親や親族から実家のマンションを相続することになったものの、一戸建てとは勝手が違い、何から手をつければよいのか戸惑っている方も多いのではないでしょうか。
マンションの相続は、不動産を相続するという点では一戸建てと同じ流れをたどりますが、区分所有建物ならではの手続きや注意点があります。管理組合への連絡、修繕積立金の扱い、賃貸中の場合の対応など、マンション特有の論点を押さえておかないと、後になって思わぬ負担が発覚することもあります。
本記事では、マンション相続を一戸建てとの違いに注目しながら整理し、名義変更の進め方から見落としやすい盲点まで解説します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務相談ではありません。個別の手続きについては、司法書士・税理士など専門家にご相談ください。
- マンション相続で引き継ぐ3つの権利
- 一戸建てとの違い|区分所有特有の手続きとは
- 管理組合への連絡は必須|管理費・修繕積立金の支払い義務も承継
- 見落としがちな盲点|前所有者の滞納分も引き継ぐ
- 名義変更(相続登記)の進め方|専有部分と敷地利用権を同時に登記
- 賃貸中マンションを相続した場合|賃借人の権利・敷金返還義務も承継
- 2024年1月からの相続税評価改正|区分所有補正率とタワマン評価の変化
- 売却する場合の順番|相続登記→売却が必須
- 空き家マンションのリスク|住まなくても管理費・修繕積立金は発生し続ける
- 「マンションだけ相続放棄」はできないという誤解
- 手続き全体の流れまとめ
- マンション情報をエンディングノートに残す重要性
- よくある質問(FAQ)
- まとめ
マンション相続で引き継ぐ3つの権利
マンション(区分所有建物)を相続する場合、実は一つの不動産を相続するのではなく、次の3つの権利をセットで引き継ぐことになります。
| 権利 | 内容 |
|---|---|
| 専有部分 | 居住する部屋そのものの所有権 |
| 共用部分の共有持分 | エントランス・廊下・エレベーターなど共用施設の持分 |
| 敷地利用権 | マンションが建つ土地を利用する権利 |
一戸建ての相続では建物と土地をそれぞれ単独で所有しますが、マンションの場合はこの3つが一体として扱われ、専有部分だけを切り離して処分することは原則としてできません。相続の際は、この一体性を理解しておくことが最初のポイントになります。
一戸建てとの違い|区分所有特有の手続きとは
マンション相続の基本的な流れ(相続人調査、遺産分割協議、相続登記)は一戸建てと変わりません。一方で、区分所有建物であることに由来する、次のような独自の手続きが加わります。
- 管理組合への相続の連絡と、管理費・修繕積立金の引き継ぎ
- 専有部分と敷地利用権を一体として登記する必要がある点
- 賃貸に出している場合の、賃貸人としての地位の承継
- マンション特有の相続税評価方法(2024年改正)
これらは一戸建てにはない、あるいは扱いが異なる論点です。順を追って確認していきましょう。
管理組合への連絡は必須|管理費・修繕積立金の支払い義務も承継
マンションを相続したら、早めに管理組合(または管理会社)へ連絡し、所有者が変わったことを届け出る必要があります。管理組合は区分所有者名簿をもとに管理費・修繕積立金の請求や総会の案内を行っているため、連絡を怠ると請求先が不明確なまま滞納状態になってしまう可能性があります。
相続人は、被相続人が負っていた管理費・修繕積立金の支払い義務をそのまま引き継ぐことになります。これは一戸建てにはない、区分所有マンション特有の継続的な金銭負担です。
見落としがちな盲点|前所有者の滞納分も引き継ぐ
とくに見落とされやすいのが、相続する前の滞納分の扱いです。区分所有法第8条は、区分所有者が管理費等の債務を履行しない場合、その特定承継人(相続人を含む)に対しても債務の履行を請求できると定めています。
つまり、被相続人が生前に管理費や修繕積立金を滞納していた場合、その滞納額は相続人が引き継ぐことになります。相続する前に、管理組合または管理会社に滞納の有無を確認しておくことが重要です。滞納額が大きい場合は、相続するかどうかの判断材料にもなり得ます。
※滞納額の確認や請求への対応は個別の事情によって異なるため、金額が大きい場合や対応に迷う場合は司法書士・弁護士にご相談ください。
名義変更(相続登記)の進め方|専有部分と敷地利用権を同時に登記
マンションの名義変更(相続登記)では、専有部分の所有権と敷地利用権を一体として登記申請を行います。一般的には次のような流れで進みます。
- 相続人調査・相続財産調査:戸籍謄本の収集、マンションの登記事項証明書の確認
- 遺産分割協議:相続人全員でマンションの取得者を決定し、協議書を作成
- 必要書類の準備:戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書、登記事項証明書など
- 相続登記の申請:法務局へ専有部分・敷地利用権をあわせて申請
- 管理組合への届出:登記完了後、名義変更を管理組合へ報告
相続登記は2024年4月1日から申請が義務化されており、相続の開始を知った日から3年以内に申請しないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象となります。マンションもこの義務化の対象に含まれるため、忘れずに手続きを進める必要があります。
賃貸中マンションを相続した場合|賃借人の権利・敷金返還義務も承継
相続したマンションが第三者に賃貸中だった場合、賃貸人としての地位は相続人に自動的に承継されます。賃借人との賃貸借契約はそのまま有効に続き、相続人が新たな貸主として家賃を受け取る一方で、契約上の義務も引き継ぐことになります。
とくに注意したいのが敷金返還義務です。裁判例でも、相続により賃貸人たる地位を承継した者は、当然に敷金返還債務を承継するとされています。つまり、将来賃借人が退去する際には、相続人が敷金を返還する義務を負うことになります。
相続人が複数いる場合、家賃収入の分配や敷金の扱いについて、遺産分割協議の中であらかじめ取り決めておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。
2024年1月からの相続税評価改正|区分所有補正率とタワマン評価の変化
マンションの相続税評価は、2024年1月1日以後の相続・遺贈・贈与から評価方法が見直されました。国税庁の通達により、居住用の区分所有財産(分譲マンション)について「区分所有補正率」を用いた評価方法が導入されています。
改正の背景には、同じ床面積でも市場価格が大きく異なる高層階と低層階の評価額が、従来はほぼ同水準になってしまい、実勢価格との乖離を利用した節税策が広がっていたという事情があります。改正後は、階数や築年数などの要素を反映した補正率が評価額に乗じられる仕組みとなり、とくに高層マンション(タワーマンション)では評価額が従来より上昇する傾向にあります。
この改正は事業用テナント物件や、区分建物登記のない一棟所有の賃貸マンションには適用されません。対象となるかどうかは物件の性質によって異なるため、詳細は国税庁のNo.4667 居住用の区分所有財産の評価をご確認ください。
売却する場合の順番|相続登記→売却が必須
相続したマンションを売却する予定がある場合も、必ず先に相続登記を済ませてから売却手続きに進む必要があります。相続登記を経ずに被相続人名義のまま売却することはできません。
2024年4月の相続登記義務化により、この順番はこれまで以上に重要になっています。売却を急いでいる場合ほど、相続人調査や遺産分割協議に時間がかかることがあるため、マンションの活用方針が決まった段階で早めに手続きに着手することをおすすめします。制度の詳細は法務省の相続登記の申請義務化特設ページで確認できます。
空き家マンションのリスク|住まなくても管理費・修繕積立金は発生し続ける
相続したマンションを誰も使わずに空き家のまま放置していても、管理費・修繕積立金の支払い義務はなくなりません。居住の有無にかかわらず、区分所有者である限り継続的に費用が発生し続けます。
空き家状態が長引くほど、次のような負担が積み重なっていきます。
- 毎月の管理費・修繕積立金の負担
- 固定資産税・都市計画税の負担
- 老朽化による資産価値の低下
- 管理組合との連絡が滞ることによるトラブルリスク
活用予定がない場合は、賃貸に出す、売却する、相続人間で早めに方針を決めるなど、放置しない選択肢を検討することが望ましいでしょう。
「マンションだけ相続放棄」はできないという誤解
「管理費の負担が重いマンションだけ相続放棄したい」と考える方もいますが、相続放棄は特定の財産だけを選んで放棄することはできません。相続放棄をすると、預貯金や他の不動産なども含めて、すべての相続財産を一括して放棄することになります。
マンションの管理費負担が重いことを理由に一部だけ放棄したい場合でも、他にプラスの財産があるなら、相続放棄によってそれも失うことになる点に注意が必要です。相続財産全体を踏まえた判断が必要なため、迷う場合は早めに司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
手続き全体の流れまとめ
マンション相続の手続きを時系列で整理すると、次のような流れになります。
- 相続人調査・相続財産調査(マンションの権利関係、滞納の有無を含む)
- 遺産分割協議(取得者の決定、賃貸中の場合は家賃・敷金の扱いも含める)
- 相続登記(専有部分・敷地利用権を一体で申請、3年以内の義務)
- 管理組合への連絡(名義変更の届出、管理費・修繕積立金の引き継ぎ確認)
- 活用方針の決定(居住・賃貸継続・売却のいずれか)
この流れの中でも、遺産分割協議の進め方に迷うケースは少なくありません。協議書の具体的な書き方については、遺産分割協議書の書き方完全ガイド|必要事項・雛形・実印まで解説もあわせてご覧ください。相続登記の義務化については、相続登記の義務化完全ガイド|2024年4月スタート、期限・罰則・過去分適用までで詳しく解説しています。
マンション情報をエンディングノートに残す重要性
マンション相続で相続人が困りやすいのは、「どの管理組合・管理会社に連絡すればよいかわからない」「修繕積立金がいくら積み立てられているか不明」といった情報の空白です。
管理組合や管理会社の連絡先、管理費・修繕積立金の金額と支払い状況、賃貸中であれば賃借人との契約内容などを、生前のうちにエンディングノートへ記録しておくことで、相続人はスムーズに管理組合への連絡や名義変更を進められます。
デジタルでこうした情報を安全に管理し、必要なときに家族へ引き継げる仕組みに関心のある方は、DENのモニター募集もご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. マンションの相続登記は一戸建てと手続きが違いますか?
A. 基本的な申請の流れは同じですが、マンションでは専有部分と敷地利用権を一体として登記する点が異なります。必要書類も一戸建てとほぼ共通ですが、区分所有建物の登記事項証明書の確認が必要です。
Q2. 管理組合への連絡はいつまでに行えばよいですか?
A. 法律上の明確な期限は定められていませんが、管理費の請求先を明確にするためにも、相続が発生したらできるだけ早く連絡することをおすすめします。
Q3. 修繕積立金の滞納があるかどうかは、どこで確認できますか?
A. 管理組合または管理会社に問い合わせることで、滞納の有無や金額を確認できます。相続するかどうかを判断する材料にもなるため、早い段階での確認が望ましいです。
Q4. 賃貸中のマンションを相続したら、すぐに家賃を受け取れますか?
A. 賃貸人の地位は相続開始と同時に相続人へ承継されるため、遺産分割協議が完了する前でも、法定相続分に応じて家賃を受け取る権利が発生する場合があります。詳細な取り扱いは個別の事情によるため、税理士・弁護士にご確認ください。
Q5. マンションの相続税評価はどのように変わりましたか?
A. 2024年1月以降の相続・遺贈・贈与から、区分所有補正率を用いた評価方法が導入され、とくに高層階のマンションで評価額が上昇する傾向にあります。詳細は国税庁の公式情報をご確認ください。
Q6. 管理費の滞納が多いマンションだけ相続放棄できますか?
A. できません。相続放棄は特定の財産だけを選んで行うことができず、預貯金や他の不動産も含めてすべての相続財産を一括して放棄することになります。
まとめ
マンションの相続は、一戸建てと同様に相続人調査・遺産分割協議・相続登記という基本的な流れをたどりますが、専有部分と敷地利用権の一体性、管理組合への連絡、修繕積立金の滞納引き継ぎ(区分所有法第8条)、賃貸中の場合の敷金返還義務など、区分所有建物ならではの論点があります。
2024年の相続税評価改正や相続登記義務化など、制度面の変更も踏まえて手続きを進める必要があります。判断に迷う場合は自己判断で進めず、司法書士・税理士など専門家へ早めに相談することをおすすめします。
なお、遺産分割協議の進め方については遺産分割協議書の書き方完全ガイドの記事も参考にしてください。
区分所有建物の評価方法については国税庁の「居住用の区分所有財産の評価について」(法令解釈通達)の趣旨について、相続登記義務化の詳細については法務省の相続登記の申請義務化特設ページで最新の公式情報をご確認いただけます。
※本記事は2026年8月時点の一般的な情報をもとに作成した情報提供であり、法律・税務相談ではありません。制度は改正される可能性があるため、実際の手続きにあたっては司法書士・税理士など専門家に個別にご確認ください。デジタル終活の準備を進めたい方は、DENのモニター募集・事前予約フォームからお気軽にご相談ください。


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