年金の繰り上げ・繰り下げ、どちらが得?損益分岐点を年齢別に徹底解説【2025年最新版】
「年金は65歳からもらうのが普通」と思っていませんか。実は老齢年金は、60歳から75歳までの間で自分の希望するタイミングを選んで受け取り始めることができます。早く受け取れば毎月の金額は減り、遅らせれば毎月の金額は増える——これが「繰り上げ受給」と「繰り下げ受給」の基本的な仕組みです。
「結局、何歳からもらうのが一番得なのか」という疑問を持つ方は多いはずです。本記事では、繰り上げ・繰り下げそれぞれの仕組みと、具体的な年齢で示した損益分岐点、そして見落としがちな注意点まで、実用的な数字とあわせて解説します。本記事で理解できることは、以下の3点です。
- 繰り上げ受給・繰り下げ受給の仕組みと、それぞれの減額率・増額率
- 「何歳まで生きたら得になるか」を具体的な年齢で示した損益分岐点の目安
- 繰り上げ・繰り下げそれぞれに向いている人の特徴と、見落としがちなデメリット
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、年金・税務・社会保険に関する個別の助言ではありません。年金の受給開始時期は、健康状態・就労状況・家族構成・資産状況など個人の事情によって最適な選択が大きく異なります。実際の受給額のシミュレーションや手続きについては、お近くの年金事務所、または社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー(FP)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。最新の制度内容は日本年金機構・厚生労働省の公式情報でご確認ください。
年金は60〜75歳の間で自由に選べる|繰り上げ・繰り下げの基本の仕組み
老齢年金は、原則として65歳から受給が始まります。ただし本人の希望により、60歳から64歳までの間に受給を開始する「繰り上げ受給」、66歳から75歳までの間に受給を開始する「繰り下げ受給」を選ぶことができます。
繰り上げ受給:1ヶ月早めるごとに0.4%減額
繰り上げ受給を選ぶと、本来65歳から受け取るはずだった年金額が、1ヶ月早めるごとに0.4%ずつ減額されます。60歳0ヶ月まで繰り上げた場合、60ヶ月×0.4%で最大24%の減額となり、その減額された金額が生涯続きます。
なお、2022年4月の制度改正前は、この減額率が1ヶ月あたり0.5%でした。平均寿命の延伸を踏まえ、繰り上げても極端に不利になりすぎないよう0.4%に緩和された経緯があります。ただし、2022年3月以前に60歳に到達していた方には、改正前の減額率が適用される場合があるため注意が必要です。
繰り下げ受給:1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額
繰り下げ受給を選ぶと、1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増額されます。75歳0ヶ月まで繰り下げた場合、120ヶ月×0.7%で最大84%の増額となります。2022年4月の改正で、繰り下げの上限年齢がそれまでの70歳から75歳に引き上げられ、最大増額率も42%から84%へと拡大しました。
増額された年金額は、その後も生涯にわたって受け取ることができます。
【最大の疑問】結局、何歳まで生きたら得になるのか|年齢別の損益分岐点
繰り上げ・繰り下げを検討するうえで最も気になるのが、「65歳から受け取る場合と比べて、何歳まで生きれば得になるのか」という損益分岐点です。額面(税・社会保険料を考慮する前の金額)ベースでの累計受給額を比較すると、おおむね次のような目安になります。
| 受給開始年齢 | 65歳受給との増減率 | 65歳受給との損益分岐点(目安) |
|---|---|---|
| 60歳(繰り上げ) | -24% | 約76〜77歳(これより長生きすると65歳受給の方が得) |
| 65歳(基準) | ±0% | — |
| 70歳(繰り下げ) | +42% | 約81〜82歳(これより長生きすると70歳受給の方が得) |
| 75歳(繰り下げ) | +84% | 約86歳(これより長生きすると75歳受給の方が得) |
つまり、60歳から繰り上げて受給した場合、76〜77歳より前に受給を終える(あるいはその年齢までの累計で判断する)なら繰り上げの方が受取総額は多くなりますが、それより長生きすると65歳から受け取っていた方が総額は多くなります。反対に、70歳や75歳まで繰り下げた場合は、その分岐点となる年齢より長生きするほど、繰り下げた方が総額で有利になっていきます。
平均寿命との比較
厚生労働省の発表によると、2024年の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.13歳です(厚生労働省「簡易生命表」)。この数字と照らし合わせると、70歳への繰り下げ(損益分岐点は81〜82歳ごろ)は男性の平均寿命とほぼ同水準、女性の平均寿命はこれを上回っています。75歳への繰り下げ(損益分岐点は86歳ごろ)についても、女性の平均寿命に近い水準です。
ただし、平均寿命はあくまで集団全体の平均値であり、個人がどこまで生きるかを保証するものではありません。ご自身やご家族の健康状態を踏まえて判断することが大切です。健康な状態でどれだけ長く過ごせるかを示す「健康寿命」との違いについては「健康寿命と平均寿命の違いは?縮めないための生活習慣」でも詳しく解説しています。
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繰り上げ受給が向いている人・繰り下げ受給が向いている人
損益分岐点だけで判断するのではなく、ご自身の状況に照らして考えることが大切です。
繰り上げ受給が向いている人
- 健康面に不安があり、長期間の受給をあまり見込めないと感じている人
- 早い段階でまとまった生活資金が必要な事情がある人
- 何らかの事情で60歳以降働くことが難しい人
繰り下げ受給が向いている人
- 健康状態が良好で、長生きする可能性が高いと感じている人
- 65歳以降も就労収入や十分な資産があり、年金をすぐに使う必要がない人
- 年金額を増やしたうえで、将来的な相続財産として位置づけたいと考えている人
見落としがちな繰り上げ受給のデメリット
繰り上げ受給には、減額以外にも注意すべき点があります。
- 在職老齢年金との調整:60歳以降も厚生年金に加入しながら働く場合、給与と年金の合計額に応じて年金の一部または全部が支給停止になることがあります。繰り上げても実際には思ったほど受け取れないケースがあります
- 障害年金への影響:繰り上げ受給を開始した後に障害の状態になっても、原則として障害基礎年金を新たに請求することができなくなります。将来のリスクに備える選択肢が狭まる点は見落とされがちです
見落としがちな繰り下げ受給のデメリット
繰り下げ受給についても、増額分がそのまま手取りになるとは限りません。
- 加給年金の支給停止:配偶者や子がいる場合に上乗せされる加給年金は、繰り下げ待機中は支給されません。繰り下げによる増額分が、停止された加給年金の総額を下回ってしまうケースもあります
- 税金・社会保険料の増加:年金額が増えると、所得税・住民税に加え、国民健康保険料や介護保険料の負担も増える場合があります。額面では84%増えていても、手取りベースで見た損益分岐点は額面より後ろ倒しになる点に注意が必要です
- 待機中に死亡した場合のリスク:繰り下げ待機中に本人が亡くなった場合、遺族が請求できるのは増額される前の本来の年金額が基準となります。繰り下げによる増額メリットを、本人も遺族も十分に受け取れない可能性がある点は、事前に理解しておくべき重要な注意点です
「どちらが得か」ではなく「自分に合った選択」を考える
ここまで見てきたように、繰り上げ・繰り下げのどちらが得かは、将来の寿命という誰にも確定できない要素に左右されます。大切なのは「得か損か」を追い求めることよりも、ご自身の健康状態・就労予定・資産状況・家族構成を踏まえて、納得できる選択をすることです。
老後の家計全体を見直す中で受給開始時期を検討したい方は「老後の家計見直しチェックリスト|固定費・収入から始める老後資金対策」もあわせてご覧ください。また、繰り下げ待機中に万一のことがあった場合に関わる遺族年金については「遺族年金はいくらもらえる?受給条件・金額・手続きを徹底解説」で詳しく解説しています。
受給開始時期の検討経緯をエンディングノートに残す重要性
年金の受給開始時期は、一度選択すると原則として後から変更できません。DENのデジタルエンディングノートを使えば、「なぜその受給開始時期を選んだのか」という検討経緯や、年金証書・年金事務所とのやり取りの記録を、暗号化して安全に残しておくことができます。ご自身の判断の記録を残しておくことは、将来ご家族が状況を理解するうえでも助けになります。
DENは、相続・遺言・終活に関する大切な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。現在、サービス開始に向けてモニターを募集しています。
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よくある質問
Q1. 繰り上げ受給を選んだ後に、やっぱり65歳から受け取りたいと思ったら変更できますか?
A. 繰り上げ受給の請求は一度行うと取り消すことができません。減額された年金額は生涯続くため、請求前に十分検討することが重要です。
Q2. 繰り下げ受給の待機中は、年金を一切受け取れないのですか?
A. 繰り下げを希望する場合、待機期間中は原則として年金を受け取りません。ただし、老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げを選択することもできるため、片方だけを先に受け取るといった柔軟な組み合わせも可能です。
Q3. 繰り上げ・繰り下げのどちらか一方しか選べないのですか?
A. 老齢基礎年金と老齢厚生年金をそれぞれ別のタイミングで繰り上げ・繰り下げすることも可能です。組み合わせ方によって受給額が変わるため、事前のシミュレーションをおすすめします。
Q4. 損益分岐点を計算するときに、税金や社会保険料は考慮されていますか?
A. 本記事で示した損益分岐点は、税金・社会保険料を考慮する前の額面ベースの目安です。実際の手取り額は、他の所得や控除の状況によって個人差が大きいため、正確な試算には社会保険労務士やファイナンシャルプランナーへの相談をおすすめします。
Q5. 繰り下げ受給の途中で、増額前の年金をさかのぼって一括で受け取ることはできますか?
A. 繰り下げ待機中に、増額を諦めて本来の年金額をさかのぼって受け取る「特例的な取扱い」が用意されている場合があります。手続きの詳細は年金事務所や日本年金機構の公式情報でご確認ください。
Q6. 自分にとって繰り上げ・繰り下げのどちらが向いているか、誰に相談すればよいですか?
A. 一般的な制度の仕組みは年金事務所でも確認できますが、ご自身の資産状況や税金への影響まで含めた総合的な判断には、社会保険労務士やファイナンシャルプランナー(FP)への相談が有効です。
まとめ|損益分岐点は目安、選択の軸は「自分の状況」
- 老齢年金は60歳から75歳の間で受給開始時期を選択でき、繰り上げは1ヶ月あたり0.4%減額、繰り下げは1ヶ月あたり0.7%増額される仕組みです
- 額面ベースの損益分岐点は、60歳繰り上げで約76〜77歳、70歳繰り下げで約81〜82歳、75歳繰り下げで約86歳が目安です
- 繰り上げには在職老齢年金との調整や障害年金への影響、繰り下げには加給年金の停止・税や社会保険料の増加・待機中死亡時のリスクなど、見落としがちな注意点があります
- 「どちらが得か」を寿命という不確定な要素だけで判断するのではなく、健康状態・就労状況・家族構成といったご自身の事情を踏まえて選ぶことが大切です
- 最終的な判断や手続きに迷った場合は、年金事務所への相談に加え、社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーへの相談も検討してください
更新日:2026年9月14日(最終確認日:2026年9月14日)
参考:日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/)、厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/)の公表情報を参照


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