ネット銀行の相続手続きが難しい理由|楽天・PayPay・SBI系5行を比較【生前対策チェックリスト付き】

デジタル遺産

「親のネット銀行、ログインできますか?」

こう聞かれて即答できる方は、決して多くありません。楽天銀行やPayPay銀行、住信SBIネット銀行のように店舗を持たないネット銀行は、日常の利用は便利な一方で、いざ相続が発生すると家族が大きな壁にぶつかりやすい金融機関です。

通帳も届出印もなく、すべてがスマートフォンやパソコンの画面の中で完結している——この「見えない資産」は、本人が亡くなった瞬間に家族の手から離れてしまうことがあります。

この記事では、主要ネット銀行5行の相続手続きを比較しながら、「ネット銀行の相続はなぜ大変なのか」を具体的に解説し、家族が困らないための生前対策をお伝えします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。

本記事で理解できること

  • ネット銀行の相続手続きがメガバンクより難しいと言われる根本的な理由
  • ログインIDとパスワードが分からないと何が起きるのか
  • 楽天銀行・PayPay銀行・住信SBIネット銀行・SBI新生銀行・auじぶん銀行の手続き難易度比較
  • メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)との違い
  • 家族が困らないために、今すぐできる生前対策

なぜネット銀行の相続は「大変」と言われるのか

ネット銀行には、そもそも店舗も窓口もありません。相続手続きは原則としてオンラインまたは郵送でのやり取りが中心になります。

対面の窓口があれば、行員に相談しながら「何から始めればいいか」を教えてもらえます。しかしネット銀行の場合、遺族は自分でウェブサイトのFAQやコールセンターの案内を読み解きながら、慣れない手続きを一つずつ進める必要があります。

さらに深刻なのは、紙の通帳や郵送の明細がほとんど存在しないという点です。メガバンクであれば自宅に届く郵便物や通帳から口座の存在に気づけますが、ネット銀行はメールやアプリの通知だけで完結しているケースが多く、遺族が口座の存在自体に気づけないまま、資産が宙に浮いてしまうことも珍しくありません。

このように、「オンライン中心の手続き」と「口座の発見しにくさ」という二つの特徴が重なることで、ネット銀行の相続はメガバンクよりもハードルが高くなりやすいのです。


最大の壁:ログインIDとパスワードが分からないと手続きが始まらない

ネット銀行の相続で最も多くの遺族がつまずくのが、ログイン情報が分からないという問題です。

メガバンクの相続手続きは、通帳・キャッシュカード・印鑑があれば、たとえ暗証番号が分からなくても窓口で本人確認を経て代替手続きが可能です。ところがネット銀行の場合、そもそも「口座がどこにあるか」を特定する入り口が、故人のスマートフォンやパソコンの中にしかないケースが少なくありません。

  • どの銀行に口座を持っていたか分からない
  • メールアドレスやログインIDが分からない
  • パスワードが分からず、本人確認ページにすら進めない

こうした状態では、相続手続き以前の「口座の存在を確定させる」段階でつまずいてしまいます。結果として、資産の一部が誰にも気づかれないまま放置される「デジタル遺産の行方不明」が起こり得るのです。

注意:たとえログインIDとパスワードが分かっても、本人以外がログインすることは規約違反にあたる場合があります。 多くのネット銀行の利用規約では、口座名義人本人以外によるログイン・操作を禁止しています。「情報があるから」といって遺族が代わりにログインして残高確認や送金を行うと、規約違反や不正アクセスとみなされるリスクがあるため、必ず各行の正規の相続手続き窓口を通じて対応してください。


二段階認証×故人スマホロックという「二重の壁」

ログインID・パスワードが分かったとしても、もう一つ大きな壁が立ちはだかります。それが二段階認証です。

多くのネット銀行では、ログイン時や重要な操作の際にSMSや専用アプリへ認証コードが送信される仕組みを採用しています。つまり、ログイン情報が分かっていても、認証コードを受け取る故人のスマートフォン自体が開けなければ、そこから先に進めません。

  • スマホの画面ロックが解除できない
  • 機種変更でSIMが失効し、SMSが届かない
  • 認証アプリ(Google Authenticatorなど)の再設定ができない

ログイン情報の壁と、スマートフォンロックの壁——この二重の壁が重なることで、遺族は「銀行に連絡すること」自体はできても、「本人確認を完了させること」ができずに手続きが止まってしまいます。

故人のスマートフォンが開けない場合の具体的な対処法は、故人のスマホが開けない…!相続で失う資産と今すぐできる5つの対策で詳しく解説しています。あわせてご参照ください。


主要ネット銀行5行の相続手続きを比較

ここでは、楽天銀行・PayPay銀行・住信SBIネット銀行・SBI新生銀行・auじぶん銀行の5行について、手続きの特徴を解説します。

※以下の情報は本記事作成時点の一般的な傾向です。手続き内容や必要書類は変更される可能性があるため、最新情報は各行の公式サイトでご確認ください。

楽天銀行

死亡の事実をカスタマーセンターへ電話連絡すると、銀行から相続人代表者宛てに必要書類一式が郵送されます。必要書類には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(発行から6か月以内)、住所を確認できる書類、相続預金払戻手続依頼書などが含まれます。オンラインで完結する部分は限定的で、書類のやり取りは郵送が中心です。

※最新情報は楽天銀行の公式サイトでご確認ください。

PayPay銀行

ウェブサイトの「相続受付フォーム」から連絡できる点が特徴です。フォームで概要を入力したうえで、必要書類を提出します。契約していた商品の内容によっては、書類のやり取りが複数回に及ぶ場合があります。連絡自体はオンラインで始められますが、最終的な書類提出は郵送になるケースが一般的です。

※最新情報はPayPay銀行の公式サイトでご確認ください。

住信SBIネット銀行

店頭がないため、電話で相続の発生を連絡します。その後、相続に関する依頼書が届き、署名・捺印のうえ返送するという流れです。同行が案内する「better相続」というサービスを利用すると、ネット環境があればオンラインで手続きを進めやすいとされています。ただし対応範囲は口座の状況によって異なります。

※最新情報は住信SBIネット銀行の公式サイトでご確認ください。

SBI新生銀行

相続手続きはすべて郵送で行われます。相続人の中から「相続人代表者」を1名選任し、口座の名義書換、SBI新生銀行口座への振替後の解約、あるいは他行口座への振込のいずれかを選ぶ形です。2025年7月からは遺言信託や遺産整理業務など、生前からの相続関連サービスも開始されています。

※最新情報はSBI新生銀行の公式サイトでご確認ください。

auじぶん銀行

「相続手続き受付フォーム」から必要情報の入力と書類のアップロードを行い、銀行側の確認を経て案内を受ける流れです。所定の条件を満たす場合には、郵送でのやり取りなしに口座解約・払い戻しまで完結できるケースがあるとされ、5行の中では比較的オンライン完結度が高い部類に入ります。

※最新情報はauじぶん銀行の公式サイトでご確認ください。


【比較表】書類の多さ・手続き方法・所要時間で見る難易度

5行の相続手続きを、「書類の多さ」「手続き方法」「所要時間の目安」の3つの観点で比較しました。あくまで一般的な傾向であり、口座の残高や契約商品、相続人の人数によって変動します。

銀行名 書類の多さ 手続き方法 所要時間の目安 難易度の傾向
auじぶん銀行 標準的 オンライン中心(条件により郵送不要) 数週間〜1ヶ月程度 やや易しい
住信SBIネット銀行 標準的 電話連絡+郵送(一部オンライン対応) 数週間〜1ヶ月程度 やや易しい
PayPay銀行 標準的〜やや多い オンライン受付+郵送併用 1ヶ月前後 中程度
楽天銀行 やや多い 電話連絡+郵送中心 1〜2ヶ月程度 やや難しい
SBI新生銀行 多い 郵送のみ、代表者選任が必要 1〜2ヶ月程度 難しい

※所要時間は書類の不備がない場合の目安です。戸籍収集や遺産分割協議の状況によって大きく変動します。最新の手続き内容は必ず各行の公式サイトでご確認ください。


メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)との違い

ネット銀行の特殊性を理解するために、メガバンク3行との違いを見てみましょう。

三井住友銀行は、案内書類の送付→戸籍等の提出→手続書類の返送という2段階の郵送方式を採用しており、来店不要で進められる点が特徴です。三菱UFJ銀行は、郵送と窓口対面のどちらでも対応でき、相続人の状況に応じて選べる柔軟性があります。みずほ銀行は連絡後すぐに所定の書類が届くため、戸籍収集と並行して準備を進めやすい一方、必要な戸籍の範囲が「16歳の誕生日以降」からとされており、他の2行の「出生から」という基準と異なる点に注意が必要です。

いずれの銀行も、最寄りの窓口に相談できるという選択肢が残されている点が、ネット銀行との最大の違いです。手続きの途中で分からないことがあっても、窓口で直接質問できる安心感があります。

一方でネット銀行には、この「相談できる窓口」自体が存在しません。すべてがコールセンターとウェブサイト、郵送のやり取りだけで完結するため、遺族は疑問点を自分で解決しながら進めるしかないのです。

なお、メガバンク3行はいずれもWeb受付に対応していますが、最終的な本人確認や書類提出は郵送・窓口が必要になる場合が一般的です。手続き内容は改定される可能性があるため、各行の最新情報を必ずご確認ください。


手続きが完了するまでの一般的な流れ

銀行によって細部は異なりますが、大まかな流れは共通しています。

STEP 1|銀行への連絡
電話・専用フォーム・窓口のいずれかで、口座名義人が亡くなったことを伝えます。この時点で口座は凍結され、入出金ができなくなります。

STEP 2|必要書類の案内・入手
銀行から相続手続きに必要な書類一式が案内され、郵送またはダウンロードで入手します。

STEP 3|戸籍謄本等の収集
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書などを市区町村役場で収集します。

STEP 4|書類の提出
記入・押印した相続届と収集した戸籍謄本等をあわせて提出します。

STEP 5|払い戻し・名義変更の完了
銀行側の審査を経て、指定口座への振込や名義変更が完了します。

ここまでの一連の流れの中で、ネット銀行特有の「ログイン情報が分からない」「二段階認証が通らない」という問題は、STEP 1に入る前の段階、つまり口座の存在確認や本人確認の時点でつまずくケースが多いという点が、メガバンクとの大きな違いです。


生前にすべき備え:口座情報チェックリスト

ここまで見てきたように、ネット銀行の相続手続きは「情報が分からなければ始まらない」という構造的な弱点を抱えています。裏を返せば、生前に必要な情報さえ残しておけば、手続きの難易度は大きく下がるということです。

以下の項目を、家族が確認できる形で記録しておきましょう。

  • 利用しているネット銀行の名称・支店名・口座番号
  • ログインに使用するメールアドレス・ユーザーID
  • ログインパスワード(そのまま書かず、保管場所やヒントを記録する方法も検討)
  • 二段階認証の設定内容(SMS宛先の電話番号、認証アプリの種類など)
  • スマートフォンの画面ロック解除方法、またはロック解除を依頼できる先
  • 契約している商品(定期預金・外貨預金・投資信託など)の有無

ログインパスワードそのものを紙にそのまま書き残すのは、盗難・紛失のリスクがあるためおすすめできません。 保管場所を分ける、暗号化して残すなど、安全性を確保した記録方法を選ぶことが重要です。

また、これらの情報はあくまで「相続手続きを進める際に金融機関へ伝えるための記録」であり、遺族がこれを使って本人に代わってログインするための情報ではありません。 前述のとおり、本人以外によるログインは規約違反となる可能性があるため、記録した情報は正規の相続手続きの中で活用してください。

口座凍結の仕組みや、凍結前後に家族がすべき対応については、親が亡くなったら銀行口座はすぐ凍結される|葬儀費用が払えない前に知っておく5つの対策でも詳しく解説しています。あわせてご確認ください。


DENなら口座情報を暗号化して安全に残せる

ネット銀行の情報を「どこに」「どう残すか」は、多くの方が悩むポイントです。紙のメモは紛失・盗難のリスクがあり、かといって無防備なデジタルメモも第三者に見られる危険があります。

DENのデジタルエンディングノートは、口座情報やログイン情報を三分割暗号化方式で保管し、生前は本人以外が閲覧できない仕組みを採用しています。そのうえで、いざというときには家族だけが必要な情報にアクセスできるよう設計されています。

  • 金融機関ごとの口座番号・契約商品を一覧で記録
  • ログイン情報を安全な形で保管
  • 二段階認証の設定状況や解除の手がかりも記録可能
  • 家族への引き継ぎタイミングをコントロールできる

デジタル終活を効率的に進めたい方は、DENのモニター募集をご確認ください。デジタル終活全般の始め方については、デジタル終活とは?スマホ・SNS・仮想通貨の整理から家族を守る完全ガイドもあわせてご参照ください。

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よくある質問(FAQ)

Q1. ログインIDやパスワードが分からない場合、口座の解約はできませんか?
A. ログイン情報が分からなくても、戸籍謄本などの相続手続き書類が揃えば、銀行所定の手続きを経て解約・払い戻しを進めることは可能です。ただし、口座の存在確認や本人確認に通常より時間がかかる場合があります。まずは各行のカスタマーセンターに相談することをおすすめします。

Q2. 二段階認証のSMSが故人のスマホに届く場合はどうすればいいですか?
A. 銀行側の相続手続き窓口に事情を説明し、代替の本人確認方法がないか相談してください。銀行によって対応が異なるため、個別の案内に従う必要があります。

Q3. 相続放棄をする場合も、ネット銀行に連絡は必要ですか?
A. 相続放棄を検討している場合は、口座から無断で出金・解約手続きを行うと単純承認とみなされる可能性があるため注意が必要です。手続きを進める前に、専門家(弁護士・司法書士)に相談することをおすすめします。

Q4. 複数のネット銀行に口座がある場合、手続きはどう進めればいいですか?
A. 銀行ごとに個別の手続きが必要です。共通する戸籍謄本等は複数枚取得するか、法定相続情報一覧図を利用すると、各行への提出がスムーズになります。

Q5. ネット銀行の相続手続きに費用はかかりますか?
A. 銀行への手続き自体に手数料がかからないケースが一般的ですが、戸籍謄本の取得費用や、専門家に依頼する場合の報酬は別途発生します。詳細は各行の公式サイトでご確認ください。

Q6. 通帳がないネット銀行口座の存在に気づかない場合はどうすればいいですか?
A. メールの受信履歴、確定申告書類、スマートフォンにインストールされたアプリなどから手がかりを探す方法があります。根本的な対策としては、生前に口座一覧を家族と共有しておくことが最も確実です。


まとめ

  • ネット銀行は店舗を持たないため、相続手続きがオンライン・郵送中心になりやすい
  • 通帳や郵送物がなく、家族が口座の存在自体に気づきにくい
  • 最大の壁は「ログインIDとパスワードが分からないと手続きが始められない」こと
  • 二段階認証と故人のスマホロックが重なると、本人確認そのものが困難になる
  • 5行を比較すると、auじぶん銀行・住信SBIネット銀行はオンライン対応が進んでいる一方、SBI新生銀行は郵送のみで難易度が高い傾向がある
  • メガバンクは窓口相談ができる分、ネット銀行より安心感があるが、戸籍範囲など銀行ごとの違いには注意が必要
  • 生前に口座情報・ログイン情報・二段階認証の設定を記録しておくことが、最も確実な対策になる

ネット銀行の相続は、事前の備えがあるかないかで、家族の負担が大きく変わります。元気なうちに、口座情報を安全な形で残しておくことをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律・税務・投資相談ではありません。個別の案件については、専門家(弁護士・税理士・司法書士)にご相談ください。記事内の情報は作成時点のものであり、法改正や各行の制度変更等により変更される場合があります。最新情報は必ず各行の公式サイトでご確認ください。


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著者情報・専門家監修注記
本記事はDENメディア編集部が作成し、終活・相続・デジタル資産の専門知識をもとに情報を提供しています。個別の法律・税務相談については、弁護士・税理士・司法書士などの専門家にご相談ください。

参考資料
楽天銀行「相続のお手続き」
PayPay銀行「相続のお手続き」
住信SBIネット銀行「自分でできる相続手続き」
SBI新生銀行「相続」
auじぶん銀行「相続」
法務省
国税庁「相続税」

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