まとめ
地方の実家をどうするかという問題には、心理的な壁、価格の現実、労力の大きさという3つの負担が同時にのしかかります。「売れば楽になる」と単純に言い切れないのが実情であり、手残り額や労力を具体的に試算したうえで、後悔の少ない判断をすることが大切です。
立地や状態次第では、売却よりも賃貸のほうが合理的な場合もあります。いずれの選択をするにしても、一人で抱え込まず、不動産会社・税理士・司法書士といった専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
そして、こうした判断をできるだけスムーズに進めるためにも、実家についての希望や情報を元気なうちから記録し、家族と共有しておくことが、将来の負担を減らす最も確実な方法です。DENは、相続・遺言・終活に関する大切な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスとして、こうした「実家の希望」の記録もサポートします。


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