高齢者のインターネット利用、知っておきたい5つのリスクと安全な付き合い方|家族で今日からできる対策ガイド

デジタル遺産

公開日:2026年8月15日 / 最終確認日:2026年8月15日
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カテゴリ:デジタル遺産

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・司法書士・消費生活相談員)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。


「親がスマホでLINEを使い始めた」「祖父母がネットショッピングを楽しんでいる」——そんな話を耳にする機会が、この数年で一気に増えたのではないでしょうか。

総務省の令和7年版情報通信白書によれば、65歳以上のインターネット利用率は60.8%に達し、70代は69.8%、80代以上でも36.4%と、2020年から10.8ポイントも伸びています。高齢者にとってインターネットは、もはや一部の人だけのものではなく、日常生活の一部になりつつあるのです。

一方で、この急速な普及に比例するように、高齢者を狙ったネット詐欺の被害も広がっています。警察庁の集計では、2025年上半期の特殊詐欺の認知件数は13,213件(前年同期比+47.5%)、被害額は597.3億円(同+162.1%)にのぼり、預貯金詐欺・還付金詐欺では被害者の9割以上を高齢者が占めています。

大切なのは「インターネットを怖がって使わない」ことではありません。リスクの正体を知り、正しい付き合い方を身につければ、インターネットは高齢期の暮らしを豊かにする心強い味方になります。本記事では、高齢者が特に狙われやすい5つのリスクと、今日から実践できる安全なネット利用の5つのルールを、家族の視点も交えて解説します。

高齢者のインターネット利用は今どれくらい進んでいるか

まずは、高齢者のインターネット利用がどれほど広がっているかを確認しましょう。

総務省「令和7年版情報通信白書」によると、国民全体のインターネット利用率は85.6%である一方、65歳以上は60.8%となっています。年代別に見ると、70代は69.8%(前年から+7.4ポイント)、80代以上は36.4%(2020年比+10.8ポイント)と、いずれも高い伸び率を記録しました。

スマートフォンの保有率も同様に伸びており、65歳以上のスマホ保有率は2024年時点で58.2%に達しています。2014年の5.8%からわずか10年で10倍に増加した計算です。

背景には、家族との連絡手段としてのLINEの普及や、通販・動画配信・オンライン診療など生活インフラのデジタル化があります。インターネットは、高齢者にとって「使うかどうか選べるもの」から「使わざるを得ないもの」へと変わりつつあるといえるでしょう。

こうした急速な普及の裏側で、高齢者を標的にした詐欺やトラブルも増加しています。次の章では、特に注意したい5つのリスクを具体的に見ていきましょう。

高齢者が特に狙われやすい5つのネットリスク

インターネット上のリスクは数多くありますが、なかでも高齢者が標的にされやすいものを5つに整理しました。それぞれの手口の具体例とあわせて確認しましょう。

①フィッシング詐欺(偽メール・偽サイト)

宅配便業者や銀行、Amazonなどの実在する企業を装ったメール・SMSを送りつけ、偽サイトに誘導してID・パスワードやクレジットカード情報を盗み取る手口です。フィッシング対策協議会によれば、2025年11月の報告件数は197,228件にのぼり、Amazon・Apple・ANA・ETC利用照会サービスを騙るものが全体の約3割を占めています。

※以下は理解を助けるための構成例です。

ある70代の女性のもとに「お荷物のお届けにあがりましたが、ご不在でした」というSMSが届きました。記載されたリンクをタップすると、宅配業者そっくりの画面が表示され、再配達の手続きのために氏名・住所・クレジットカード番号を入力してしまいました。数日後、身に覚えのない請求がカード会社から届いて初めて、被害に気づいたといいます。

本物の宅配業者や金融機関は、SMSやメールのリンクから個人情報やカード情報の入力を求めることは基本的にありません。少しでも不審に感じたら、リンクはタップせず、公式サイトやアプリから直接確認する習慣をつけましょう。

②ワンクリック詐欺・架空請求

動画サイトや広告をクリックしただけで「登録が完了しました」「料金が発生しました」といった画面が表示され、高額な支払いを求めてくる手口です。実際には契約は成立しておらず、支払う法的義務はないケースがほとんどですが、慌てて連絡先に電話をかけてしまい、かえって個人情報を渡してしまう被害も報告されています。

不安をあおる表示が出ても、その場で連絡先に電話したり支払いをしたりせず、まずは家族や消費生活センターに相談することが鉄則です。

③SNS詐欺(投資詐欺・ロマンス詐欺)

近年もっとも急増しているのが、SNSを入り口にした投資詐欺・ロマンス詐欺です。警察庁の統計では、65歳以上のロマンス詐欺被害者は3年間で4.2倍に増加しました。著名人になりすました広告から投資グループに誘導する手口や、マッチングアプリで知り合った相手が「投資で一緒に儲けよう」と持ちかけてくる手口が典型的です。

※以下は理解を助けるための構成例です。

ある80代の男性は、SNSの広告経由で著名な経営者を名乗る人物とメッセージアプリでやり取りするようになりました。「特別な投資グループに招待する」と言われ、指定の口座に送金を重ねた結果、退職金の多くを失ってしまいました。相手とは一度も直接会うことがなかったといいます。

「絶対に儲かる」「あなただけに特別に」といった言葉、そして「家族には内緒で」という誘導は、投資詐欺・ロマンス詐欺に共通する典型的なサインです。

④個人情報の無意識な流出

懸賞サイトやアンケートサイトに、氏名・住所・生年月日・家族構成などを入力しているうちに、それらの情報が名簿業者や詐欺グループに渡ってしまうケースがあります。SNSの投稿から在宅・不在のタイミングや資産状況が推測され、悪質な訪問業者や特殊詐欺のターゲットリストに載ってしまうこともあります。

「無料プレゼント」「豪華賞品が当たる」といった懸賞・アンケートには、個人情報を入力する前に、その運営元が信頼できるかを確認する習慣が大切です。

⑤有料サービスへの意図しない課金

無料アプリの「お試し期間」がいつの間にか有料プランに切り替わっていたり、動画配信サービスの定期購入を解約し忘れて課金が続いていたりするケースです。操作に不慣れなために解約方法が分からず、そのまま放置してしまう高齢者は少なくありません。

無料をうたう広告ほど、実は継続課金につながる仕組みが隠れていることがあります。新しいサービスに登録する際は、必ず料金プランと解約方法を家族と一緒に確認しておきましょう。

なぜ高齢者はだまされやすいのか

高齢者が詐欺の標的にされやすい背景には、単なる「知識不足」では片づけられない、いくつかの構造的な理由があります。

まず挙げられるのが、加齢に伴う判断力・注意力の変化です。急かされる状況での冷静な判断が難しくなったり、複数の情報を同時に処理する負荷が高まったりすることは、誰にでも起こり得る自然な変化です。

次に、孤独・孤立の問題があります。一人で相談できる相手がいないと、不安や悩みを抱え込みやすくなり、親身に話を聞いてくれる詐欺師の言葉に心を許してしまうことがあります。

そして、ネットリテラシーの世代差も見逃せません。スマートフォンやインターネットに初めて触れる高齢者は、若い世代が自然に身につけている「怪しいリンクは踏まない」「個人情報は簡単に入力しない」といった感覚を、学ぶ機会が少ないまま利用を始めているケースが多いのです。

こうした要因は、本人の性格や能力の問題ではなく、誰にでも当てはまり得る構造的なリスクです。だからこそ、本人の注意力だけに頼るのではなく、家族の見守りと、使いやすい安全対策の両方が必要になります。

家族が気づける「危険のサイン」

離れて暮らす家族にとって、親のネット利用の変化に気づくのは簡単ではありません。次のようなサインが見られたら、注意して声をかけてみましょう。

  • 見慣れないアプリや通知が増えている
  • 「最近、電話やメールで急かされることが多い」と話す
  • スマホの操作について聞かれると、はぐらかすようになった
  • クレジットカードの利用明細や銀行口座の残高を気にする様子が増えた
  • 「誰にも言わないで」という前提の話を持ちかけてくる

こうした変化に気づいたときは、頭ごなしに叱るのではなく、「最近どんなサイトを見ているの?」「困っていることはない?」と、責めずに聞く姿勢が大切です。高齢者本人も「だまされた自分が恥ずかしい」という気持ちから、被害を隠してしまうことが少なくありません。

安全なネット利用のための5つのルール

ここまで見てきたリスクを踏まえ、今日から実践できる安全なネット利用のルールを5つにまとめました。ご本人はもちろん、家族で一緒に確認する形もおすすめです。

  1. 知らないリンクはクリックしない:メールやSMS、SNSに届いたリンクは、送信元が分からなければ開かない
  2. 個人情報・クレジットカードは慎重に入力する:入力前に、そのサイトの運営元と目的を必ず確認する
  3. 「無料」を謳う広告は疑う:無料プレゼントやお試し登録の裏に、継続課金の仕組みがないか確認する
  4. 困ったら一人で抱え込まず、家族や消費生活センターに相談する:迷ったらすぐに、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話する
  5. セキュリティソフトを導入する:スマホ・パソコンにウイルス対策ソフトを入れ、OS・アプリは常に最新の状態に保つ

この5つのルールに共通しているのは、「一人で即断しない」という姿勢です。詐欺の多くは、被害者が一人で、その場ですぐに判断することを狙って仕掛けられます。少し立ち止まって家族や専門機関に相談する習慣そのものが、最も効果的な防御策になります。

パスワード管理は「老後」こそ重要

安全なネット利用を支えるもうひとつの土台が、パスワードの管理です。「使い回しているパスワードがある」「誕生日や電話番号など単純なパスワードを使っている」という方は、決して珍しくありません。

しかし、同じパスワードを複数のサービスで使い回していると、一つのサービスから情報が漏えいした際に、ほかのサービスにも不正ログインされる被害が連鎖的に広がるリスクがあります。単純なパスワードも、総当たり攻撃によって短時間で突破されてしまう可能性があるのです。

パスワードの管理方法や、家族が困らないための整理の仕方については、パスワード管理は老後こそ重要|実施率わずか2%の現実と家族が困らない3つの選択肢で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

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ネットを使うほど増える「デジタル資産」とデジタル終活の関係

インターネットを安全に、そして積極的に使いこなせるようになると、もう一つ考えておきたいことが出てきます。それが「デジタル資産」の管理です。

ネット銀行の口座、証券・暗号資産の取引、サブスクリプションサービス、SNSアカウント——インターネットを使う時間が長くなるほど、こうしたデジタル資産は自然と増えていきます。便利に使いこなしている一方で、もしものときに家族がその全体像を把握できなければ、資産の見落としや、解約されないままの課金が続くといった問題が起こり得ます。

つまり、安全にネットを使うための対策と、デジタル終活の取り組みは、地続きの関係にあるのです。ネットを楽しむからこそ、その情報を整理し、いざというときに家族へ安全に引き継げる状態にしておくことが大切になります。

デジタル終活を何から始めればよいか分からない方は、デジタル終活の始め方|初心者でも今日5分でできる「たった1つの第一歩」も参考になさってください。

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被害にあったら・不安に感じたら

万が一、詐欺被害にあってしまった場合や、「もしかして」と不安を感じた場合は、一人で抱え込まず、次の窓口に早めに相談しましょう。

  • 消費生活センター:怪しい勧誘や契約トラブルの無料相談窓口。消費者ホットライン「188(いやや!)」で最寄りの窓口を案内してもらえます
  • 警察相談専用電話「#9110」:犯罪に発展しそうな相談やサイバー犯罪の相談窓口
  • 弁護士・司法書士:契約の取り消しや返金請求など、法的な対応が必要な場合の相談先
  • 家族:気づいたときにすぐ話せる、最も身近な相談相手

終活詐欺の具体的な手口や見分け方については、終活詐欺の5つの手口と見分け方|被害にあったらすぐやるべき対処法もあわせてご覧ください。詐欺被害は老後破産にもつながりかねない問題です。老後の資産を守る備えについては、老後破産の原因と対策|狙われる詐欺の手口と見分け方を解説も参考にしてください。

「まだ被害が確定していないから相談するほどではない」と思わず、少しでも不安を感じた時点で相談することが、被害の拡大を防ぐ一番の近道です。高齢者を狙う消費者被害の具体的な事例については、国民生活センターの特集ページでも確認できます。

まとめ|ネットを怖がらず、安全に使いこなすために

高齢者のインターネット利用は、この数年で急速に広がり、生活の中で欠かせないものになりつつあります。その一方で、フィッシング詐欺やSNS型投資・ロマンス詐欺など、高齢者を狙う手口も年々巧妙になっているのが実情です。

大切なのは、インターネットを避けることではなく、リスクの正体を知り、「一人で即断しない」という姿勢を身につけることです。知らないリンクをクリックしない、無料広告を疑う、困ったら家族や消費生活センターに相談する——この5つのルールを意識するだけで、多くの被害を未然に防げます。

そして、安全にネットを使いこなせるようになるほど、ネット銀行やSNSアカウントといったデジタル資産も自然と増えていきます。その情報を整理し、家族といざというときに共有できる状態にしておくことが、これからのデジタル時代を安心して過ごすための備えになります。

DENでは、パスワードやネットサービスの情報を安全にデジタル管理できるエンディングノートサービスのモニターを募集しています。ご自身とご家族のこれからのために、モニター募集の詳細をぜひご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 高齢の親にインターネットの使い方をどう教えればよいですか?

一度にすべてを教えようとせず、「怪しいリンクは開かない」「困ったらすぐ聞く」など、優先度の高いルールから少しずつ伝えるのがおすすめです。実際に操作してもらいながら、繰り返し練習する時間を取ると定着しやすくなります。

Q2. フィッシング詐欺のメールやSMSが届いたら、どうすればよいですか?

記載されたリンクは開かず、削除して問題ありません。心配な場合は、公式サイトやアプリから直接ログインして状況を確認し、必要であれば消費生活センターや警察相談専用電話「#9110」に相談しましょう。

Q3. すでにフィッシングサイトに個人情報やカード情報を入力してしまいました。どうすればいいですか?

すぐにカード会社・銀行に連絡し、カードの利用停止やパスワードの変更を行いましょう。身に覚えのない請求がないかも確認し、不安な場合は警察相談専用電話「#9110」にも相談してください。

Q4. SNSで知り合った人から投資の話を持ちかけられました。信用してもよいでしょうか?

「絶対に儲かる」「元本保証」といった言葉や、「家族には内緒で」という誘導は、投資詐欺・ロマンス詐欺に共通する典型的なサインです。実際に会ったことがない相手からの金銭のやり取りの提案には、特に慎重になりましょう。

Q5. セキュリティソフトはどのように選べばよいですか?

まずはスマホ・パソコンにあらかじめ搭載されている標準のセキュリティ機能を有効にしたうえで、必要に応じて信頼できるメーカーのセキュリティソフトを導入するとよいでしょう。選び方に迷う場合は、家族や販売店に相談することをおすすめします。

Q6. パスワードを紙にメモしておけば安全ですか?

紙のメモは、盗難や紛失、火災などで失われるリスクがあり、また本人しか保管場所を知らない場合、いざというとき家族が見つけられないという問題もあります。デジタル終活のサービスなどを活用し、安全かつ家族と共有できる形で管理することが望ましいでしょう。


参考:総務省「令和7年版情報通信白書」/警察庁「令和7年上半期における特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況について」/フィッシング対策協議会 月次報告/国民生活センター「高齢者の消費者被害」

監修:本記事は終活・デジタル資産管理分野の専門家監修のもと、公的機関の公表情報を参照して作成しています。統計数値は作成時点のものであり、最新のデータとは異なる場合があります。

最終更新日:2026年8月15日

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