公開日: 2026-08-20 / 最終確認日: 2026-08-20
監修: 終活・相続専門チーム(DEN編集部)
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。
個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。
記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。
「実家の土地、まだ亡くなった父の名義のままだった」
相続の手続きが一段落した後、こうした事実に気づく方は少なくありません。
これまでは「名義変更は義務ではない」として放置されるケースが多くありましたが、2024年4月1日から状況が大きく変わりました。相続登記が法律上の義務になったのです。
しかもこの義務化は、これから発生する相続だけでなく、すでに終わっている過去の相続にも適用されます。
「うちは関係ない」と思っていても、実は期限が迫っているケースが少なくありません。
本記事でわかること:
– 相続登記義務化の3つの重要ポイント(期限・罰則・過去分適用)
– なぜ相続登記が義務化されたのか、その背景
– 過去の相続にも適用される「2027年3月31日」という期限の正確な意味
– 遺産分割が終わらないときに使える「相続人申告登記」という救済策
– 必要書類と費用(登録免許税・司法書士報酬)の目安
– 自分で手続きする場合・専門家に依頼すべき場合の判断基準
相続登記義務化、3つの重要ポイント
まず、相続登記義務化の全体像を3つのポイントに整理します。
① 期限:相続を知った日から3年以内
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請が義務付けられました。
② 罰則:正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料
期限内に申請しなかった場合、正当な理由がない限り10万円以下の過料の対象になります。
③ 過去分にも適用:2027年3月31日が実質的な期限
2024年4月1日より前に発生した相続も、この義務化の対象です。
過去の相続については、後述するとおり2027年3月31日が申請の期限となります。
この3点を押さえておけば、まず何をすべきかの見当がつきます。以降で、それぞれを詳しく見ていきます。
相続登記以外にも、相続手続きには法律で定められた期限がいくつも存在します。全体像は相続手続きの期限一覧でまとめて確認しておくと安心です。
なぜ義務化されたのか|全国約410万haの所有者不明土地問題
相続登記が義務化された背景には、深刻な社会問題があります。
相続が発生しても登記名義が変更されないまま放置されると、その土地の所有者が誰なのかがわからなくなってしまいます。
これが所有者不明土地と呼ばれる問題です。
国土交通省の調査によれば、こうした所有者不明土地は全国で約410万haに及ぶと推計されており、これは九州本島の面積に匹敵する規模です。
所有者不明土地は、公共事業や災害復旧の妨げになるほか、放置された空き家・空き地の管理不全にもつながります。
法務省はこの問題を解消するため、不動産登記法を改正し、相続登記の申請を義務化しました。
(参考:法務省「相続登記の申請義務化について」)
期限はいつまで?「知った日から3年以内」の考え方
相続登記の申請期限は、「不動産を相続で取得したことを知った日」から3年以内と定められています。
ここで重要なのは、起算点が「相続が発生した日(死亡日)」ではなく、「自分が不動産を相続したと知った日」である点です。
- 遺産分割協議がすぐにまとまった場合 → 協議が成立し、不動産の取得が確定した日から3年以内
- 相続人が複数いて、誰がその不動産を取得するかまだ決まっていない場合 → 後述の「相続人申告登記」で当面の義務を果たす選択肢がある
「遺産分割が終わっていないから、まだ登記できない」という状況は珍しくありません。
そのようなケースに対応するために新設されたのが、後述する相続人申告登記です。
【最重要】過去の相続も対象|2027年3月31日が期限
相続登記義務化で特に見落とされがちなのが、過去分への適用です。
2024年4月1日より前に発生していた相続についても、今回の義務化の対象になります。
この場合の起算点は、「不動産の取得を知った日」と「2024年4月1日」のいずれか遅い方です。
- すでに相続が発生し、不動産の取得を知っていた場合 → 2024年4月1日が起算日となり、そこから3年以内、つまり2027年3月31日が申請期限
- 施行後に相続の事実を知った場合 → その日から3年以内
つまり、何年も前に亡くなった親の名義のまま放置している不動産があるなら、2027年3月31日までに相続登記(または後述の相続人申告登記)を済ませる必要があるということです。
「うちは何十年も前の相続だから関係ない」というのは誤解です。
むしろ過去の相続ほど、相続人の人数が増えて手続きが複雑になっているケースが多く、早めの着手が重要になります。
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期限に間に合わないとどうなる?|10万円以下の過料
期限内に相続登記(または相続人申告登記)を申請しなかった場合、法務局から「申請義務があること」の催告を受け、それでも正当な理由なく応じなければ、10万円以下の過料の対象となります。
(参考:法務省「相続登記の申請義務化特設ページ」)
「正当な理由」として認められる可能性があるものには、以下のようなケースが挙げられています。
- 相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の収集や他の相続人の把握に時間を要する場合
- 遺言の有効性や遺産の範囲が争われており、訴訟が係属している場合
- 申請義務者に重病等の事情がある場合
- 経済的に困窮しており、登記に要する費用を負担する能力がない場合
ただし、何が「正当な理由」に当たるかは個別の事情によって判断が分かれます。
不安がある場合は、早めに司法書士に相談することをおすすめします。
遺産分割が終わらないときの救済策「相続人申告登記」
「相続人同士の話し合いがまとまらず、誰が不動産を取得するか決まっていない」——このようなケースのために新設されたのが、相続人申告登記です。
相続人申告登記とは
相続人申告登記は、正式な相続登記(所有権移転登記)とは異なり、「自分がこの不動産の相続人である」ことを法務局に申し出るだけの簡易な制度です。
この申出をすれば、遺産分割協議が整っていなくても、相続登記の申請義務を履行したとみなされ、過料の対象を回避できます。
相続人申告登記のメリット
- 戸籍謄本等の必要書類が正式な相続登記より簡略化されている
- 登録免許税がかからない
- 相続人が単独で申し出ることができる(他の相続人の関与が不要)
相続人申告登記の注意点
- あくまで「義務を一時的に履行した」状態であり、不動産の所有権自体は移転していない
- 遺産分割協議が成立したら、その日から3年以内に改めて正式な相続登記の申請が必要
- 将来的にその不動産を売却・担保設定する際には、正式な相続登記が必須になる
つまり相続人申告登記は「時間を稼ぐための制度」であり、最終的には正式な相続登記が必要になる点に注意してください。
遺産分割協議がまとまった際の協議書の作成方法は、遺産分割協議書の書き方完全ガイドで詳しく解説しています。
相続登記に必要な書類一覧
正式な相続登記の申請には、主に以下の書類が必要です(遺産分割協議による場合)。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで) | 相続人の範囲を確定するため |
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍附票) | 登記記録上の住所とのつながりを証明 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 相続人であることの証明 |
| 相続人の住民票 | 新たに登記名義人となる人の住所証明 |
| 遺産分割協議書(実印押印) | 誰がどの不動産を取得するかの合意内容 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 協議書の実印を証明するため |
| 固定資産評価証明書 | 登録免許税の計算根拠 |
| 対象不動産の登記事項証明書 | 現在の登記内容の確認 |
戸籍謄本の収集は、被相続人の本籍地が転居のたびに変わっている場合、複数の市区町村役場に請求する必要があり、想像以上に時間がかかることがあります。
早めに着手することをおすすめします。
相続登記にかかる費用|登録免許税と司法書士報酬
相続登記の費用は、大きく「登録免許税」と「司法書士報酬(依頼する場合)」の2つに分かれます。
登録免許税の計算方法
登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。
| 固定資産税評価額 | 登録免許税(0.4%) |
|---|---|
| 500万円 | 2万円 |
| 1,000万円 | 4万円 |
| 2,000万円 | 8万円 |
| 3,000万円 | 12万円 |
| 5,000万円 | 20万円 |
なお、不動産の価額が100万円以下の土地については、2027年3月31日まで登録免免税措置の対象となる場合があります。
(参考:法務局「相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ」)
司法書士報酬の相場
司法書士に依頼する場合の報酬は、一般的に5万円〜15万円程度が相場です。
不動産の数が多い場合や、相続人の人数が多く戸籍収集に手間がかかる場合は、報酬が上振れする傾向があります。
登録免許税と司法書士報酬を合わせると、総額で10万円〜20万円程度になるケースが多いといえます。
自分でできる場合・司法書士に依頼すべき場合
相続登記は、必要書類さえ揃えば自分で申請することも可能です。
以下のチェックリストを参考に、判断してみてください。
自分での申請が向いているケース
– 相続人が1〜2人と少なく、話し合いがまとまっている
– 対象不動産が1件のみで、権利関係がシンプル
– 平日に法務局へ出向く時間的余裕がある
– 戸籍謄本の収集や書類作成に時間をかけられる
司法書士への依頼が向いているケース
– 相続人の人数が多く、連絡や合意形成が難しい
– 不動産が複数の市区町村にまたがっている
– 遺産分割協議がまとまっておらず、相続人申告登記との使い分けが必要
– 平日に時間が取れない、法的な手続きに不安がある
– 過去の相続で、名義が祖父母の代のまま放置されているなど権利関係が複雑
不安な点が少しでもある場合は、司法書士に相談することを強くおすすめします。
特に相続人が多数にわたる場合や、権利関係が複雑な場合は、自分で進めるとかえって時間と手間がかかることがあります。
不要な土地は「相続土地国庫帰属制度」も検討を
相続した土地が遠方にあり管理が難しい、活用の見込みがないといった場合には、相続登記を済ませたうえで、その土地を手放す選択肢も検討できます。
相続土地国庫帰属制度は、一定の要件を満たした土地を国に引き取ってもらえる制度です。
ただし、審査基準が厳しく、負担金の納付も必要になるため、「誰でも簡単に使える」制度ではありません。
制度の具体的な流れや注意点は、相続土地国庫帰属制度の手続きの流れとやり方で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
エンディングノートに不動産・登記状況を記録しておく重要性
相続登記の義務化により、「どの不動産が誰の名義になっているか」を家族が把握しておくことの重要性が高まっています。
- 保有している不動産の一覧(所在地・固定資産税評価額の目安)
- 登記名義人と、名義変更が済んでいるかどうかの状況
- 固定資産税の納税通知書の保管場所
- 依頼している司法書士や税理士の連絡先
これらをエンディングノートに記録しておけば、相続が発生した際に相続人がすぐに状況を把握でき、期限内の手続きがスムーズになります。
特に過去の相続で名義変更が放置されている不動産がある場合は、その事実を書き残しておくだけでも、次の世代への大きな助けになります。
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よくある質問
Q1. 相続登記の期限を1日でも過ぎたら、必ず過料が科されますか?
期限を過ぎたら即座に過料が科されるわけではありません。法務局からの催告に応じずに正当な理由なく放置した場合に過料の対象となります。ただし、期限を守ることが原則ですので、早めの対応をおすすめします。
Q2. 2024年4月1日より前に相続が発生し、すでに遺産分割も終わっている場合はどうすればいいですか?
遺産分割が終わっていて不動産の取得者が確定している場合は、通常の相続登記を申請してください。起算日は「2024年4月1日」または「取得を知った日」の遅い方となるため、多くのケースで2027年3月31日が期限になります。
Q3. 相続人申告登記をすれば、正式な相続登記は不要になりますか?
いいえ、不要にはなりません。相続人申告登記はあくまで一時的な義務履行の手段です。遺産分割協議が成立したら、その日から3年以内に正式な相続登記の申請が必要です。
Q4. 相続する不動産が遠方にあり、法務局に行けません。オンラインで申請できますか?
オンラインでの登記申請(登記・供託オンライン申請システム)が利用可能です。ただし、必要書類の収集や記載内容の確認には専門知識が求められるため、遠方の不動産については司法書士への依頼を検討することをおすすめします。
Q5. 相続登記をしないまま放置すると、過料以外にどんなリスクがありますか?
不動産の売却や担保設定ができない、相続人がさらに死亡して権利関係がより複雑になる(数次相続)、固定資産税の負担者が曖昧になるといったリスクがあります。放置期間が長いほど、後の手続きが困難になる傾向があります。
Q6. 相続登記の相談はどこにすればいいですか?
不動産の名義変更に関する専門家は司法書士です。お住まいの地域の司法書士会や法務局の登記相談窓口で相談先を紹介してもらうこともできます。複雑なケースほど早めの相談が重要です。
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まとめ
相続登記義務化のポイントを、改めて整理します。
- 期限:不動産の取得を知った日から3年以内
- 過去分にも適用:2024年4月1日より前の相続も対象で、多くの場合2027年3月31日が期限
- 罰則:正当な理由なく申請しないと10万円以下の過料
- 救済策:遺産分割が未了でも「相続人申告登記」で当面の義務を履行できる
「うちは関係ない」と思わず、まずは対象となる不動産の登記名義を確認することから始めてみてください。
権利関係が複雑な場合や、期限までに時間の余裕がない場合は、早めに司法書士へ相談することをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。
個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。
記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。


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