成年後見制度の「闇」を回避する4つの方法|家族信託・共同後見・生前贈与・死後事務委任を徹底比較

落ち着いた居間で親子が書類を確認する、家族信託と成年後見対策をイメージした写真 認知症・成年後見

公開日:2026年7月9日 / 最終確認日:2026年7月9日
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カテゴリ:認知症・成年後見

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。


前回の記事「法定後見制度の7つの問題点」では、法定後見制度が抱える構造的な問題を整理しました。

「専門家が後見人になりやすい」「報酬が死ぬまで続く」「一度始めると解任できない」——読んでいて、こう感じた方も多いのではないでしょうか。

「じゃあ、うちはどうすればいいの?」

今回は、その問いに正面から答えます。制度の問題点をもう一段深掘りしたうえで、今日から準備できる4つの回避策を、いつ・誰が・何をすべきかというレベルまで具体的に解説します。

本記事でわかること:

  • 成年後見制度が「闇」と言われる5つの理由(金額・データ・事例つき)
  • 問題を回避する4つの具体策(共同後見人・家族信託・生前贈与・死後事務委任契約)
  • 家族信託と任意後見、混同されやすい2つの制度の違い
  • 「認知症発症前」というタイムリミットの本当の意味

なぜ成年後見制度は「闇」と呼ばれるのか——5つの構造的問題

まずは問題点を数字と事実であらためて整理します。前回記事を読んだ方も、ここで一度おさらいしてください。

専門家が後見人に選ばれる割合は81.9%——家族の意向は通りにくい

2022年の司法統計によると、家庭裁判所が選任した後見人のうち81.9%が弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門家でした。親族が選ばれたのは約18.1%にとどまります。成年後見制度の基本的な仕組みは裁判所「成年後見制度」でも確認できます。

申立書には後見人の候補者を記載できますが、選任の決定権は家庭裁判所にあります。「家族を後見人にしたい」という希望が通るとは限りません。

月2〜6万円の報酬が死ぬまで続く——10年で240万〜720万円

後見人への報酬は本人の財産から毎月支払われ、管理財産額に応じて月2万〜6万円が目安です。認知症の平均的な経過期間は10年前後とされます。

  • 月2万円 × 120ヶ月 = 240万円
  • 月4万円 × 120ヶ月 = 480万円
  • 月6万円 × 120ヶ月 = 720万円

この金額は、そのまま将来の相続財産から目減りしていきます。「終活のための出費」とはいえ、事前にこの規模感を把握している家庭は多くありません。

財産の自由な引き出し不可——介護リフォームも生前贈与も原則禁止

後見人の使命は「本人の財産を守ること」です。この姿勢が、次のような支出を止めます。

  • 介護のための自宅リフォーム費用
  • 孫へのお祝い金・お年玉
  • 生前贈与や相続税対策
  • 投資・資産運用

家族が「本人も望むだろう」と考える支出であっても、後見人の判断で認められないケースがあります。

一度始めると原則やめられない——相性が悪くても解任できない

法定後見は、本人の判断能力が回復しない限り、本人が亡くなるまで終了しません。

「後見人と家族の相性が悪い」「対応に不満がある」と感じても、それだけを理由に後見人を解任することは認められていません。制度を一度始めると、長期間にわたってその関係が固定されます。

専門家による横領事件も発生している実態

不正はゼロではありません。ある調査では、2024年の後見制度に関する不正事例は188件、被害総額は約7億9,000万円にのぼると報告されています。

家庭裁判所が専門家を後見人に選びやすい理由の一つは「親族後見人による横領の防止」です。しかし専門家であっても不正が根絶されているわけではなく、被害が起きた場合の回復は容易ではありません。

これらの問題は、制度を利用してから初めて気づく家庭がほとんどです。だからこそ、事前に「回避策」を知っておくことに意味があります。


成年後見制度の問題を回避する4つの方法

ここからが本記事の核心です。4つの回避策を、それぞれ「いつ・誰が・何をすべきか」で具体的に解説します。

①身内との共同後見人制度を申請する

いつ:後見開始の申立時

誰が:申立人(多くは親族)が家庭裁判所に上申

何をすべきか:専門家(弁護士・司法書士など)と親族を同時に複数選任してもらうよう、申立書に希望を明記します。専門家と親族がそれぞれ別の職務分掌(財産管理と身上監護など)を担う形にできれば、お互いの動きを確認し合う体制が生まれます。

限界:複数選任を認めるかどうかは家庭裁判所の裁量です。必ず認められるとは限らず、確実性の高い対策とは言えません。あくまで「単独の専門家後見人による一存」を防ぐための一手として位置づけてください。

②家族信託(民事信託)で財産管理を家族に移しておく

いつ:認知症発症前、本人の判断能力があるうちに

誰が:委託者(本人)と受託者(信頼できる家族)が契約を結ぶ

何をすべきか:不動産・預貯金・有価証券などを信託財産として指定し、管理・運用・処分の権限を受託者に移します。信託契約書を公正証書で作成し、必要に応じて信託専用口座を開設します。

家族信託の最大の利点は、認知症発症後も、家庭裁判所を通さずに受託者が柔軟に財産を動かせることです。不動産の売却、生前贈与に近い資産移転、リフォーム費用の支出など、法定後見では制限されやすい行為にも対応できます。

ただし家族信託は「財産管理」に特化した制度であり、医療・介護サービスの契約といった身上監護には対応できません。この点は次の章で詳しく比較します。

③毎年少しずつ生前贈与しておく(年間110万円の非課税枠を活用)

いつ:認知症発症前、できるだけ早い段階から

誰が:本人から、推定相続人(子・孫など)へ

何をすべきか:暦年贈与の非課税枠(年間110万円)を使い、毎年少額ずつ財産を移転します。贈与契約書を都度作成し、贈与の事実を記録に残しておくことが重要です。

生前贈与は、相続税対策と財産移転を同時に進められる手段です。ただし2024年の税制改正により、相続開始前に贈与した財産を相続財産に持ち戻す期間が3年から7年に延長されています。制度の詳細は国税庁「贈与税」でも確認できます。持ち戻しルールの詳細は「生前贈与の7年ルール」で解説していますので、あわせてご確認ください。

判断能力を失った後は、新たな贈与契約そのものが成立しません。 生前贈与は認知症発症前にしか打てない対策です。

④死後事務委任契約を家族としておく

いつ:本人の判断能力があるうち(家族信託や任意後見と同時に契約すると効率的)

誰が:本人と家族(または専門家)

何をすべきか:葬儀・埋葬の手配、行政手続き、公共料金の解約、SNSアカウントの整理など、死後に必要な事務を誰に委任するかを契約書にまとめておきます。

成年後見制度は本人の死亡によって終了します。つまり、後見人には死後の手続きを行う権限がありません。この「制度の切れ目」を埋めるのが死後事務委任契約です。手続きの範囲や費用、遺言書との違いについては「死後事務委任契約でできること・できないこと完全ガイド」で詳しく解説しています。

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「認知症発症前」というタイムリミット——今すぐ動くべき理由

ここまでの4つの回避策には、共通する条件があります。

すべて「本人の判断能力があるうち」にしか実行できない、という条件です。

  • 家族信託の契約 → 判断能力低下後は締結不可
  • 生前贈与 → 判断能力低下後は贈与契約自体が無効になりうる
  • 死後事務委任契約 → 契約行為である以上、判断能力が前提
  • 共同後見人の申請 → 後見開始後の対策であり、そもそも発症後の話

つまり、判断能力が低下してしまった後に残される選択肢は、法定後見制度だけです。前回記事で解説した「専門家が選ばれやすい」「報酬が死ぬまで続く」「解任できない」という問題を、丸ごと受け入れるしかなくなります。

認知症の発症時期を正確に予測することはできません。「まだ元気だから大丈夫」という時間は、実際にはそれほど長くない可能性があります。

家族で話し合うタイミングは、「そろそろ心配になってきたとき」ではなく「今」です。


家族信託と任意後見、混同されやすい2つの制度の違い

「家族信託があれば任意後見はいらないのでは?」という質問をよく受けます。両者は目的が異なるため、混同すると準備に抜け漏れが生まれます。

比較項目 家族信託 任意後見
契約の相手 信頼できる家族(受託者) 後見人になってほしい人(家族・専門家)
対応範囲 財産管理・運用・処分 財産管理+身上監護(医療・介護契約)
効力の発生 契約後すぐに有効 発症後、家庭裁判所が監督人を選任して開始
不動産売却 柔軟に対応可能 対応可能(監督人のチェックあり)
医療・介護契約 対応不可 対応可能
裁判所の関与 契約後は基本的に関与なし 任意後見監督人を通じて継続的に関与
費用 契約時の初期費用が中心 監督人への報酬が発生(月1〜2万円程度)

家族信託は「財産」を柔軟に動かす仕組み、任意後見は「財産+身の回りの契約」までカバーする仕組みです。多くの専門家は、この2つを併用することを推奨しています。 財産管理は家族信託に任せ、医療・介護の契約は任意後見でカバーするという役割分担です。

自宅の資産状況や家族構成によって最適な組み合わせは変わります。司法書士・弁護士への相談を前提に、具体的な設計を進めてください。


4つの回避策と情報管理——DENでできること

家族信託の契約書、任意後見の公正証書、生前贈与の記録、死後事務委任契約の内容——これらはすべて「重要な契約情報」です。契約を結んでも、その情報が家族に伝わっていなければ意味がありません

「父が家族信託を結んでいたことは知っていたが、契約書がどこにあるか誰も知らなかった」という状況は、決して珍しくありません。

DENは、こうした相続・終活に関する重要な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。

  • 家族信託・任意後見の契約情報を安全に記録
  • 生前贈与の記録や死後事務委任契約の内容も一元管理
  • 三分割暗号化方式でプライバシーを確保しながら家族に伝達

制度を整えることと、情報を残すことは、セットで初めて機能します。

DENは、相続・遺言・終活に関する大切な情報を暗号化して安全に保管するデジタル終活サービスです。現在、サービス開始に向けてモニターを募集しています。
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よくある質問(FAQ)

Q1. 家族信託だけで身上監護もカバーできますか?

できません。家族信託は財産管理・運用・処分に特化した制度で、医療機関への入院手続きや介護施設との契約といった身上監護は対象外です。身上監護までカバーしたい場合は、任意後見との併用を検討してください。

Q2. 共同後見人(専門家+親族)は必ず認められますか?

認められるとは限りません。複数選任を希望する旨を申立書に記載できますが、最終的な判断は家庭裁判所の裁量です。認められた場合でも、専門家と親族の職務分掌が明確に決められます。

Q3. 生前贈与は認知症発症後でも間に合いますか?

間に合いません。贈与は契約行為であり、贈与者本人に判断能力があることが前提です。判断能力が低下したあとに贈与契約を結んでも、無効と判断される可能性があります。年間110万円の非課税枠を使った暦年贈与は、発症前からコツコツ進めておく必要があります。

Q4. 死後事務委任契約は公正証書が必須ですか?

法律上、公正証書での作成が必須ではありません。ただし契約内容の証明力を高め、死後にトラブルが起きるのを防ぐため、公正証書で作成することが一般的に推奨されています。

Q5. 家族信託を結べば、成年後見制度はまったく利用しなくてよくなりますか?

信託財産に含めた財産については、法定後見を利用せずに家族が管理を続けられます。ただし信託財産に含まれていない財産や、医療・介護契約などの身上監護が必要になった場合は、別途、任意後見などの備えが必要です。家族信託だけで完全に代替できるわけではありません。

Q6. DENのエンディングノートには、家族信託や任意後見の契約情報も記録できますか?

はい、記録できます。契約書の保管場所、受託者・後見人の連絡先、契約内容の要点などを暗号化した形で残せるため、家族が「どこに何があるか」を把握しやすくなります。


まとめ:4つの回避策は、認知症発症前にしか実行できない

成年後見制度の問題点と、その回避策を整理します。

  • 専門家が後見人に選ばれる割合は81.9%——家族の意向が通りにくい
  • 月2〜6万円の報酬が10年で240万〜720万円に達する
  • 財産の自由な引き出し・生前贈与が原則できない
  • 一度始めると相性が悪くても解任できない
  • 専門家による横領被害も実際に発生している(2024年188件・約7億9,000万円)

これらを回避する4つの方法は、次の通りです。

  1. 身内との共同後見人制度を申請する(確実性は限定的)
  2. 家族信託で財産管理を家族に移しておく
  3. 毎年少しずつ生前贈与しておく
  4. 死後事務委任契約を家族と結んでおく

そして、すべての対策に共通する条件は「認知症発症前」であることです。

今日できる1アクション:

  1. 家族で「家族信託と任意後見、どちらを軸にするか」を話し合う
  2. 司法書士・弁護士に、家族信託の設計を相談する
  3. 契約情報をDENなどで安全に記録し、家族に共有できる状態にしておく

制度を整えるタイミングは、いつも「今」です。前回記事とあわせて、家族での話し合いのきっかけにしてください。


※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正等により変更される場合があります。


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